日本学術会議任命拒否問題について
タイトルにあるこの問題について、皆さんは覚えているだろうか。2020年9月、当時の菅義偉内閣総理大臣が、日本学術会議が推薦した会員候補のうち一部を任命しなかった問題である。本を読んでいてふと思い出したので、今回はこの「日本学術会議任命拒否問題」について私見を綴ろうと思う。
論点は主に以下の2つである。
・日本学術会議の推薦に内閣が人事権を行使することが、権利濫用にあたるか否か
・上記の行為が、学問の自由を不当に制限するものであるか否か
一つ目の論点については、本件内閣総理大臣の決定が「三権分立」を脅かすものであるとの文脈で語られることも多いから、三権分立を絡めて記述する。また、二つ目の論点については、主に大学教授など学術関係者から噴出している疑問である。では私見を述べる。
▷第一の論点について
前提として、日本学術会議は多額の公金を支出して運営されている公的機関であり、さらに政治の諮問に対して答申をする審議会的側面を持つ機関である。したがって、その内容に偏りがあってはならない。ここまでは異論はないだろう。
その上で、当該推薦の過程は選挙を介したものではなく中立性を担保していないことに注意するべきである。日本学術会議任命のプロセスは、完全に会議の意思に委ねられており、国会議員などと異なりそこに国民の意思が反映されることはない。つまり、そこが暴走してしまえば国民がそれを止める手立ては無いということになる。
次に、当該会議の性質にも言及する必要がある。冒頭で述べたように、日本学術会議は政治の諮問に対して答申をする審議会的側面を持つ機関であり、国の予算や意思決定に強い影響力を持つ。したがって、偏った判断は許されない。
以上のことを考慮すると、任命権を持つ政府が、推薦された人材を拒否の選択肢を含めた選択行為に付す役割を持つことはむしろ当然であるといえる。つまり、選挙によって立場を左右される存在である政府が積極的に強い人事権を示して力の均衡をとることにより、かえって民主的な政治を確保することができるのである。
▷第二の論点について
学問の自由をめぐる議論について述べる。答えは簡単である。今回の決定は公的機関に関わる政府の意思決定であって、大学における研究活動自体に作用するものではない。したがって、学問の自由の侵害だと位置付けるのは完全なる筋違いである。メディアに出て、学問の自由が!と騒いでいる学者もそのことには気付いているはずである。不思議な人達である。
▷総括
以上に述べたとおり、今回の内閣総理大臣の決定は、三権分立を脅かすどころか、かえってそれを担保するものである。また、学問の自由に抵触するような類のものでもない。一方で、今回の政府の決定は、内閣府組織とはいえ一定の独立性を持った機関に対するものである。したがって、今回の決定に至った過程については、その理由を国民に対して詳細に説明する責任がある。まあこの問題について真剣に考えて自分の意見を持っている国民がどれほどいるのかは知らないが。大体、もうほとんど忘れてるだろ…と個人としては思っている。もちろん私の意見が全てではないので、この記事を読んだ方はぜひ、自分で色々調べて考えてみていただきたい。