2024ファジアーノ岡山にフォーカス26『 (求)徹底の徹底と決断の決断~軽創警解と形造型壊~ 』J2 第13節(A)vsモンテディオ山形
1、感情と理性の狭間~苦しみの先に~
ここ1か月、成績はとても苦しいものとなっている。一時期首位であった時のような勢いは、今の岡山にはない。離脱者が多数でている状況でこそあるが、同じ状況でやっている以上、言い訳にできない。と、理解できていても「こんなはずじゃ。」「岡山はもっとできるはずだ。」といった気持ちが心を支配してしまう。
今節もまた「相性が良かった(はず)」の山形の対戦という事で勝ちたかった試合であったが、結果は皆さんのご存じの通り、2度のリードを守り切れず、2-2の引き分けに終わったが、この試合を考えるうえで、ポイントは3つあると感じた。
この3点について、前半と後半の決定機と得点シーンと失点シーンを中心に振り返りたいと思う。それでは、よろしくお願いします。
2、形を造り型を壊す~軽創警解の壁~
立ち上がりは、CFの9番 グレイソン 選手のポストプレーと、シャドーの2人の走力を武器に多くの攻撃に関与できる力、左右のWBのフィジカルを武器にした攻撃。
この5選手の武器を活かすことが出来たことで、試合の立ち上がりに多くのチャンスを作ることができた。しかし、システム上の噛み合いでフリーとなっていた岡山の左右のWBの所にパスを出されたタイミングで、山形の左右のSBが直ぐに寄せて、山形が守るようになると、岡山の攻撃の勢いは、立ち上がりが嘘にように減速した。
開幕のころは、それでもボランチに14番 田部井 涼 選手や左CBに43番 鈴木 喜丈 選手がいることで、この5枚の良さを出して、(DFやCHの所で)攻撃の形を作るチャンスメーク力があったことで、相手が守備対応してきても「形」を作り、再現性の高い「型」で、得点を決めて勝ってきた。
しかし、前半の岡山は、この5人にフリーでパスが入らなくなると、試合が停滞した。岡山が、前の5選手で良い攻撃ができなかった時間帯でも、五分五分の状況で収めてから、攻撃を繋いでやり直した時には、良い形を作ることができていたが、一度やり直している分、山形も守備の形ができていることが多く、良い形でシュート数を積み重ねたが、山形も守備で良い形を作れていて、岡山が前半で得点することができなかった。
ただ、決定機と言える決定機で決め切れない理由は、意外性や強引さが足りない時があるのではないかと感じる。綺麗にやり過ぎているというか基本に忠実過ぎるのだ。岡山の「型」に対して、山形が準備できているために、素直にそこにシュートを選択しても、そこへの守備の警戒は強く、そう簡単に得点という結果には繋がらない。
改めて試合を見返して感じたことは、山形は、岡山の攻撃の形の創造力で形を作る攻撃に対して、岡山の型を警戒して作った山形の守備の型の予測の範囲に留まった(GK正面の)シュートが多かったことである。
つまり、山形は、「軽創警解(岡山の攻撃のアイデアの効果を軽くして、最後のシュートに対して警戒した上で防げる答えの解答ができていた)」ということだ。
岡山としては、「形造型壊(攻撃の形を作って最後は型に壊すような意外性や予測の上を超えるシュート)」というプレーをどう作っていくかだ。
前半はまさに山形の「軽創警解」の守備の壁を、岡山として「形造型壊」で崩す力が足りなかった前半と言えるのではないでしょうか。
3、得点と失点考察~型壊のプレー~
後半は、両チーム合わせて4得点入ったので、得点を中心に振り返ります。
・後半5分:0-1:9番 グレイソン 選手(19番 岩渕 弘人 選手)
まず、最初の9番 グレイソン 選手の得点シーンですが、岡山は、シャドーの選手も守備に戻ることも多いですが、岡山は、ボール奪取直後の流れで、24番 藤田 息吹 選手が、一本のミドルスルーパスに反応したのは、27番 木村 太哉 選手でした。
左右が逆になっていることで、山形からすると少し意表を突かれた部分はあると思いますし、そこからクロスも良かったですが、27番 岩渕 弘人 選手の「決める」よりも「何処に当てて中に」という意識で、中に折り返せました。
この時、山形サイドはシュートを警戒していたことで、9番 グレイソン 選手のマークに行けていなかった。そのため、ゴール前でありながら9番 グレイソン 選手へのマークが不在で、フリーでの高い打点でのボレーシュートが可能となりました。
こうなると、至近距離であったこともあり、枠内に飛んだシュートであったことで、DFのクリアは前に飛ばず、ネットを揺らすことになった。山形サイドとしては、失点を防ぐことは難しかったでしょう。
得点は、こういった感じに予測の難しい攻撃の形と対応の難しい難易度の高いアクロバティックなシュートにより、生まれた得点と言えるでしょう。山形としては、19番 岩渕 弘人 選手の時に、ヘッディングに対してのライン上のクリアを狙った守備の選択ではなく、9番 グレイソン 選手のプレーを制限できるようなアクションができていれば、ここまでフリーで打てなかった可能性もありますから、こういった意外性が、得点には必要だと言えるでしょう。
また、その直後の19番 岩渕 弘人 選手のロングシュートも枠内で飛んでいれば得点であったかもしれませんし、こういった良いプレーを増やして欲しいと感じますね。
後半12分:1-1:オウンゴール(18番 田上 大地 選手)
このシーンで何故オウンゴールになったかですが、それはやはり速い低めの弾道のクロスを入れたことにあるでしょう。
オウンゴールをしてしまった18番 田上 大地 選手が、山形の選手に対してマークがついていなければ、速くても対応できた可能性、もしくは無理に触らなかったという可能性も高かったですが、後ろにいた選手をかなり意識しつつ、クリアにいったことで、巧くクリアできなかったというシーンになりますね。
49番 スベンド・ブローダーセン 選手も「当然」クリアできたと思ったでしょうから、流石に反応できなかったと思います。
岡山もクロスからの得点が少ないですから、1つ「速いクロス」を精度を落としてでも入れていく選択肢も強めても良いかもしれないですね。仮に、そこで合わせることができなくても二次攻撃も生まれる可能性もありますから。
18番 田上 大地 選手にとっては悔いが残るプレーではあったと思いますが、そういった対応が難しいクロスを入れた14番 坂本 亘基 選手の判断が良かったプレーと言えると思います。本当に、シンプルではありましたが、良い仕掛けからのクロスでしたね。
後半27分:2-1:10番 田中 雄大 選手(88番 柳 貴博 選手)
17番 末吉 塁 選手の早めのクロスに対して、一度はクリアされるもこぼれ球の先にいた88番 柳 貴博 選手が、胸トラップしてシュート性のパス。88番 柳 貴博 選手が、ずっとゴール前を観ていると、恐らく混戦の中で入ったり、10番 田中 雄大 選手へのパスにもなればという感覚でそのコースに出していると思います。
その狙い通り?10番 田中 雄大 選手へのパスとなり巧くトラップして収めました。そして、ここで10番 田中 雄大 選手の判断というか直感が非常に良かった。GKのいない方向への上手く体を回転させて難しいコースへのシュートを選択しました。
岡山が攻める方向からみて、正面や右に蹴っていれば、防がれた可能性があります。後ろにDFもいて、そこに引っ掛かる可能性もありますが、右にはGKが立ち塞がっていることを感覚で把握できていた。つまり周りが見えていた上でのシュートのコースを決めたことで、結果的に、得点にすることができたというシーンでしたね。
似たシーンは清水戦でもありましたが、その時は、19番 岩渕 弘人 選手が股下を狙って、蹴るより先に膝をついてそのコースを消した57番 権田 修一 選手に防がれたんですが、コースを狙っていれば、もしかしてというシーンだったと思います。試合こそ違いますが、明暗を分けたのは、難しいコースを狙うという挑戦的な意識と決まらなくても良いからという裏を突く意識の高さ、こういったものを10番 田中 雄大 選手から感じました。
その後の決定機では残念ながら決めることはできませんでしたが、ここまで、出場時間を考えると、短い時間で、得点を決めることができているのは、決して偶然ではなく、10番 田中 雄大 選手のシュートに関する判断が良いからであり、上記で挙げたようなストライカーのような感覚があるかではないでしょうか。
後半45+3分:2-2:9番 有田 稜 選手(15番 川井 歩 選手)
このシーンは、4番 阿部 海大 選手か29番 斎藤 恵太 選手に寄せに行って欲しかったシーンでした。行かなかった(行けなかった)ことで、自由に狙いすました所に浮き球のラストパスを入れられてしまったというシーンだったと思います。
ノープレッシャーで、タレントが揃っている山形に自由にパスをいられてしまった結果、DFで一番背が低い15番 本山 遥 選手の所を狙われてしまった。身長差実に14センチですからね。15番 本山 遥 選手を責めることはできませんし、チームとしてボールホルダーに厳しく行くという部分をチームとしてもっと徹底したかったシーンでした。
繰り返しになりますが、確かに、15番 川井 歩 選手のラストパスの精度も高く、9番 有田 稜 選手も高かったですが、岡山が守備でできることもあったと思います。
山形の同点ゴールで岡山の弱い所を突いたような意識が岡山にも、もっと有ればと、99番 ルカオ 選手の活かし方を観ても感じますね。チームとしての怪我へのリスク管理を含めても、色々な甘さが、突きつけられている。ここは、ある程度受け入れて改善していくべきところなのかもしれませんね。
4、総括~守備は表を攻撃では裏を~
良い守備は、シンプルにそのプレーで判断できると思います。良い攻撃では、記憶にも記録にも残りにくいプレーの意図や狙いが問われる。そこを改めて感じた試合に感じました。
岡山は、正攻法で、多くの記録にも記憶にも残る得点を決める選手が多かったですが、今の岡山には、その部分を担える選手が少ないように感じます。
同じ防がれた枠内シュートですが、昨年まで岡山にいたチアゴ・アウベス 選手にしても規格外の精度と威力の左足で、多くの得点を重ねて、その前の(現C大阪の)上門 知樹 選手は、得点が決まるコースにGKがいても、ドライブシュートという武器で、通常のミドルシュートが決まらないコースでも多くのミドルシュートを決めてきました。その前の前の仲間 隼人 選手は、予測できない判断やアクロバティックなシュートなどの強引なシュートで、得点を重ねていました。
現在の岡山は、本当に崩し切らないと決めることができない。シュートが苦手とは言わなくても得意な選手が少ない。そのため形ができても決めることができない。そういった試合が続いているように感じます。
結果論に感じますが、8番 ガブリエル・シャビエル選手が、これから戻ってくれば、もっと活躍したかもしれないですが、もしステファン・ムーク 選手が残っていたら、今季のチームで多くの得点に絡めたのではないかとも感じます。
とはいえ8番 ガブリエル・シャビエル 選手が、今季の「攻撃の予測の上」を行くことが最もできる「意外性」のプレーの塊のような選手であるので、早く戻ってきて、チームの得点源として活躍して欲しいですよね。
現在の岡山のように、チーム状態が悪くなれば、苦しい時間帯の一歩がでないとも感じた悔しい引き分けを経験することなると痛感した試合になってしまいました。もちろん、キャンプでも恐らく別メニューが続いていた29番 斎藤 恵太 選手が、寄せに行く徹底できなかった。寄せきれなくてもプレッシャーを15番 川井 歩 選手にかけて欲しかった。自由を許さない守備のプレーをチームとして減らしていくことが重要。
表に見える(認識できる)守備の隙を防ぎ、表に見えない(予想外)攻撃の意外性や大胆なプレーで、得点を増やして、強いチームにも勝てる可能性高いチームへと化けて欲しいと感じますよね。
離脱選手も多い現状ですが、17番 末吉 塁 選手や24番 藤田 息吹 選手を観ていると、怪我しないこともその選手の才能だと思いますから、今の練習から強度が求められるチームであるのなら、その部分をより高く評価したチーム編成も来季に向けて、改善していきたいポイントに感じました。
攻撃では「形造型壊(攻撃の形を作って最後は型に壊すような意外性や予測の上を超えるシュート)」というプレーをどう作っていくか。
守備では「軽創警解(攻撃のアイデアの効果を軽くして、最後のシュートに対して警戒した上で防げる答えの解答していくこと)」をより突き詰めて欲しい。
守備は「徹底の徹底」を、攻撃は「決断の決断」を、チームとして突き詰めていくしない。
文章・図=杉野 雅昭
text・figure=Masaaki Sugino
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