丁寧な暮らしをあきらめる 前篇
雑誌をたくさん読んで育った世代なので、マガジンハウス系の文化人が提唱するような丁寧な暮らしに憧れている。
けれど、ゆるやかな24時間体制、実家と自宅の二拠点で働くいまの私には到底無理…。
だからこそ、最近はとにかく暮らし回りをミニマムにするのが気分だ。出来るところまで切って楽をして、精神的な安定を保つことにしている。そうして丁寧な暮らしをあきらめると決めて、1年ほどが経つ。
まず、食べるものから、手間をミニマムにすることを徹底している。
たとえば、もう私はだしはとらない。うちのだしは100パーセント顆粒だしだ。そのかわり、出張で訪れた日本各地の、名産の顆粒だしを集めて使っている。
土鍋で炊いていたごはんは、炊飯器に切り替えた。米を研いでセットさえすれば、自動的にごはんが炊けるタイマー機能は、やはり便利だ。土鍋ごはんより味が劣ると夫は言うけれど、火のそばにいなくてもいいことで生まれる時間のゆとりを説明したら、納得してくれた。
冷凍技術は、本を買って研究した。何冊か買ったが、この本が一番役に立った。もっと親切なコンセプトの本もたくさんあったのだが、食材をできるだけそのまま、簡単に冷凍するほうが、我が家のスタイルには合っていた。一週間に2~3日は、都内の実家に息子を預け、自分もそこと自宅を行き来する生活なので、食材を腐らせないように保管することは家計の死活問題だ。
冷凍した野菜や果物は、おかずの調理の他にスムージーに使う。解凍せずに材料をミキサーに放り込み、すぐに作れるスムージーは、息子の大好物でもあり、ビタミン不足に陥りがちな我が家の食生活を支えてくれている。
働きながらごはんをつくっていると本当にしんどい瞬間がたくさんある。子どもが生まれる前より、ちゃんとした献立を用意できなくなって、夫に申し訳ない気持ちもすこしある。
たくさんの情報があって、自分より立派に家事をこなしている人ばかりが目につく。そしてやろうと思えばある程度はできないこともない。でもそれをすべてこなしてストレスで当り散らすより、味の濃いデパ地下のお惣菜を買ってきて、ニコニコしているお母さんの方が、家族はきっとうれしい。
そう悟って楽をすることに決めた。
元来プライドが高く負けず嫌いな私だけれど、勝たなくていい場所もある。夫と息子は、そんなことを教えてくれた。
…次回は買ってよかった家電について書きます。