ゲームとランダム要素

(この記事は、ファンタジーとゲームブック系メールマガジン「FT新聞」に掲載された過去記事です。)

(ゲームとランダム要素 第1回)
おはようございます、自宅のリビングから杉本です。
少し、寒くなってきましたね。

我が家にはネコが2匹います、1匹は私の愛ネコやすか、もう1匹はガンダルフという、妻の愛ネコです。
私の寝所は日当たりのいい2階にあるのですが、たまに昼寝をしようとすると、必ず私のベッドにガンダルフがいます。
指輪物語の登場人物名をつけるぐらいですから、私が名づけ親ではあるんですが……まったく私にはなついていません。
なついていないのに、私のベッドを占拠してはばからないんです。

最初はネコの身体を持ち上げて、妻の部屋に運んでいたんですが、なんだかふきげんに見えました。
だから、最近はガンダルフがベッドにいたら邪魔をせず、となりに顔を寄せて寝るようにしています。
気まずいようで、すぐにいなくなります。

ネコはたぶん私と同じです。
「自分で選びとった人生」を好み、愛する。
他者に決めてもらうのでは、自分の人生にはならない。
そんな感性を持つ生き物なのではないかと、感じます。

今日の話題は「ゲームにおけるランダム要素」です。


◆ランダム要素とは。
「サイコロを振ること。
奇数が出たら、君は死ぬ。
偶数が出たら、ゲームクリアだ!」

そんな1パラグラフのゲームブックがあったら、まず間違いなく人気は出ないでしょう。
ランダム要素とは、サイコロなどを使って結果を分ける要素のことです。
上記の例は極端すぎますが、ランダム要素はゲームをおもしろくするために、さまざまな活用方法があります。


◆でも、その前に。
ランダム要素については、昔から否定的な意見が数多く挙げられてきました。
日本人は「運次第」というものに対して、「実力の介在する余地がないもの」だからダメという見解を示す人が多かったと、なにかの記事で読んだことがあります。
日本では「将棋」や「オセロ」のような、運が介在する余地のないものが「より高度な」ゲームだと考えられていて、トランプなどは運の要素が絡む遊び方が多いため、程度の低いゲームであると考える。
そういう人が多いと、その記事にはありました。

これは、私も本当によく耳にする考え方で、ものを作るさいに解決するべき大きな課題として立ちはだかり続けてきました。


◆ある読者のご意見。
はじめてゲームブックをやったある方が、戦闘の場面でこんなことをツイートしているのを見かけました。

「サイコロを振って、1ゾロが出たら敵から2点のダメージを受ける。もういちど振って、また1ゾロが出たらもう1回、2点のダメージを受ける。この戦闘では、それが何度も繰り返される」

「つまり、36分の1の確率で体力点が2点減る。減る。また減る。これが続いた人は、やっていておもしろいと思うのだろうか」

このつぶやきはとても個性的でしたが、私は、同種のご意見を耳にしたことが何度もあります。
日本人はゲームを楽しむさい、運の要素がつよすぎるものを好まない傾向にあると私は感じます。
運要素がつよいと「運ゲー」などと呼び、通常のゲームとは別の区分でくくろうとします。


◆ランダム要素は、運要素とイコールではない。
ランダム要素のことを、運要素だと考えられる方が多いことでしょう。
これをお読みのあなたも「えっちがうの?」と、思われているのではないかと思います。
たしかに、ランダム要素が運要素となる状況も存在します。
たとえば、最初に挙げた「サイコロを振って奇数が出たら死亡、偶数が出たらクリア」は、明らかに運要素です。
しかし、ゲームにおけるランダム要素とは本来、そのように設置するものではないのです。

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