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12/9 優しい夜には抱擁を

 不思議だった。玄関に靴はあるのに部屋の中が暗い。
「ゆいさん? 帰ってるの?」
 声をかけながら部屋の中を覗くと私が電気をつけるより早く、ゆいさんが私の胸に飛び込んできた。
 わ、と小さく驚きながらも抱き留める。
「…今だけ充電」
 いつもしてるじゃない、という言葉は飲み込んだ。いつもと様子が違う。こんなゆいさんははじめてだった。
 優しく後頭部を撫で、背中をとんとん、とあやすように優しくたたく。薄暗い部屋の中ではその顔もよくは見えなかった。でもそれでよかった。今は見ないでおこう。
 私はゆいさんが落ち着くまでその柔らかい身体を抱き締めていた。

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