2023ファジアーノ岡山にフォーカス52『 潰えた灯to点灯した光〜後ろ姿〜 』J2 第40節(H)vs栃木SC
1、現実への率直な心境~同期~
40節の栃木戦の引き分けと金曜日の試合結果によりプレーオフ進出の可能性は潰えた。同時に今季での昇格の可能性も消滅したことを意味する。昇格の可能性を信じて、準備してきた中で戦わずして、その可能性はゼロとなってしまった。
そのショックと気持ちの向けどころの難しい残り2試合を戦う事になった岡山が、残り試合をどう戦って、来季に繋げるかが問われることとなる。
次節のホーム秋田戦及び最終節は観戦予定であるが、不思議と気持ちはマイナスばかりではない。ある程度、覚悟のできた消滅というか、今季の戦いぶりを観ていると、これでは厳しいと感じていたというのもまた現実であった。今季は、結局、この壁を越えることができなかった厳しい試合が多かった。
22シーズンの3位という位置付けのプレーオフと、6位に届くか届かないの戦いで、追うことの何処かの心のゆとりや気持ちの面が違う。ただ、どちらでも戦えるチームにならないといけない。
さて、今節の対戦相手であるJ2昇格元年の同期の栃木との一戦もまた厳しい試合となってしまったが、来季のJ2には、栃木、岡山、富山が同カテゴリーに集う可能性もあり、それもまた楽しみである。しかしそれは、シーズン終了後に語るのが筋で、富山の順位的にも栃木の残留が確定していない中では、今はまだ、残された可能性を信じて戦う両チームを見守りつつ、岡山は、来季に備えるしかない。
それでは、まずは、メンバーから振り返っていきたい。
・メンバー変更への所感
この時期の各チームは、完成度が高く、昔のようにベストメンバーで選手を選ぶだけではなく、対戦相手に応じて、メンバーを変更できる選手層やデータによる分析により対策できるクラブが増えてきている。前節の山口と今節の栃木を観ても、プレーオフ入りを目指す岡山に対して、勝ち点0を覚悟した上で、決断良く、メンバーを大きく変えてきた。
一方で、岡山は、前節こそ少し変わったが、今節は、どちらかと言えば原点回帰に近づいた。勝ち点を積み重ねてきたメンバーや戦術のベースとなる部分への信頼を崩す事はなかった。数字的には、かなり絶望的になった事で、動くなら次節であると感じるので、動くなら今しかない。
2、岡山対策の教科書~互角~
・0~15分
栃木が、前節にDHだった7西谷 優希がシャドーの一角で出場して、DHに8高萩 洋次郎が入った事が示す通り、リトリートするのではなく、前からプレスをかけていき、ロングパスを主体にして攻めるという事を採用してきた。
この辺り、千葉戦の大敗により、岡山は「繋ぐサッカー」でありながら一定の強度に脆い事を露呈した上で、岡山もチームとしてやや「弱気」になっている点が見え隠れしていることから、栃木も最低でも勝ち点1を得る事を念頭に勝ち点3を狙いに来ていた。
立ち上がりは、やはり岡山が先制点をここ数試合で許している事からある程度、前への意識を高く持っていた。千葉戦の大敗まではあれほど、ハイプレスを受けても繋ぐことができていた岡山もロングパスの比重が多くなり、そこに誘導される対策を各チームがしてきて、その要求通り、蹴り合いに持ち込まれる悔しさは、ここ数試合強く感じている。
この時間帯は、岡山も7チアゴ・アウベスの裏への意識やカウンターの意識から形を作れていた。岡山もチャンスとは言えない中でも形を作っていただけに、ここでスコアを動かすパワーを出せるかどうか、勝ち点3に届かなかった理由である。
・15~45分
徐々に試合が落ち着いた。いや、岡山の勢いにやや陰りが見えた。逆に栃木のサイド攻撃からのクロスやセットプレーでの高さが、岡山に襲い掛かる。5柳 育崇が、99イスマイラの高さ・強さ・速さに懸命に対抗していた。
岡山としては、栃木のクロスやセットプレーの回数を少なく抑える事が勝利に必要不可欠であったが、2高木 友也と17末吉 塁のフィジカルの強さを以てしてもサイドを抑えることは簡単ではなかった。栃木の攻撃のカラーが、徐々に出てくるようになった時間帯だ。
・45分~60分
岡山は、ハーフタイムから6輪笠 祐士→23ヨルディ・バイスと48坂本 一彩→8ステファン・ムークという勝負の一手に出る。狙いは、やはり栃木の攻守でのパワーに負けないというメッセージと得点を奪いに行くというメッセージそのものである。
ただ、23ヨルディ・バイスと99イスマイラの所で、競り合いで後手になっていた事と、23ヨルディ・バイスのフィードで、貢献度も低かった事から、流れの中での貢献度は、高いとは言えなかったかもしれない。
その中で、セットプレーの中で、99イスマイラが、手で押して41田部井 涼を吹き飛ばしてファールをとられても不思議ではないプレーで、フリーの状態を確保すると、そこに折り返された所で、フリーで合わせて決めきった。VARがあれば、ファールの可能性も高い感じた。その場合は、ゴール取り消しであるが、J2には、VARはない。
J2で戦う以上、こういった事が起こることは、致し方ないが、こういった事を繰り返していれば、審判にマークされるし、岡山のように手をあまり使わない事で、審判の印象も変わって来る。22シーズンは、その点の心証が悪かったのか、今季の岡山は、なかなかPKを取って貰えないことが多かった。強度が下がったという指摘もあるが、手を使わないで、防げることが一番だが、それでピンチを防げるのも事実であり、難しい問題である。
・60分~75分
後が、なくなった岡山は、7チアゴ・アウベス→99ルカオを皮切りに、2高木 友也→19木村 太哉、15本山 遥→44仙波 大志と、HTと3度の交代と5人の枠を、使い切った。
中盤の守備の要の15本山 遥やまだやれる2高木 友也や7チアゴ・アウベスを早い段階で交代。岡山の危機的な状況を物語っている。
ただ、やはり、栃木の守備は堅い。岡山が、色々な手段を用いて攻めたとしても簡単には破れない。点が欲しい状況からシュート数がもっと伸びても不思議ではない中で、がっちり堅められたゴール前の壁の高さと強さに加えて、カウンターを狙うという栃木の圧力は、尋常ではなかった。
・75分~90分
実はというか、栃木は、このシーン以外でも岡山が抜け出しそうになったタイミングで、何度も手を使ってファールで止めるというシーンがあった。その印象があるからこそ、17末吉 塁の突破もまた倒したと主審の方が、判断したのだろう。
このシーンも見返す限り、先にボールに触ってチャレンジが成功しており、VARがあれば、ノーファールになった可能性が高いのではないかと思う。
この試合で、川俣 秀 主審は、2度の得点に絡むジャッジミスとも言えるシーンがあったことになるが、私達は映像を見返す事で、41田部井 涼が押されたという事に気が付いた方も多く、17末吉 塁が、倒されたシーンも、守備側のスライディングタックルが、成功していたと気が付いた方は、栃木の選手以外ではスタジアムの反応を観ても少なく、岡山の失点シーンでも41田部井 涼や岡山の選手も抗議してなかった事を考えると、2点とも難しいジャッジであったと言える。
残り時間、岡山はFW5柳 育崇を発動して、勝負にでるが、最後まで逆転することはできず、2試合連続で、岡山の選手は、試合後に勝てなかった事で、倒れ込む試合になってしまった。
気持ちを繋ぎとめて戦って来た事が、岡山の選手から感じるが、今季もまた勝負弱さや不運(4連勝中の体調不良)などもあり、昇格する勢いを出し切れなかった。
一方で、栃木は、勝ち点3を取って、残留に大きく前進したかったが、先制点を守り切れなかった。
3、スピード&パワー~大地~
ある程度、がっちり固めてくる。そう予想していたが、栃木もまた岡山に対して、前に出てきた。岡山にとっては、驚きであったが、岡山は、その対策を前に勝ち点3を得る事ができなかった。
岡山対策と言っても、やはり、チームカラーというのは、はっきりでるので、栃木の印象は、大地にどっしり構えるような、地にしっかり足が着いたサッカーである。
サイドを駆け上がるドリブルは、曲線的や柔軟性というよりは、縦にパワーとスピード感を持って、直線的に抉る仕掛けが多く、守備でも岡山の7チアゴ・アウベスのスピードや99ルカオのフィジカル、19木村 太哉の揺さぶりにも対応できていた。
PKとなったシーンでも17末吉 塁が、攻略して崩したように見えたが、VARがあれば、ファインプレーであった。99イスマイラのプレーもファールであったかもしれないが、他の競り合いのシーンやスピード感のある突破からもフィジカルが突出していて、岡山は、苦しめられた。
走攻守という野球の言葉があるが、まさに栃木のサッカーもまたそういったプレーの力強さを走攻守で、体現できていた。順位の上は、18位だが、J2を戦うチームは、確かなチームカラーと個の力の何れかで、高いレベルにある。
これだけ実力差が小さく、上位のチームは、下位チームや中位のチームに相性で勝敗を覆す確率が、非常に高いリーグになりつつある。
町田だけ、同じプレーでも個の力で得点に繋げて、守り切って、多くの勝ち点を積み重ねたが、圧倒的な戦力を擁していた清水でさえ、序盤戦に苦しみ、磐田は、シュートを多く打ちながら勝ち切れない試合も多く、東京Vは、ホームで勝てていない時期もあった。
栃木のサッカーは、新緑の木々のように、エネルギッシュな勢いや力強さを存分に発揮して、岡山から勝ち点1を捥ぎ取った試合となった。
4、重圧という十字架~解放~
シーズン開幕前に、23ヨルディ・バイスの「頂へ」という目標は、若い選手のプレッシャーになるという言葉が、印象的であったが、実際に自動昇格どころかプレーオフすら届かなかった。
その時は、今季の戦力であれば、戦える。そう信じて、23ヨルディ・バイスの言葉ほど、心配していなくて、逆に大きな期待をもって迎えたアウェイ磐田戦。もしかすると、この時の岡山が、最も良かった時かもしれない。
色々と分岐点はあったと思うが、「勝ち切れない」という「呪縛」のような「引き分け」が、岡山に重く圧し掛かった。
24シーズンは、どういった陣容で戦う事になるか分からないが、新人選手として、GK川上 康平くん、DF藤井 葉大くん、MF吉尾 虹樹くん、FW太田 龍之介くんの4人が内定していて、23ヨルディ・バイスと38永井 龍の契約満了が発表されている。
岡山が、昇格する一つの指針として、二つの指針を掲示したい。
・連勝記録の更新と回数増
まずは、1つ目は、5連勝、いや、6連勝以上の達成である。クラブの最高が4連勝ではあり、やはり他の上位クラブでも大変かもしれないが、「ホーム」や「アウェイ」でも冠がついても良い。
「岡山には勝てない」という心理的な優位性を今季の岡山は、あまり対戦チームから抱かれなかったシーズンとなってしまった。千葉に負けた時のような、圧倒的な内容で勝った試合は、少ない。
そういった強いサッカーができなかった試合が多く、「受け」に回る時間が多かった。その点では、木山ファジは、4連勝の時に一つのヒントのようなものを得たシーズンであり、これだけ自分達のサッカーを体現することに集中できたシーズンは、数える程である。
それだけに長い連勝ができるような爆発力が、昇格には必要だ。
・得失点でも優位に立てる爆発力
そこに関係すうる二つ目は、3点以上の試合を10試合作る事ができるかどうかである。今季の岡山は、開幕の磐田戦、ホームの金沢戦、アウェイの東京V戦の3試合しかない。
といった感じにやはり、上位に名前を連ねるチームというのは、爆発力がある。
町田や清水のように、守備から入って、個の力で、攻撃に移った時に、力で打開できれば良いが、岡山には難しい。戦術や選手の相性、対戦クラブとの相性などを考慮した上で、岡山の「型」に嵌った時に、止められないような試合を増やすことが必要だ。
今のJ2を観た時に、守備ができますというチームや対戦相手に応じて戦えますというチームや、ジャイアントキリングの可能とする一体感のあるチームカラーのサッカーで、個の力を覆すような戦術を一貫性を持ったチームなど、強いチームだけではなく、一癖も二癖もあるようなクラブも増えて来た。
戦力面で、勝つことが厳しそうに感じるチームに対して、どう勝っていくのか。木山ファジに移行してからは、守備の型に嵌めて、一撃で仕留めるサッカーから、相手の陣地でプレーして、手数を増やす事で、主体的に戦い相手より多く得点を決める。そういったサッカーに舵を切った。
であれば、やはり爆発力のあるサッカーができないと駄目であり、それができた時には、更に連勝ができるような勢いを作らないといけない。
今季の岡山は、良くも悪くも岡山のサッカーが見えてこなかった。そこで、多くの方が、岡山スタイル議論が、盛り上がったが、岡山スタイルと言えば、かっこ良いが、より具体的に述べると、スタイル以上に、岡山の得点パターンとは何か、ここが見えてこない(少ない)シーズンであったように感じる。
もしくは、岡山スタイルは、完成していた(完成に近かった)かもしれないが、勝利には足りなかった(物足りなかった)シーズンでもあった。
それもその筈である。9ハン・イグォンがフィットしなかった事。7チアゴ・アウベスの怪我の期間の長さ、48坂本 一彩の代表での離脱や怪我、18櫻川 ソロモンの絶不調、38永井 龍の怪我、32福元 友哉のサイドへの挑戦。99ルカオの補強がなければ、もしかするとFW総崩れで終盤に失速して、残留争いに巻き込まれていたかもしれない。
岡山のスタイルというか、岡山の得点パターンの再構築のための、岡山のチーム編成の見直しや今季の主軸選手をベースとした継続により生み出される「うねり(勢い)」を作り出せるか。
そこのヒントを残り2試合で、探るヒントを見出したい。勝ちたかったので、温めていた策や形というのに踏み切ってトライできなかった挑戦を、もしかすると観れるかもしれない。そういった意味では、非常に楽しみで、41節と42節の2試合で終了ではなく、1節への架け橋をかけて欲しい。
終わり良ければ総て良し。J1には、届かなかったが、来季への希望を膨らませるサッカー。23シーズンの岡山のサッカーを、可能性を魅せて欲しい。
バックスタンドへ挨拶に向かう選手の足取りはとても重い。この時は、可能性が残されていたので、次の試合に向けて、気持ちを残そうとしていたはずだ。
ただ、どこか元気のないというか、悔しさを滲み出ていた後ろ姿(背中)に筆者には映った。
そして、11/03(金)の甲府の勝利の結果により、今季の昇格の可能性消滅と同時に、来季での昇格に向けての戦いが始まった事を意味する。
『 潰えた灯to点灯した光〜後ろ姿〜 』 了
文章・写真・図=杉野 雅昭
text・photo・figure=Masaaki Sugino
5、アディショナルタイム~一万人~
・岡山サポーター向けアンケート
「岡山のMIPは?」
・栃木戦のファジフーズ
・イベント写真
・バイスの言葉
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