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外出自粛日記 5月14日 終電ごはん

朝、やっていることを途中で投げ出す息子を叱って険悪になる。まあこういう日もあるさ。

昼から夫が出社。冷蔵庫の中身のツナとトマトとアスパラで素麺カッペリーニを作って送り出す。私は仕事、息子は空手のオンライン稽古。

今日の夜と明日、何を作ろうか迷って、本棚の料理本を見る。自分が8年前に編集した『終電ごはん』という本が目に止まる。古巣・テレビ東京の先輩、佐久間宣行さんにドラマ化していただいたこともあり、思い入れの強い本だ。

2012年は、震災後だったけれど、まだワークライフバランスという考え方がこんなに一般的になるまえで、深夜まで仕事する、というスタイルが主流だった。深夜まで働いて、帰ってきた人が、ヘロヘロになりながらも作れるレシピ、ということでこの本を作った。そういう時代だったのだなぁ、としみじみしてしまった。

2020年の今では、働き方改革が進められ、コロナウイルスが猛威をふるうなか、リモートワークという選択肢まで一般的になりつつある。満員の終電は過去のものになった。そんな気がする。

けれど一方、改めてこの本を開いてみれば、今の自分に必要なレシピがたくさん載っていた。何せ疲れ果てた人がギリギリの状態で台所に立つことを想定し、手軽さを最優先に提案していただいたレシピなのだ。梅津有希子さんが、料理家の高谷亜由さんとの打ち合わせで、「できればまな板も使いたくないんです!」と力説していたのを思い出す。

高谷さんは全て3ステップで出来上がるレシピにしてくださった、しかも洗い物ができる限り少ないように考えてある。終電で帰らなくても、とにかく時間がない幼子の親(私)にはぴったりだった。深夜に食べても罪悪感のないように、ヘルシーなレシピを多めにしてあるのは、リモートワーク中で運動不足の今、もってこいだと思った。

冷蔵庫の中身と相談して、明日はこの本から「キャベツとコーンのみそバタースープ」を作ることに決めた。



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杉田千種
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