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氷室冴子とぴかぴかの悪玉。

明日から京都にてパネル展「なんて素敵な氷室冴子~京都で読む,平安京の物語」が開催するらしい!

別の記事を投稿予定だったのですが上記ツイートを見たので急遽差し替え。須賀しのぶに藤田和子!! 行かねば…! 

以下、過去ブログより再録の氷室冴子追悼記事です。

氷室冴子女史が6/6、肺ガンで亡くなりました。
初期のコバルト文庫を導いた偉大な少女小説家さんです。
まだ51歳とのことで、あまりにも早い逝去に呆然としています。

自分が小説でまともに読んでたのは
『なんて素敵にジャパネスク』だけ(しかもきっかけは漫画版の方)なので
真っ当なファンとは言いがたいですが、本当に大好きでした。
瑠璃姫は魅力的だったなあ。吉野君とのくだりは涙なしに読めない。

『ジャパネスク』の初版は1984年なんだけど、
中身は全然古びておらず、今読んでもわくわくします。
氷室さんはおてんば瑠璃姫を成長させたい親心が芽生えたため
続きを書かなくなったそうだけど、子供が生まれてからの話とか、
いっそ女房版瑠璃姫でもいいからもっともっと読みたかった。



もうひとつ忘れられないのが古典『落窪物語』の現代語訳
一冊読み切りなこともあり、読み返し頻度ではジャパネスクを遙かにしのぐ。
日本版シンデレラといったおもむきのお話ですが、
人物描写とこまごました暮らしの様子が楽しくて、繰り返し繰り返し読みました。
いったん読み始めると、なぜか絶対最後まで読んでしまうのです。
氷室さんの7ページにわたるあとがきも素晴らしい。
茶目っ気にあふれた文体でありながら原典に対する敬意と愛が満ちていて、
もう読んでいるだけで嬉しくなってきます。

「私はこの『落窪物語』を、平安文学の吉本興業か、松竹新喜劇か――と冗談でいってしまうのですが、まさしく、そんな感じの物語です。善玉悪玉のキャラクターがはっきりしていて、なにより目のさめるほどみごとな、ぴかぴかの悪玉の北の方が、最高にすてき」

ぴかぴかの悪玉の北の方! この表現こそ最高にすてき。
北の方というのは、シンデレラのいじわるな継母にあたるキャラクターです。
自分の娘たちを甘やかす傍らヒロインをえげつない手管でいじめぬく、いわばラスボス。
それを恨むヒロインの夫から手酷くやっつけられたって絶対に懲りない。
時にしおらしくなったかと思っても次の瞬間また憎まれ口をたたいちゃうような
実にふてぶてしい人なのですが、氷室さんはその彼女を最高にすてきといい
彼女の魅力をいきいきと約1ページ半にもわたり語ってくれるのです。
私はこういうキャラクターの愛し方を、氷室さんから教えてもらいました。

今そのあとがきを確認してて気づいた。
「機会があったらこの北の方を主人公にしておもしろいお話を書いてみたい」って…。
とても読みたいけど、これも、もうずっと読めないんだな。
いつか必ず『落窪物語』の原典を読もう。
氷室さん、お疲れさまでした。

(2008/06/06)

ーーこの記事たしか、作家の須賀しのぶさんによる追悼記事をきっかけに書いたものです(ブログなくなっちゃったんだなぁ…管理できないから消されたのかな。HPの自作解説も消えてて寂しい…)

須賀さんは氷室冴子ファンだったのです。コバルトに応募したのも、氷室冴子さんがいらしたからという。氷室冴子展の寄稿、ぜひ読みたい。

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