12/17 めかし込めば甘い
私は駅前のビルの入口に立っていた。今は染めていない自然な黒髪ボブに暗めの赤いベレー帽。普段あまり履かないロングスカート姿で、人を待っている。
外でのゆいさんとの待ち合わせはいつも特別な感じがした。そして今日は私にしては少しおめかしをしてきたのでどこかくすぐったい。
「まだかな…」
小さく呟いて行き交う人々に視線を向ける。ゆいさんらしき人影を見付けると急にほっとして小さく手を振った。それに気付いたゆいさんが駆けてきて、私の両手を掴んだ。驚いていると、
「なにそれ可愛い」
と、真顔で言われたので私は恥ずかしくなって俯いてしまった。
「はるかは可愛いんだからもっとそういうかっこして欲しいなー。あっ、でもライバルが増えるのは困るな…」
「ほらもう、行くよ!」
ひとりでぶつぶつと口にするゆいさんの片手を掴んで、私は歩き出した。
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