星が降る|シロクマ文芸部
星が降るというのは、どこかロマンチックな響きだ。滅多にないことのようにも思えるけれど、実はそれほど珍しいことではない。その証拠に、年に数回ほど大規模な流星群が観測される。
うだるような暑さの八月半ば頃に、ペルセウス座流星群が見頃を迎えるというニュースを一度は目にしたことがあるだろう。
そんなニュースに興味を持ったのが八歳の娘だ。食卓を離れ、液晶の夜空に食い入るような後ろ姿。私も妻もどちらからともなくカレンダーを確認すると、二日後の夜が空いている。
急遽、家族全員で「星の降る丘」へ行くことが決まり娘は大はしゃぎ。
車のエアコンから流れ出る生ぬるい風を顔に浴び、夜道のドライブが始まる。頭上遥かに浮かぶ満天の星が、私たちを歓迎してくれているようだ。
涼風が吹く丘陵は見物客で賑わい、星たちが濃紺のキャンバスに軌跡を描く度に歓声が沸く。娘は、じっとその瞳に流星の煌めきを焼き付けていた。
その日の娘の日記には「長れ星がきれいだった」と綴られていた。
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