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トライ効率の優位を生かして戦え!:日本対アルゼンチン戦の見どころ(1)
ラグビーワールドカップのプール戦最終戦の日本対アルゼンチン戦に向けて。
今日からはスタッツをもとに見どころを探ってみる。データはRugby Passのものを使用した。
次はプール戦の最終戦なので、これまでの3試合はお互い以外の相手、つまりイングランド、サモア、チリで同じだ。なので全く同じ相手と戦った上でのスタッツの比較ということになる。
攻撃力はほぼ互角
まずは得点に関するデータから。
日本 アルゼンチン
得点 82 88
トライ 9 10
ペナルティゴール 7 6
コンバージョン 8 10
両チームの得点は82と88でほぼ同じ数字。3試合だから平均を取ると日本が27.3、アルゼンチンが29.3で差は2点。ペナルティゴール1回(3点)にも満たない。つまりほぼ互角ということだ。
得点内容も似通っている。日本がトライ9でアルゼンチンが10でアルゼンチンが1つ多いだけ。
ペナルティゴールは日本が7つでアルゼンチンが6つでこっちは日本が1つ多い。
そしてコンバージョンはアルゼンチンが10で日本が8。アルゼンチンのトライは10個だから100%決めていることになる。日本のトライは9個だから外したのは1回。3試合戦っての数字だから、ほぼ同じだと言っていいだろう。
トライ効率のいい日本
次に攻撃を見てみよう。
日本 アルゼンチン
キャリー 251 383
キック 86 59
前進距離 1061 1411
クリーンブレイク 18 17
オフロード 12 21
ここではかなり数字が分かれている。ボールキャリー(ボールを持って前進すること)はアルゼンチンが日本を約130上回る383回。
一方日本はキックがアルゼンチンより約25回多い86回。これは、ブレイクダウンのあと、アルゼンチンがより地上でのパスやランでの前進している一方で、日本はキックを多用していることを意味している。
ただ、イングランドは3試合で110回ものキックを行っており、日本を1試合当たり8回上回っているので、日本が際立って多いわけではない。
あと、前進距離はアルゼンチンが400m上回る1411m。ただし、これをトライ1つで割ると、日本が117.9mでアルゼンチンが141.1m。つまり日本の方が少ない前進距離でトライを取れているということになる。
これは日本の方が効率よくトライを取れていることを意味しているから攻め込んだときにトライを取っている割合が日本の方が高いと言うことではある。
オフロードパスの少ない日本
クリーンブレイク(文字通りきれいな突破)は日本が18、アルゼンチンが17でほぼ互角、一方オフロードパス(タックルを受けたときに倒れずにそのままパスを通すこと)の数は日本が12なのに対しアルゼンチンが21とかなり多い。1試合当たりに直すと4と7だ。
ちなみにイングランドは17で日本とアルゼンチンの中間くらい、サモアはアルゼンチンを上回る27だ。チリも21だから、日本の14というのは、プールDの中で最も少ない数字ということになる。
日本としては、タックルを受けたときにオフロードパスでつなぐより、ブレイクダウンを作って攻撃をやり直すことを重視しているということだろう。
タックル数は日本がアルゼンチンの2倍近い!
ではディフェンスはどうか。
日本 アルゼンチン
タックル 506 264
タックルミス 82 44
タックル成功率 86% 86%
ドミナントタックル 36 29
ターンオーバーでの喪失 13 5
すぐに気づくのが日本のタックル数がアルゼンチンの倍近くあること。これはボールを持たれている時間が長いということだろう。タックル成功率は86%でほぼ互角。ドミナントタックル(相手をひっくり返すように倒しボールをコントロールできなくさせるようなタックル)は日本が36回とアルゼンチンの29回を上回る。1試合当たりに直しても2回ちょっと多い。
ただし、ターンオーバーでのボールロスト(いわゆる「ジャッカル」をされた回数)は日本が13個で、アルゼンチンの5個よりもかなり多い。
まとめ:トライ効率の高さを利用して戦おう
では、こうやってざっとスタッツを見てわかったことをまとめてみよう。まず、攻撃力そのものはほぼ互角。タックル成功率がほぼ同じと言うことからわかるように防御力もほぼ互角といっていいだろう。
ただし、攻撃の内容は大きく異なる。アルゼンチンがキックよりもボールキャリーを優先しているのに対し、日本はキックをかなり使ってきた。ただ、このことから、アルゼンチン戦でも日本がキック中心にゲームを組み立てるといえるのかについてはまだわからない。ジョセフ監督とブラウンコーチは、相手の予想を完全に裏切る組み立てを仕込むことがあるからだ。
もう1つの大きな違いは、前進距離とトライ数の比。アルゼンチンの方が、より長く前進しないとトライを取れていない。そう考えると、アルゼンチンがボールキャリーによる前進を図ったとしても、タックルで止め続けていけば、どこかでボール奪取や相手の反則で攻撃を終わらせられることはある程度期待できるということだ。つまりポイントの1つは、アルゼンチンのトライ効率の低さを狙った「粘り強いディフェンス」ということ。一方日本の攻撃は、オフロードパスが少ないことから、ブレイクダウンを着実に作って攻撃をしていくということなのだろうし、実際効率よく攻撃ができているということは言えるが、ターンオーバーでのボールロストが多いことは指摘しておかなければならない。実際、トライ効率が高いことからもわかるように、ボールを失っても、例えば相手のキックをマイボールにするなどして再奪取できれば問題はないが、失わないに越したことはない。よって攻撃の時のポイントは、「ブレイクダウンでの継続」、あるいは「ボールロストした後の再奪取」ということになるだろう。
今日は全体のスタッツを見てお互いの特徴と試合のポイントを絞ってみた。明日はさらに細かく分析してみたい。