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1年間服を買わないで過ごした私に訪れた驚愕の変化について ③

買い物のマイルールとTPO

3,4ヶ月のチャレンジで、自分が無意識によく選んでいる服がいかに限られているかを思い知らされたわたしは、数カ月後のチャレンジ終了後の買い物ルールを一つ定めた。

それは、ヘビーに使った末に、ぼろぼろになってしまったアイテムを買い換える際には、1ランク上の質のものを買っていいというもの。

こうすると、よく使うものにお金を割けるようになるので合理的。新しいアイテムは残ったお金で予算を立てようという算段だ。

……なんだか自分に言い訳しているような気持ちになってきたけれど、心がときめくような上質な服を着ることも確かにわたしの人生には大切なのだ。だからこそ限られた予算をいかに上手く使うか、ということが課題なのです…どうか許して。

閑話休題。4ヶ月目に自分に起きた変化は、TPOを強く意識できるようになったことだった。

チャレンジを始める前、わたしにとって一番大切だったのは、自分の着たい服を着たい時に着ることだった。流行りの格好をしたい、とか買ったばかりのあれを着たいとか、雑誌で見たあんなコーディネートをまねしたい、とか。結婚式や何がしかのパーティにめかしこんで行くことはあっても、通勤を繰り返す毎日のなかでは、「意のむくままに」「今の気分の」服を選んでいたのである。

しかし、新しいアイテムが増えないワードローブでは、その趣向はどんどん薄れてきた。クローゼットを開けても開けても、並ぶのは同じ服。そうすると、服を選ぶ基準は、どんどん「自分」から離れていく。

誰と会うか。

どこに出入りするか。

天気は?気温は?

何時から何時まで外出するのか。

繰り返し、繰り返し、各々の条件を頭の中に並べて服をマッチングしていくのだ。

なんかそんなの面白くなさそう――ファッションに興味のある人は、そう言うかも知れない。

スタイリスト・にしぐち瑞穂さんの発言の中で、印象的だった一言がある。

「電車とか、街とか、公共の場所でね、ファッションにさほど興味のなさそうな人の装いを見ると面白いですよ。そういう人って、流行ではなくTPOで服を決めているから。」

はじめはピンとこなかった。でも数か月たってやっとわかった。洋服が大好きだったからこそ、見えなくなっていたことがあったのだ。自戒した。

でも、不思議な事に、毎日同じワードローブから選び取る服の組み合わせは、一方で、どんどん「自分らしさ」を帯びてくるのである。

よく考えたら当たり前ですよね。だってそもそも、その洋服たちは、沢山の洋服のなかから、自分が選んで購入したものばかりなんだから。

さらに、5か月目、自分のライフスタイルと洋服の密接な関係も見えてきた。そしてあわれにも死蔵されていく服たちの運命は…!?

ということで、次回は着ないのに捨てられないアイテムたちをどうするか、について書きます。

…④に続く。

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杉田千種
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