作者が1番面白い。「逆境ナイン」(1話目前半)
マンガワンで「逆境ナイン」が読める。3月18日までだけれど。
私は結構な島本のファンで、「燃えよペン」「吼えろペン」「新吼えろペン」「アオイホノオ」のシリーズがとても好きだ。一時期、これを読むためだけに漫画喫茶に足繁く通っていた。
しかし他のシリーズはそこまできちんと読んだことがなかった。「逆境ナイン」も読んだような……読んでないような……というあやふやな記憶しかなかった。
読んでいて、島本和彦ってテンポが独特だよね、と思う。たとえば闘志が校長に殴られるシーン。普通の感性を持った漫画家なら殴られるシーンを強調するだろうが、島本は殴られた後吹っ飛んでいく姿を大ゴマにする。
人によっては、ちょっとテンポが悪く感じるかもしれない。殴る瞬間はファストだけど、倒れ込む姿はスローだからだ。なんというか、切り取る場面がちょっとアンバランスな印象を受ける。
でも、その描写に島本和彦という作者のいじらしさというか、可愛らしさが存分に発揮されていると思うのは私だけだろうか。
ここには島本の漫画家としてのテレが見出せると思っている。
ひねくれとは言わない。テレ。
校長に啖呵を切る場面、闘志ははっきり「甲子園で優勝します!」と言わない、言えない。なぜかというと、風呂敷を広げていいのか!?大丈夫なのか!?と葛藤するから。
そして島本はやはり、言い切るまでの葛藤を明らかに、大事に描写している。
なぜか?
だってテレるじゃん!!!
そんなセリフ!!!!
そしてそれを描いている自分に!!!!!
最初の話に戻ると、普通の漫画家なら殴られた瞬間をはっきり描くよ。そんなん知ってるよ。でもそれやったら漫画家として"逃げ"じゃないのか……?そんなベタな……。
みたいな、ヘンなところで悩んだりテレたりする島本和彦という人間のいじらしさ。
そこが垣間見えるというか、濃厚に表出しているのが「逆境ナイン」第1話(前半)の、島本漫画のいいところだと思う。
結局この作者めちゃくちゃ面白いんだよ。人間として。
ところで、なんでこんな中途半端な(前半)で区切ってるのかというと、マンガワンアプリの感想コメント欄にはとてもじゃないけど収まらなくなってしまったから。
600/60ってなんだよ。60文字で足りるわけねーだろ。
おしまい。