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「海に眠るダイヤモンド」最終話を見終えて
最終話を見終えた今も、頭の中では「ねっこ」が繰り返し流れています。その余韻に包まれながら、リナと誠のために島を出た鉄平の選択の真実に触れ、その後の生き方に深い感動と衝撃をまだ感じています。
鉄平が進平の罪を被ったのは、彼の優しさゆえ。死んだ進平の名を持ち出して「自分の幸せを壊さないでくれ」と言えなかった鉄平。その優しさが、端島への深い想いと共に、島を離れてもなお彼の人生を支配していました。閉山で路頭に迷う人々のために仕事を見つけ、賢将に託す姿。朝子に会うことすら、彼女の幸せを奪ってしまうと恐れ、手紙を出すこともなく姿を消す姿。そのすべてに、鉄平の愛と献身が詰まっていると感じました。
幸せを掴んでほしいと願わずにはいられなかったのです。しかし彼が選んだのは、誰にも頼らず、一人で逃げるように静かに生きる道。それが鉄平の優しさであり、彼の運命だったのでしょう。
現代において、澤田が「自分が誠だ」と告白し、鉄平に命を救われた過去を語るシーン。さらにリナから「朝子と鉄平の仲を引き裂いた」という悔恨の言葉を受け続けながら生きてきた澤田の姿に、人の記憶と想いの複雑さを痛感しました。
いづみが玲央と端島を訪れ、鉄平が20年前に彼女のために作ったガラスのダイヤモンド(ギヤマン)を立ち入り禁止区域に残して来たことを知ってしまいます。それは、いづみにもう手の届かない愛の象徴。悲嘆にくれるいづみでしたが、賢将の子どもが所持するテープをふたりで見て、玲央はいづみが自分にかけた言葉が鉄平の言葉だったと知り、鉄平に出会いたかったのは自分だと気づいたのだと思うのです。
そして端島へ連れて行った船頭から鉄平の手がかりを聞いた玲央といづみはその場所へ向かいます。
その場所でいづみは目にします。"端島の見える施設の庭に広がる一面のコスモス"。それは鉄平といづみが交わした「種を蒔く」という約束を鉄平が形にしたものでした。過去と現在が繋がり、鉄平の想いが形となって息づいていることにいづみでなくても胸が熱くなりました。
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そしていづみの中では、この鉄平の想いとの出会いが、あの日、端島へ置いてきた自分との回顧へ繋がります。
それは誰もいない端島ではなく夢の中のような情景。そこには一平と辰雄が笑い合い、進平と百合子や朝子の子どもたちの笑顔がありその中には誠の姿も。そして抱き合うリナと百合子と朝子……全ての蟠りが消えた瞬間がありました。
いづみと朝子が向かい合い、ようやくあの日が朝子に戻った時に鉄平が約束を果たしに来ます。コスモスの花と共に。
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その夢を見た後のいづみの幸せそうな表情が、何よりも印象的でした。
そして玲央はガイドの道を選び、知らない土地へと飛び回る道を選択します。
鉄平の声をかけた人々やその子どもたちの人生が、どこかで玲央に繋がるかもしれない、鉄平の想いはいつまでも人の中に残るから。
鉄平はもういません。しかし、彼の想いはどこかで確かに受け継がれています。
朽ちゆく端島は、いつか本当に海に眠るかもしれません。それでも、あの土地に生きた人々の想いは、海に沈んだとしても、きっと私たちの中で生き続けるのだと信じています。
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こんな心に残る作品に出会えたことに、深い感謝を感じます。
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