「ミュージック・ステディ」研究~特集編。
「ミュージック・ステディ」を読み始めたのは高校生の頃でして、noteを始めてからその時期のことを延々と思い出したりしています。
で、当時夢中になって読んでいたのは、実はMUSICIAN FILE・徹底研究よりも特集だったんですよ。真面目な話。
現時点で特集を読み返して、どう感じるか、当時の感想を思い出しつつ書いてみたいです。
それではもう少しお付き合いください。
・「ミュージック・ステディ 新生号」(ステディ出版)
新生号とあるのは前身の「ロック・ステディ」から「ミュージック・ステディ」に誌名を変更したり、発行元もそれに伴いステディ出版となったことからだと思われます。
この号の特集は「Rock'n Rollの時代」です。例えば「ミュージック・マガジン」が同じテーマで書くより、私にとってより切実なものだったというわけですよ。
1980年がテクノ・ニューウェイヴが席巻した時期のアンチテーゼとしてロックンロールを捉えていたり、横浜銀蝿やRCサクセションにめんたいビート、ネオ・ロカビリーなどの新しい動きとしても、ということでしょう。
コメントしているのはザ・ロッカーズの陣内孝則さん、HOUND DOGの大友康平さん、元クールスの水口“PITPI”晴幸さん、アナーキーの逸見“マリ”泰成さんと藤沼伸一さん、リザードのモモヨさん、ミスター・スリム・カンパニーの深水龍作さん、俳優の山田辰夫さん、映画監督の石井聰亙さん、ライターの戸井十月さんとライターの生江有二さんという顔ぶれでした。
大友さんはブレイク前ですし、山田辰夫さんは「狂い咲きサンダーロード」に出演してますから、かなり興味深いですね。
生江さんは校内暴力と絡めて書いているのもいかにもですよね(この号が連載1回目の「日本音楽全史」は頭脳警察で、これも生江さんのペンによるものです)。
締めの「STEADY VOICE」は菅岳彦さんと編集長の市川清師さんによるもので、これが大好きだったんですよね。後の編集後記もこのスタイルでした(市川さん、菅さんに吉原さんの3人ということが多かったです)。
今にして思えば知的なツービートというか、その流れにあるものと捉えていたように思うのです。
・「ミュージック・ステディ 4号」(ステディ出版)
奥付によると年4回発行とありますから、この号までは季刊誌ということですね。
2号は貸し出し中、3号は引っ越しの際紛失してしまったので、省略します。すみません。
そして、4号の特集は「“東京”はどこへ行くのか」です。
まず「東京人の感性とは一体何だ?」というお題のインタビューに登場したのはムーンライダーズの鈴木慶一さん、PANTAさん、近田春夫さん、南佳孝さん、山本達彦さん、ライターの宮部知彦さんにイラストレーターの矢吹申彦さんという顔ぶれで、中盤では「世界の中の東京とは?」というテーマのインタビューに土屋昌巳さん、タケカワユキヒデさん、モモヨさんにデヴィッド・シルヴィアンが登場してます。
高橋竜一さんと清水勉さんの東京ロッカーズを通しての東京ニューウェイヴシーンについての対談。
締めは「STEADY VOICE」。この回は市川清師さんと栗栖和人(後に吉原新一郎→吉原聖洋と名乗る)さんです。
この特集のきっかけが3号でレポートしたムーンライダーズの『マニア・マニエラ』が発売中止になったことへの危機感が綴られています。
これが「ロック・ステディ」のTOKYOサウンド特集との一番の違いでしょう。
自分たちが情報を発信する上で、生じた問題点がこの記事を書かせたのかな?とも思うわけです。
ムーンライダーズの『東京一は日本一』、PANTA&HAL『1980X』に『TKO NIGHT LIGHT』、近田春夫&ハルヲフォンの『電撃的東京』の存在も大きいし、土屋昌巳さんがJAPANのツアーに参加したり、リザードをジャン・ジャック・ヴァーネルがプロデュースしたり、ゴダイゴが中国でライヴをしたりした時期でもあるので、これまた大きい、と。
CD再発や色々な文献が出ているので、買った当時よりも、その意味や意義がわかる内容ですね。
・「ミュージック・ステディ 5号」(ステディ出版)
奥付によると年6回発行になってますから、この号から隔月刊誌ですね。
5号はいよいよ「ポップス宣言」です。
宣言書にマニフェストとルビを振ったのが、とにもかくにも素晴らしい。
ポップス宣言対談は佐野元春さん、吉原新一郎さん、市川清師さんという顔ぶれです。
これがホントに素晴らしい。佐野元春さん関連のインタビュー、対談のなかでも屈指の内容だと思います。
これと吉原さんと市川さんの「STEADY VOICE」が音楽のみならず物事を考える上での指針になってますね、私の場合。
ポップス・コメントは伊藤銀次さん、杉真理さん、山下久美子さん、村田和人さん、鈴木雅之さん、EPOさんと小倉エージさん。
これも必読ですね。
そして、ページの下部分にあるポップ・チューンのセレクトも圧巻です。これ含めて予言書かと。。
ムーンライダーズのMUSICIAN FILE・徹底研究に「日本音楽全史」ではハルヲフォンですよ。
正直、音楽雑誌で何か1冊選べというアンケートがきたら、間違いなくこれです。
・「ミュージック・ステディ 7号」(ステディ出版)
この号も奥付に年6回発行とありますから、扱いとしては隔月刊誌ですね。
7号の特集は「ON THE ROAD AGAIN」。
この特集に取り上げられたバンドは東京ブラボー、サニィ久保田とクリスタル・バカンス、VOICE、ポータブル・ロック、スクリーン、鯨(雑誌表記)、REAL FISH、グリム・スキップです。
所謂東京サウンドや、水族館レーベルを連想させる顔ぶれですね。
VOICEとスクリーンは既にレコード出してます。ポータブル・ロックはプロモーションのカセットを出していたのかな?
カセット・ブックのTRAとも共通した顔ぶれだし、新しい流れが急速に強まった時期だということです。
メジャーのレコード会社と繋げるプロデューサーとしてイミテーションの今井裕さんと鈴木慶一さんを紹介しています。
今井裕さんは市川さんがコーディネートを担当したチーボーの『パラダイス・ロスト』のプロデューサーで、鈴木慶一さんは水族館レーベルに深く関わっているわけですから、ホントに予言書か!な内容です。
それにライヴハウスとインディーズ・レーベルの電話番号と住所が掲載されてますから、これを基にアクセスしたミュージシャンは絶対いるはずですよ。これは大事です。
「STEADY VOICE」は菅さんと市川さん。「もう一度路上に」という強い意思が感じられます。
インクスティックやピテカン「TRA」にも触れていて、これは新しい流れに乗り遅れないぞと考えていたはずです。
多分、月刊化に備えていた時期だったのもあるのではないでしょうか。
もしかしたら「よい子の歌謡曲」や「REMEMBER」といったミニコミ誌がよりマニアックな内容で登場してきたのもあるのかもしれませんね。
今回、「ミュージック・ステディ」の特集について取り上げましたが、本当に素晴らしい内容です。
MUSICIAN FILE・徹底研究に注目が集まりやすい構成になってますが、特集を是非読み直してほしいと思いました。
「ミュージック・ステディ」研究はまだ続きますが、またちょっと間を開けての発表になるんじゃないかな、と。
一度、市川清師さんと菅岳彦さんに取材したい気持ちもありますし。
長々とお付き合いいただきありがとうございます。
ではまたー。