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節分の鬼は本当に怖い? いいえ、美しすぎる鬼をご覧ください。

節分と鬼の関係

節分といえば「鬼は外、福は内」の掛け声とともに豆をまく風習があります。でも、鬼は本当に悪者なのでしょうか? 日本の伝承には、ただ恐ろしいだけではない、さまざまな鬼が登場します。今回のテーマは「美しき鬼」。鬼の新たな魅力を探ってみましょう。

節分の豆まき、イワシ、柊の意味

豆まき

意味: 鬼(邪気)を払って福を招く行事

由来: 中国の「追儺(ついな)」が日本に伝わったもの

作法: 「鬼は外、福は内」と唱えながら、炒り大豆をまく

イワシ

意味: 鬼が嫌う臭いで邪気を払う

由来: いわしの臭いが鬼を寄せ付けないという民間信仰

風習: 焼いたイワシの頭を柊の枝に刺して玄関に飾る

意味: トゲのある葉が鬼の侵入を防ぐ

由来: 柊の葉のトゲが邪気を払うと信じられていた

風習: イワシの頭とともに玄関に飾ることで魔除け効果を高める

これらの風習は鬼を追い払うためのもの。でも、鬼そのものがすべて悪い存在とは限りません。

美しき鬼

もしも鬼が、美しい青年だったら…? そんな幻想的なイメージをもとに、特別なイラストとストーリーをご用意しました。


山鬼と祈りの祠』

 影羅は深い森の奥に生まれた。彼の一族は鬼と呼ばれ、人々の伝説の中で恐れられていたが、彼自身は争いを好まぬ心優しき若者だった。しかし、彼の住む山が人間の手によって荒らされるのを見過ごすことはできなかった。

 人間たちは山腹を切り開き、鉄を掘るために木々を倒し、川を濁らせていた。小さな獣たちは棲み処を失い、鳥たちは鳴き声を上げて飛び去っていく。影羅は心を痛めながら、その様子を見つめていた。 「このままでは、山の精霊も安らげぬ……」
 影羅は、己が鬼であることを思い出した。人の世では、鬼は恐ろしいものとして語られる存在。ならば、その恐怖をもって人間たちに山の怒りを伝えよう。
 彼は一本の落ちた枝を削り、恐ろしい顔の面を彫り上げた。怒りに歪んだ目、鋭く裂けた口。これを身に着ければ、鬼としての威厳を保ち、人間たちに山の声を届けることができるだろう。

 夜が更ける頃、影羅は面をかぶり、人間たちの前に姿を現した。

「ここはヤマノカミの領域。無闇に荒らせば、災いが降りかかるぞ」

 焚火の明かりに浮かび上がる影羅の鬼の面は、あまりにも恐ろしく、人間たちは怯え、逃げ惑った。しかし、ただ一人、その場に踏みとどまる青年がいた。

彼は影羅をじっと見据え、静かに膝をついた。

「山の怒りは、もっともなこと……。だが、どうかお聞きください。我ら人も、生きるために鉄を求めねばなりません。しかし、このままでは山も人も共に滅びる。どうか、鉄を掘るお許しください」
「人よ、それではヤマノカミの地を荒らし続けると」
 影羅の声に若者がひれ伏す。
「いいえ、いいえ、とんでもございません。木を植えます!そしてヤマノカミのために祠もお作りいたします。私がーー私の一族が必ずこの山を守ります!」
 懇願する若者の真剣な眼差しに影羅は何も言わず背中を向けると立ち去った。
ーー人を信じるために

 若者は約束どおり自らの手で荒らされた地に木を植え、小さな祠を作った。ヤマノカミを祀るためのささやかな祠だった。
「彦馬さん、ヤマノカミ様と鬼様のためにお花を摘んできたわ」
若者にそうこえをかける女は白い百合を祠に供えると若者の隣で手を合わせる。

 影羅はその姿を見つめた。

 以来、彦馬の村では鉄を掘る場所以外の森を守ることが誓われた。春になれば苗木を植え、秋になれば山の恵みに感謝した。そして、小さな祠は今もなお、風に吹かれて静かに佇んでいる。

 鬼はもう姿を見せることはなかったが、時折、木々の間から彼を見たという者がいた。

 それは、山を見守る影羅の優しき眼差しだったのかもしれない。

今年は美しい鬼の世界を堪能しながら、節分を少し違った視点で楽しんでみませんか?

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天汐香弓
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