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『SFアニメと戦争』でなぜこのシーンを選んだのか(1):七色星団の戦いと土星会戦

 9月に『SFアニメと戦争』と言う本を刊行させていただきました。

 アニメの本でもあるし、文章だけでなく、図版としていくつかの作品から抜き出したシーンを掲載させていただいております。これはメチャクチャこだわって選んだので、何回かに分けて解説してみようと思います。

 まず第1章の20ページ、宇宙戦艦ヤマトシリーズから。

 第1章では、日本のSFアニメの人気が高まった要因を考察していて、その理由の1つとしてちょうどヤマトから戦闘描写の「リアリティ」が高まったことを指摘しています。具体的には、『宇宙戦艦ヤマト』での決戦に当たる七色星団の戦いと、『宇宙戦艦ヤマト2』での決戦に当た地球防衛艦隊とバルゼー艦隊が戦った土星会戦を例に挙げました。
 この部分、1ページまるまる使ってシーンを抜き出せることになりました。掲載できるのは8枚。そこで七色星団の戦いから4枚、土星会戦から4枚選ぶことにしました。

 まずは七色星団の戦い。この戦いの見どころはいくつかあります。瞬間物質移送機で艦載機をワープさせる場面、ヤマトの波動砲口からドリルミサイルがめり込んでいく場面なども見どころとしては落とせません。
 しかし、本文で強調したのが、ヤマトで多数の量産兵器が登場することによる「リアリティ」だったので、兵器を中心にすることにしました。

 そこでガミラス側の空母4隻すべてががガミラス本星で待機している場面、第1波として攻撃するガミラスファイターがヤマトのブラックタイガーと交戦する場面、急降下爆撃機が発艦して上昇していく場面、瞬間物質移送機で送り込まれた雷撃機がワープアウトする場面を選びました。

 この中でも急降下爆撃機のシーンは、カタパルトで加速して発艦してすぐに上昇するのですが、背景に空母がちょっとボケて映っています。似たような場面は実は『トップガン』や『トップガン・マーベリック』にもあり、空母艦載機の発進場面の迫力を描き出す上で欠かせない演出ともいえます(いうまでもないことですが『宇宙戦艦ヤマト』は『トップガン』よりズッ友前の作品です)。
 リメイク版の『宇宙戦艦ヤマト2199』での七色星団の戦いでも、同じようにバーガーが乗り込んだ急降下爆撃機が発艦しますが、背景の空母を含め、やはり力を注いで描写されているのがよくわかります。と言うわけで大好きなシーンなので選びました。

 雷撃機のシーンは悩みました。もう1つ載せたかったシーンがあったのです。それはワープアウトした雷撃機が、ヤマトを包囲するような形で編隊を組み、360度の全周からヤマトに魚雷を発射するシーンでした。多数の魚雷がそれぞれに航跡を描きながらヤマトに迫っていく場面の迫力はとても気に入っているので、最後まで迷いました。

 しかしこのシーンはヤマトが画面の中心にあるので、雷撃機の姿が非常に小さくなってしまいます。特に、ガミラスの雷撃機の特徴である、機首全体ほどの大きさのある大型魚雷がわかりにくくなってしまうことから、実際に掲載されたワープアウトのシーンを選びました。

 なお、『宇宙戦艦ヤマト2199』では、魚雷が四方八方からヤマトに襲いかかってくる場面はないんですよね。『宇宙戦艦ヤマト2199』はリメイク版としても全体的に非常に出来がいいのですが、この場面は個人的にはちょっと残念でした。

 20ページの下半分は『宇宙戦艦ヤマト2』の土星会戦に関連する場面です。

 土星会戦は、自分がこれまで見たSFアニメの中でも特に気に入っている戦いです。戦いそのものの描写もさることながら、その前哨戦でヤマトが率いる空母部隊がガトランティスの空母部隊に奇襲攻撃をかけ、ガトランティス側に艦隊戦を選択させると言った戦略的な駆け引きを含めた描写が精密で、いまでも何度も見直すくらいです。

 ただ、好きだからこそ、土星会戦の掲載シーンの選定には悩みました。特に悩んだのは戦いのの展開を示すシーンを選ぶか兵器を選ぶかでした。
 展開を選ぶとすれば、ガトランティスの大戦艦の衝撃砲の一撃でヒペリオン艦隊の戦艦が粉砕される場面、メダルーザの火炎直撃砲の発射の場面、土星の輪の中で火炎直撃砲を発射しようとしたために輪の氷が溶けて気流が発生する場面、アンドロメダがメダルーザに集中砲撃を浴びせて沈める場面というイメージでした。

 ただここも、本文の中で地球防衛軍の艦種について言及していることもあり、最終的にはヤマト、アンドロメダ、巡洋艦、主力戦艦を掲載することにしました。このうちヤマト・アンドロメダ・巡洋艦は劇中シーンではないのですが、主力戦艦だけは、メダルーザが気流の影響で姿勢を崩して火炎直撃砲が使えなくなったあとの地球艦隊の反撃の時の射撃シーンを使っています。ここはカットまで特定して掲載をお願いしました(七色星団の場面もカットまで特定してあります)。

 と言うわけでこの20ページ、相当悩みましたが、自分的には納得して選んだシーンなんです。




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