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短編小説を依頼してみた<山桜守>(前編)

ChatGPT にまた短編小説を依頼しました。山を開発で壊される、その開発に反対している弥生の挑戦を。
イラストも、ChatGPT へお願いしたものです。では、


山桜守

序章:春、山桜の下で

春の山里は、時間がゆっくりと流れる。鳥のさえずりが響き渡り、澄んだ空気が全身を包むようだった。山道を登り切った先にある小さな神社の境内では、山桜が満開の花を咲かせている。淡いピンクの花びらが風に乗り、空高く舞い上がる。

山桜は、この地の象徴だった。幼い頃から弥生は、この桜に見守られながら成長してきた。花が咲けば春の喜びを感じ、散り際には新しい始まりを願ったものだ。

境内の中央に立つ本坪鈴に、弥生はそっと目をやる。その鈴は神社の拝殿に吊るされ、人々の祈りを神様に届ける役割を担っていた。祖父母の代から代々この神社に奉納されてきたもので、幼い頃からその音に心を慰められてきた弥生にとって、それは特別な存在だった。

彼女は心の中でそっと呟く。
「この山を清めて……」

その言葉が浮かんだ瞬間、胸の奥に熱いものが込み上げてくるようだった。自分の中の祈りが一層強まるのを感じた。

深く息を吸い込んで手を合わせると、ふと目の前にある地方新聞が視界に入る。

「『地域のための開発』国会議員・岩崎敏夫、推進演説」

その見出しには、満面の笑顔を浮かべた岩崎議員が写っている。

「……地域のためなんて、嘘っぱちじゃない。」
弥生は新聞を握りしめ、唇を噛んだ。その記事には、山を削り神社を壊してリゾート施設を建設するという計画が美辞麗句で語られていた。


隣に載っている別の記事に目を移す。
「意見を戦わせる若手議員 高野俊介、岩崎氏に疑問呈す」
岩崎に正面から疑問をぶつけた若手議員の名前が記されている。

「……こういう人がもっと増えてくれればいいのに。」

「おい、そんなに真剣な顔してどうした?」
背後から聞こえた声に振り向くと、高校三年生の諒太が木材を担いで歩いてきた。

「また新聞かよ。」
諒太は呆れたように言いながら、肩に担いだ木材を境内の片隅に下ろした。

「だって、読んでると余計に腹が立つんだもん。」
弥生は新聞を丸めるが、ふと山桜を見上げた。桜の花びらが風に揺れるたび、記憶の中の幼い自分が浮かぶ。

「この神社や山桜が壊されるなんて、絶対に許せない。」

諒太はそんな彼女をじっと見つめ、ため息をつきながら地面に腰を下ろした。
「……俺だって悔しいさ。でも、ただ怒ったって山も桜も守れないだろ。」

「じゃあ、どうすればいいの?」

「考えようぜ、俺たちにできることを。」

桜の花びらが二人の間に舞い降りる。風に乗って流れるその様子を眺めながら、弥生は小さく頷いた。
「この桜が散る前に、何とかしたい。」

第一章:謎のカラス天狗

夜の神社は静寂に包まれていた。本殿の中、薄暗い蝋燭の光が揺れ、柱や天井に影を落としている。その静けさの中で、かすかな鈴の音が響き渡った。

高校二年生の弥生は、一心に神楽を舞っていた。手に持った神楽鈴を振るたびに、清らかな音色が本殿全体に染み渡る。

「……この山と桜を守ってください。」

舞いながら祈る心が鈴の音に乗り、本殿を満たしていくようだった。彼女の動きは柔らかくしなやかで、幼い頃から祖母に教えられた神楽の所作が身体に刻まれている。

舞の終盤、弥生は一度鈴を止め、深く息を吸い込む。再び音を鳴らすと、その清らかな響きが天井から下へと流れ、まるで神々の耳に届くような感覚を覚えた。

舞を終えた弥生は、そっと鈴を横に置き、拝殿の正面で手を合わせる。
「どうか、この山と桜を……」

その瞬間、本殿の扉が微かに揺れた。

「……風?」

弥生は振り返るが、扉は静かに閉じられたままだった。しかし、何かがいる気配がした。背筋がざわつき、蝋燭の揺れる明かりが一層鮮明に影を描く。

再び振り返ると、開け放たれた扉の向こうに黒い影が立っていた。

烏羽色の羽織を纏い、鋭い目を持つカラス天狗だった。


「久しいな、この山桜を見守る者よ。」

その声は低く、深い響きを持っていた。弥生は思わず一歩後ずさった。
「……誰? どうしてここにいるの?」

天狗は無言のまま、静かに一歩前に出ると、本殿の中を一瞥した。
「お前たちが守ろうとしている山。この桜の木の下で、何かを変えたいと思っているのだろう。」

「そうよ。でも……どうすればいいの?」

天狗は軽く手を振り、外の夜空を示した。月明かりが扉の隙間から差し込む。
「私が手を貸してやる。ただし、覚悟が必要だ。」

弥生は天狗の鋭い目に視線を奪われ、迷いながらも小さく頷いた。
「……教えて。私にできることを。」

天狗は静かに頷き、鈴の置かれた場所を一瞥した。
「鈴の音が届くのは神々だけではない。お前がその音を信じるなら、真実もまた見えてくるだろう。」

弥生はその言葉を受け止め、拳を握りしめた。

第二章:日常とゼネコンの裏側

山々の風景が朝日に染まる中、静けさの中に響く鈴の音が遠くから微かに聞こえた。それはまるで、山全体に染み渡るような穏やかさを帯びている。

作業場では、高校三年生の諒太が父親の源太の指導のもと、木材に向き合っていた。手に持つ鉋を、木目に沿うように動かしているが、どこかぎこちない。

「そうだ……胸元に引き付けるように。」
源太が静かに声をかける。その言葉に諒太は少しずつ動きを調整し、木材の表面に薄い木屑が帯状になって剥がれていく。

「……これでいいのか?」
諒太が顔を上げて尋ねると、源太は満足げに頷いた。
「いい形だ。気持ちを木に寄せるんだ。そうすれば、鉋が教えてくれる。」

諒太は手を止め、出来上がった木材をじっと見つめた。その表面は滑らかで、手で触れると自然と笑みがこぼれる。

「父さん、次はどれをやればいい?」
「焦るな。まずは今の手触りを覚えろ。木は生きている。」

その言葉に従い、諒太は手の中で木材を確かめるように触れ続けた。源太の背中を見ながら、彼が歩んできた道を少しずつ理解しようとしていた。

そんな作業場の扉がノックされる。現れたのは弥生だった。

「お、朝から元気だな。何か用か?」
源太が笑いながら迎えると、弥生は扉を閉め、真剣な表情で言った。
「……話があって。」

作業台のそばに立ち、昨夜の出来事を語り始める。カラス天狗との出会い。そして、彼の言葉。

「天狗だって? 本気かよ。」
諒太が驚きと半信半疑の表情で呟く。


「本当だってば! 昨夜、神社で……」
弥生が語る声に熱が入ると、源太が腕を組みながら話に加わった。

「天狗だろうがなんだろうが、この山を守るには現実の敵を知らねばならん。」
彼はそう言うと、近くに積んであった木材に腰を下ろし、苦々しい表情で語り始めた。

「この計画には、大きなゼネコンが絡んでる。それは間違いない。」

「ゼネコン……?」
弥生が尋ねると、源太は深いため息をついて話を続けた。

「あいつらは、金とコネで物事を進める。俺も一度、下請けの話を持ちかけられたが、条件がひどすぎた。材料費を削れ、人件費を抑えろ――つまり、手抜きをしろってことだ。」

「そんなの……」
弥生は言葉を失った。

「俺が断ったら、すぐに他の業者を見つけて進める。あいつらにとって、地元の人間なんて都合のいい歯車に過ぎないんだ。」

その言葉には、ゼネコンのやり口に対する深い嫌悪が滲んでいた。

諒太は黙って父親の話を聞きながら、そっと拳を握りしめた。
「……弥生、やっぱり俺たちで何とかしないとな。」

弥生も頷く。
「そうね……まずは、もっと知ることが必要ね。」

山の静けさが再び二人の間に広がる中、遠くから聞こえる鈴の音が、どこか不思議な力を帯びているように感じられた。


第三章:証拠の発見

山を包む静寂の中、遠くから鈴の音が微かに響いていた。それはまるで空気に溶け込み、木々を揺らしながら山全体を清めているかのようだった。

境内に設けられた古いテーブルの上には、カラス天狗が持ち帰った資料が山積みになっている。弥生と諒太は、膨大な量の紙に向き合いながら、途方に暮れたような顔をしていた。

「……これ、いつ終わるの?」
弥生が眉間に皺を寄せ、書類をめくりながら呟く。

「そんなこと言うなよ。終わらせないと何も始まらないだろ。」
諒太は目の前の資料に視線を落としながら、ペンを握りしめていたが、ため息混じりの声には疲れが滲んでいた。

天狗が提供した資料には、町役場や建設業者の契約書、土地の価格設定書などが含まれていた。しかし、それらはどれも専門的で、二人にとっては意味を把握するだけでも一苦労だった。

「これ見て。土地の値段が他と比べて異常に低い。これって、やっぱりおかしいよね?」
弥生が指差すと、諒太も資料を覗き込んだ。

「ああ。でも、これだけじゃ証拠にはならないだろうな。」
諒太はペンを置き、天を仰いだ。

「天狗のやつ、どうしてもっと分かりやすいのを持ってこなかったんだよ……」
苦笑いしながら呟くと、弥生も思わず笑った。

「そんなこと言ったら、また現れて怒られるかもよ。」

そう言った瞬間、風が境内を駆け抜けた。二人の周りを包む空気が一瞬重くなり、どこからともなく鈴の音が響く。

「ほら、言わんこっちゃない。」
諒太が立ち上がり、背後を振り返ると、いつの間にかカラス天狗が立っていた。

「その様子だと、まだ真実に辿り着けていないようだな。」
天狗の低い声に、弥生は慌てて立ち上がった。

「膨大すぎて……でも、もっと調べたいんです! 何か他にヒントはありませんか?」

天狗はゆっくりと歩み寄り、資料の山を見下ろす。その手が軽く動くと、一枚の紙がふわりと風に舞った。

「これだ。」
天狗が指差したのは、土地取引の記録だった。記録には、あるゼネコンが土地を異常に安く購入した後、関連会社を通じて利益を得ていることを示唆する数字が記されていた。

「……この数字、何かおかしい。」
弥生が目を細めながら資料を覗き込むと、天狗が頷く。

「この土地の取引には、影の金が動いている。この流れを追え。それが奴らを追い詰める鍵だ。」

「影の金……つまり、裏金ってことか。」
諒太が資料を手に取りながら呟いた。

「その通りだ。だが、この記録だけでは足りない。裏付けを取らなければならないだろう。」
天狗の声には、二人を突き放すような冷たさがあった。

「でも、これがあれば次に進めるよね?」
弥生が希望を込めて言うと、天狗は静かに頷いた。

「お前たち次第だ。」

風が再び吹き抜けた瞬間、天狗は姿を消した。残された資料の山の中で、二人は新たに見つけた手がかりを握りしめた。

「よし……これをしっかり調べてみよう。」
諒太が改めて気持ちを引き締めると、弥生も頷いた。

「うん。この山と桜を守るために。」

遠くから鈴の音が再び聞こえた。それはまるで、彼らを静かに後押ししているかのようだった。

(後編に続く)


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