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Arizona Cardinals 2023-24シーズン感想(オフェンス編)

まえがき

2023年のNFLレギュラーシーズンも終了し、FA、ドラフトといったストーブリーグが近づいてきました。
昨年「恥ずべき敗戦から立ち直る最良の手段」・「(相手チームにとって)復活への処方箋」と称されたArizona Cardinalは4勝13敗(全体4位)に終わりました。

しかしながら、シーズン終了後のチームの雰囲気は非常に明るいものであり、記者会見ではチーム関係者から以下のようなコメントが飛び出しました。
QB Murray「今のチームは私がこれまで所属してきたチームの中でも最も好きなチームの一つだ」
RB Conner「私の最高の年が来ようとしている。」
TE McBride「来年は100catch&1000yard以上,TDは10から15が必要だ。」
HC Gannon「私はこのチームがどのようなものになるかを知っている。」「私は彼ら(選手)を誇りに思っている。地平線の向こうに素晴らしいものが見える。」「(GM Monti Ossenfortにどのようなオフシーズン補強を期待しているかという問いに対して)モンティ、魔法をかけてくれ」

多分GannonはN大あたりが使ってる薬やってる。強めの。

これは、チームが苦しんだ23シーズンの中で活路を見出せたことに理由があるのかもしれません。
そこで、このnoteではESPNの記者より「近年最高の4勝チーム(果たしてそれで良いのか)」と称されたArizona Cardinalsの現状を整理します。
今回はまずオフェンスから。


読むのがめんどくさい人へ

オフェンスの補強ニーズはエースWRと左右どちらかのOT、LGの3ポジションです。あとは何とかなります。

ちなみにディフェンスの補強ニーズはDT,DE,DE,EDGE,ILB,CB,CBです。

オフェンスのロースター一覧。黄色背景が補強ポイント。
同じくディフェンスのロースター一覧。こっちのほうがヤバい。

備考:オフシーズンの補強リソースについて

キャップスペース:$51.1M(リーグ8位・OVERTHECAP調べ)
ドラフト指名権:1巡4位、27位、2巡35位、3巡66位、71位、90位、4巡105位、5巡137位、161位、6巡188位、7巡222位、224位、241位(バリューチャート換算でリーグ1位・Tankathon調べ)
※2024年2月27日時点

QB

字が小さい

・スターターの質:高
・控えの質:低
・補強ニーズ:低(ドラフト下位もしくは安価なベテラン)
・シーズン前の課題
 1)フランチャイズQBとしてのKyler Murrayの評価
  →He is Our Guy.
 2)今後数年間のバックアップQBの選定
  →未確定。ベテランバックアップ取ってもいいかも。

昨年12月のACL断裂からKyler Murrayが復調を示したことで、昨シーズンの目標はおおよそ達成できたと言えます。week10のATL戦でMurrayが復帰して以降、それまで1勝8敗だったチームの調子も上向き、そこから3勝(5敗)を積み重ねることができました。
また、Murray復帰以降のオフェンスは1プレー当たりのyard数、ドライブ当たりのTD率がリーグTOP10以内と好調をキープしていました。

シーズン前に囁かれていたCardinalsの24ドラフトQB指名説ももはや聞こえず、各社のCardinalsに関するモックドラフトでは、全体4位でMarvin Harrison Jr.を取れるか取れないかの議論に終始しています。Murrayにとってチーム内だけでなくチーム外からの信頼、期待を勝ち取ったシーズンと言えるでしょう。

問題はバックアップQBです。
前半8試合はDobbsを先発に据えるもタンクの期待に応えるが如く1勝7敗。ゾーンリードからのQBランなど機動力を活かし得点する場面も目立ちましたが、勝負所でのミスや肩の弱さから先発QBとしては物足りない印象は否めませんでした。
また、CLE戦で唯一先発起用された5巡ルーキーのClayton Tuneは完封負けを喫し、それ以降スニーク要員としての起用がほとんどでした。2番手QBとしても厳しい状況であることは否めません。

理想を言えばMurrayが2,3試合離脱してもある程度試合を崩さず1勝2敗ぐらいで乗り切れるベテランQBがいることが望ましい状況です。Dobbsの再契約も視野に入りますし、前CLE QBコーチであるOC Petzingの接点を考えるとJacoby BresettJosh Rosenなどが候補に挙がるかもしれません。

※とりあえずATL戦見ましょう。間違いなくArizona Cardinalsの23シーズンベストゲームです。

RB

・スターターの質:高
・控えの質:中
・補強ニーズ:低(ドラフト下位もしくはベテランミニマム)
・シーズン前の課題
 1)エースRB Connerに次ぐ2番手の発掘
 →CarterとDemercadoが暫定2番手の地位を確保。

James Connerがキャリア7年目にして初の1000yard Rushingに到達。エースRBとしての地位を盤石なものとしました。ショートヤードでの押し込みやオープンランでのスティフアーム、パスシチュエーションでのセーフティバルブなど、どの局面でも起用できるRBです。
控えに関してもMichael Carterが掘り出し物になりそうです。パワフルなランが武器のConnerと異なり、ステップワークに優れたCarterはチェンジオブペースとしても機能しそうです。UDFAのDemarcadoにもそこそこ出番が与えられており、オフシーズンの補強優先度は低いと言えます。

Outside WR

・スターターの質:低
・控えの質:低
・補強ニーズ:高(ドラフト1巡もしくは有力FA)
・シーズン前の課題
 エースWRとしてのMarquise Brownの評価
 →厳しい。Slot WRなら機能しそうだがSlotが充実したCardinalsでは・・・

エースWRとして期待されたMurquise Brownにとっては苦しいシーズンとなりました。もともと大外に起用するWRとしては小柄で、スピードとランアフターキャッチに優れたslot WR向きの選手だと考えています。
しかし、今期はDeandre Hopkinsの移籍、Rondale MooreやGreg dortchといったBrownよりさらに小柄なWRが多いというチーム状況を踏まえ、大外での起用が増えました。その結果、競り合いの弱さが露呈しロングボムが取れずDobbsに至っては届かず成績も574yard4TDと伸び悩みました。

今シーズンで契約切れということもあり、Cardinalsの現状を踏まえると本人が望むような高額のオファーは難しいでしょう。適切なポジションで起用できれば十分活躍できるはずです。新天地での活躍を期待します。とか言ってたら残ったりして

一方で、オフシーズンの補強としてはエースWRの獲得が最優先事項となります。WRが豊作と言われる24ドラフトで全体4位を獲得しているCardinalsは、Marvin Harrison Jr.・Malik Nabers・Rome Odunzeなどといった近年屈指のWRプロスペクトを狙うはずです。

このオフでエース級のWRを獲得できるか否かが今後のCardinalsを左右することになるでしょう。

※ちなみに、成長株はドラ3Michael Wilson。怪我は多いが大型でステップワーク、キャッチ力もよい。来シーズンの躍進が期待されている。Zach Pascal…?ワイドブロッカーの話はテーマ違いなので・・・。


Slot WR

・スターターの質:中
・控えの質:中
・補強ニーズ:低(ドラフト下位もしくは安価なベテラン)
・シーズン前の課題:特になし

タイプの違う2人の身長5-7(170cm)コンビが起用されました。

Rondale Mooreはドラフト2巡の4年目。レシーバーとしてだけでなくランニングバックとしても起用されるため、高いユーティリティ性を誇ります。RBが1人もいない状況からMooreのランを仕掛ける、といった起用ができるディフェンス泣かせの選手です。

もう一人のGreg Dortchはリターナーが主戦場ですが、ここ2年限られたWRとしての出場機会で結果を残しており、コアなファンからの人気が高い選手です。

少なくとも今オフの補強は不要です。両方活躍して来期どちらと契約延長するかを選ぶシーズンになると良いなと思っています。

TE

・スターターの質:高
・控えの質:低~中
・補強ニーズ:低(ドラフト下位もしくは安価なベテラン)
・シーズン前の課題:2年目 Trey McBrideの独り立ち
 →今シーズン、チームのエースレシーバーに急成長。

23シーズンのCardinalsで最も成長した選手は2年目TEのTrey Mcbrideです。
もともと22年ドラフトのトップTEとして期待されていた選手でしたが、WEEK 7にZach Ertzが離脱して以降エースTEの座を確保。PFF GradeもTEとしてリーグ7位。それだけではなく、Arizona CartdinalsのTEとしては34年ぶりに1試合100yardを達成しました。それまでにいたTE何しとったん?

ただ、2番手以降の新人はWRから転向したスピード型のHiggins、ブロッキング型のVokolekとスキルが尖っている感が否めません。ロースター全員が3年目以内の若手であることからも、安価なベテランTEを確保しておくと心強いです。

※今期躍進を遂げたTE McBride。デカいし早いし強い。


OT

・スターターの質:中~低
・控えの質:中
・補強ニーズ:高(ドラフト上位もしくは有力FA)
・シーズン前の課題:1巡OT Paris Johnson jr.の評価
 →RTとして全スナップに出場。来年RTでもLTでもどちらでも起用できる。

ドラ1ルーキーParis Johnsonは全体6位、OTトップ指名としてはまずまずの活躍でした。何より、カレッジでは経験のなかったRTとして、23シーズンのオフェンス全スナップに出場したことが評価されます。RTとして成長するのか、LTにコンバートするのか今後が楽しみな選手です。

一方、長年チームを支えたLT D.J. Humphriesは昨年12月に靭帯を断裂。24シーズンの大半は出場できないことが見込まれます。25シーズンまで契約が残っているものの、今カットすれば$10M近いキャップスペースが確保できます。FA開始前にカットされると推測されており、今後の動向が見込まれます。

いずれにしても、来シーズンのLTは現状不在です。
今ドラフトではWRに加え豊作とされるOTを指名するチャンスがあり、かつ、Paris JohnsonのおかげでLTとRTどちらの選手でも指名することが可能です。1巡27位でOT指名が予想されるケースが多いですが、少なくとも3巡までには指名されることになる見込みです。

OG

・スターターの質:中
・控えの質:低
・補強ニーズ:高~中(ドラフト中位もしくは即戦力FA)
・シーズン前の課題:先発LGの発掘
 →びみょう。

今期先発起用に最も苦慮したポジションがLGです。
FAで獲得したWilkinson、Colon、O'Donnell、Daleyを起用しましたが、決定打となる選手はいませんでした。

ただ、このままでは先発候補すらいないため、取り急ぎの補強は必要です。上記の中では比較的機能したColonを控えとして再契約する形が望ましいです。ColonはCができる点も控えとしては高評価です。

また、23シーズンの開幕前に負傷でシーズンエンドになったドラ4ルーキー Jon Gainesも候補に挙がってくることが期待されます。FA補強も他ポジションを優先する必要があるため、来シーズンも先発争いが継続するポジションとなるでしょう。

C

・スターターの質:中
・控えの質:中~低
・補強ニーズ:高~中(ドラフト中位もしくは即戦力FA)
・シーズン前の課題:先発C Froholdtの評価
 →暫定的な先発としては十分。

22シーズンでまともにスナップができる先発を確保できなかったほど苦労したCですが、OC Petzingの伝手でCLEの控えから獲得したFroholdtが全試合先発しました。少々パワー不足な印象はありますが、先発としては妥協できるレベルではありました。

控えはOGでも話題に挙げたドラ4ルーキーのGainesですが、カレッジでは主にOGを務めていたGainesをいきなりCとして起用するのは不安。ドラフト中位なりFAなりで経験者を確保しておきたい状況です。やっぱりcolonがちょうどいい。

まとめ

現状、Arizona CardinalsのオフェンスにはQB、RB、TEにオフェンスの軸となる選手がいる一方、エースWRとLTという二つのプレミアムポジションを欠いています。今オフの潤沢なドラフト指名権、キャップスペースを活用してこの2つの有力選手を獲得することができれば、オフェンスは躍進できるはずです。

ただし、Arizona Cardinalsの真の問題はDT,DE,DE,EDGE,ILB,CB,CBにNFL水準のスターターがいないディフェンスです。逆にどこがいるのか。
ディフェンスの状況については、後編のnoteに記載します。いつになるかはわかりませんが・・・

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