逢いたい菜【毎週ショートショートnote】
「逢いたい菜……?」
楓は、スーパーで不思議な野菜に釘付けになった。小松菜のような形をした薄い桃色のそれは「逢いたい菜 300円」というシールが貼られている。
「……なんで誰も手に取らないの?」
買い物客たちはみな、異彩を放つピンクに目もくれない。
楓は買い物カゴに逢いたい菜を入れた。
今晩のビールのお供はこれだ。退屈な日々、たまには冒険するのもいいよね。冷蔵庫の豚バラと炒めてみようなどと考えながら、レジにカゴを置く。
レジの若い女性店員がカゴの中の野菜を手に取ると、顔を上げて楓を見る。じっと見つめられ、楓が思わず目を背けると──賑わっていた店内から客の姿が消えている。
「嘘……」
店員は顔を下に向けて小さく笑うと、突然嬉しそうに声を弾ませた。
「やったー! 私の魔力で栽培した逢いたい菜、見つけてくれた!」
「…………なに?」
「私は魔法少女の鈴。『魔力の才能がある人に逢いたいな』と思ってこの野菜を置いてたの。これからよろしくね!」
「よろしくって……ど、どういうことぉ!?」
楓の退屈じゃない日々が始まった。
(455字)
ここから主題歌が流れてタイトルがバーンって出ます。
私が学生の頃も、ライトノベルがとても流行っていたなぁと思い出しました。
たらはかに(田原にか)様のこちらの企画に参加させていただきました。
お読みいただき、ありがとうございました。