1年間服を買わないで過ごした私に訪れた驚愕の変化について ⑥

お直し行脚の旅 後篇

商店街の個人経営お直しサロンに駆け込んで、スーツのお直しに成功した私…。

次はいよいよ、リメイクに挑戦することにした。素材は

5.短すぎて違和感のあるワンピース

だ。半袖で、はりのある生地で、60年代風のコンパクトな形。本来はチュニックとして着るべきところを、母に頼んで丈だししてもらい、自分の低身長を活かしてマイクロミニのワンピースとして着ていた。

私は背が低く童顔なのでマイクロミニ丈が似合う。いや、正確には似合ったのです…子供産むまでは。本当はもっと前から似合わなくなってたのかもしれないのだけれど、とにかく子どもが出てお腹が引っ込んで、久々にマイクロミニを着たら、見事に似合わなくなっていたので愕然とした。

ただしこのワンピースは捨てがたい。肩~袖があつらえたようにぴったりで、しかもコンプレックスのなで肩をカバーする素晴らしいデザイン。生地も上等で、しかも大切に着ていたからほとんどくたびれていない。

そこで、私は、このワンピースをカットソーに仕立て直せないか、と思いいたった。

商店街のお直しサロンのお姉さんは優しかった。前回と同じくてきぱきとピン打ちをすませると、素人には見当のつかなかったポケットの処理の仕方も提案してくださり、そしてそれは中3日(!)ほどで出来上がった。思ったとおりの形で、夏場、1着も新しいアイテムの増えなかったワードローブに新鮮味を与えてくれ、大活躍だった。

お直し行脚の旅、最後に残ったアイテムが難題だった。

6.シルエットのでかすぎるコート

テキスタイルに一目ぼれして買ったコート。白地にオレンジと紺と黄色のマーブル模様のようなド派手な柄で、超ビッグシルエット。そして高価。高いピンヒールかプラットフォームシューズを履くとバランスがとれたのだが、今や私にその余裕はない。

しかし、どう直したらいいのか皆目見当もつかない。

わたしは意を決して、③完全予約制の個人サロンに駆け込んだ。ファッションに詳しい友人に個人的に紹介してもらったところで、直し方のカウンセリングからしてくれるという。正直言って敷居は高かったが、もともとのコートに思い入れがあり、「何とかして着たい」という強い思いがあったからこその行動だった。

メールで問い合わせたところ、料金は修正個所や技術によって変わるとのことで、なんとなくの予算の上限を示していただきつつ、その方の個人宅でのカウンセリングに伺った。

どんな服と着たいか。靴は? ライフスタイルは? 見事なカウンセリングとピン打ちの結果、ブランドのスタイルであるビッグシルエットは壊さず、絶妙なリサイズを提案してくださった。仕上がりは二か月ほどだという。修正個所も最小限に抑えてくださったので、料金は1万5千円程度に収まった(すごい!)。聞くとその方は、某ブランドのデザイナーもなさっているそうだ。なるほど、ディレクションが緻密で正確なわけだ!

お直し行脚の旅を経た結果、6着の服はすべて、タンスの肥やしから現役に復帰した。

わかったことは、お直しのお店にも得意不得意はあり、そしてそれぞれのお店と自分との間にも相性があるということ。

価格と時間と、自分が何を求めているのか…ほつれを直したいのか、リメイクしたいのか、その際に自分に明確なビジョンはあるのか…を照らし合わせて、自分のニーズに合致する職人さんを探す。それはきっと、一昔前、洋服をオーダーで作る時代には普通だったことなんだろう。しかし洋服をつくってもらうことの少なかった世代の私には、新鮮な体験だった。

ファストファッションのお店がこれだけ増えてしまうと、服を直す必要性は、まず感じないのが普通だ。だって買いに行った方が早いし、流行りの形がすぐに手に入るし。

だから服を直して着るのは、どちらかといえば、非合理的だ。

たとえば私とは反対に、服をシーズンごとにファストファッションでそろえて、飽きたらクローゼットの中身まるごと刷新するのも一つの考え方だし、クールだな、とも思う。

お直しをしてまで服を着たおすかどうかは、ある種の分岐点で、すべての人がよしとする考え方ではない。だから洋服のお直しを、私は単純に人には薦めない。

ただし、気に入りすぎて捨てるのが苦しい服をお持ちの方、何らかの事情で体型が劇的に変化してしまい、まだ着られる服が着られなくなってしまった方などは、少しの勇気をもって、お直しショップの扉をたたいてみるといいかもしれない。見積もりの結果、直すのをあきらめたとしても、店員さんは優しくしてくれるのでご安心を。

…⑦につづく。次で最終回です。

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杉田千種
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