世界一の道を歩く 南米パタゴニアWトレック
南米パタゴニア。チリとアルゼンチンの南に位置する地域の名称で、アウトドアブランドであるパタゴニアの由来にもなった、大自然にあふれる場所。ある日、「ワールド・トレイルズ 世界は歩いてみたい「道」にあふれている」という本を読んでいたら、そんな雄大な大自然の中を5日間かけて100km近く歩くトレッキングルートがあることを知りました。
パタゴニアはおじいちゃんになってから行ったほうが良いという説があります。なぜならパタゴニアの自然はすごすぎて、若いうちに行ってしまうと他の自然で感動できなくなってしまうからだそう。ただ今回実際に行ってみて、世界最高峰こそ若い時こそ見ておくべきだと思いました!
パタゴニアWトレックとは?
パタゴニアのチリ側にある「トレスデルパイネ国立公園」が、Wトレックの舞台となります。文字通りWの形をしたルートをひたすらに歩きます。
ちなみにOトレックという、Wトレックよりもさらに長い距離を歩くルートもあります。
Wトレックでは、絶景四天王と呼ばれる(自分が勝手に呼んでいる)4つの絶景を目指して歩きます。
トレスデルパイネ国立公園は24万ヘクタールと東京ドーム5つ分程度の大きさしかないのに、これだけの絶景がひしめきあっているのは奇跡としか言いようがありません。
絶景四天王
トレスデルパイネ山
1つ目は、Wトレックの舞台である「トレスデルパイネ国立公園」の名前の由来にもなっている「トレスデルパイネ山」。
トレスはスペイン語で塔、パイネは現地のテウェルチェ族の言葉で青を意味します。ちなみに世界一周中のマゼランがテウェルチェ族を大足族(Patagon)と呼んだことがパタゴニアの語源となったという説もあります。
この3本の尖塔のような山はロッククライミングの有名なスポットにもなっています。山小屋で会ったお兄さんは、なんと19日かけてここをクライミングしたとのこと!
また夜中の3時に起きて薄暗い山道を登れば、トレスデルパイネ山の朝焼けも見れらます。
※朝焼けの動画は下記画像をクリックすると遷移できます↓
トレスデルパイネ山に行く途中、ガウチョ(南米のカウボーイ)が馬で山小屋まで物資を運ぶところにも遭遇。
パタゴニアには馬だけでなく、野生の動物もたくさんいます。キツネやウサギ、スカンクやピューマ、コンドルなどが暮らしています。人に慣れていないのであまり近づけないですが、野生の目をした動物たちに会うと心が踊ります。
ノルデンシェルド湖
2つ目は、ターコイズブルーの水が美しいノルデンシェルド湖。
この湖は、山から流れ込む雪解け水によって作られています。雪が溶けるときに山を削り、そこに含まれる鉱物質が溶け込むためにこのような色になっています。ただ鉱物質が濃いため生物の生息には向いていないらしく、水鳥などはあまり生息していないです。
春には通称「チリの火の花」とも言われるノトロが湖畔沿いに咲き乱れます。まだ雪が積もっている山を降りると一面に春の花が咲いている。一度に様々な景色を見られるのもWトレックの魅力の一つだと思います。
残念ながら2011年の末に観光客の火の不始末から大規模な山火事が発生してしまいました。湖畔の一部は死んでしまった木が連なり、さながら魔女の森のようです。
フランス渓谷
3つ目は、Wトレックで一番の絶景と言われる360度を大自然に囲まれたフランス渓谷。
Wの形のルートのちょうど真ん中のでっぱりに当たるところにあるのがフランス渓谷です。トレスデルパイネ山やノルデンシェルド湖などすべてが一望できる360度のパノラマはため息が出るほどきれいです。
(ここはスケールがすごいのですが、写真だとあまり伝わらない、、)
パタゴニアは「風の大地」と呼ばれるほど風の強い地域です。その中でも特にフランス渓谷は、突風が吹くと立っていられないほど風が強く、植物も風の吹く方向に倒れて生えてしまっているほどです。
ちなみにフランス渓谷だけではなく、山小屋の名前がイタリアだったり、景勝地の名前がイギリスだったりとWトレックには国の名前がついた場所が多くあります。そんな中、日本の名前のついたキャンプサイトもありました!
グレイ氷河
そして最後4つ目は、消滅間近の大氷河グレイ氷河。
パタゴニアには世界で3番目に大きい氷原があります。また氷河もいたるところにあり、グレイ氷河もその一つです。
グレイ氷河ではカヤックを漕いで氷河の間近まで行くことができます。ただ、ものすごく風が強いので必死に漕がないとすぐに流されてしまいます。インストラクターのお姉さんに「Don't give up! You can do it!」とまるで筋トレを指導するトレーナーのように叱咤激励されながら必死で漕ぐ羽目に。
またカヤックのインストラクターが言うにはここ20年で5kmほど氷河が後退してしまい、後30年したらこの氷河はなくなってしまうだろうとのこと。これは温暖化の影響だと言う学者も多いです。
※写真の奥にあるのがグレイ氷河
ただWトレックの魅力はただ単にこれら絶景を見られるだけではありません。
自己責任で自由に楽しめる大自然と、充実した宿
Wトレックには自己責任で自由に大自然を満喫できるという、自然アクティビティの面白さが詰まっています。
一方、山小屋やキャンプサイトなど宿の設備はとても充実しています。
なので海外で泊りがけでの登山やトレッキングはしたことがないという人のデビュー戦としては最適な場所だと思います!
自分で自由にルートを作れる
Wトレックに参加するためには事前に5日分の宿(山小屋 or キャンプサイト)を予約する必要があります。ただ宿から宿まではどんなルートで行くかは自由です。
他の旅行者と情報交換したり、地図を見たりしながら、このルートで行ったら景色がきれいだろうと考えルートをつくるのは楽しいです。また途中で道を発見し、行き止まりになるかもしれないけど行ってみるなどの冒険もできます。
自分でルートを選べるので難易度の調整も簡単です。今日は疲れたから短いルートで行こう、今日は頑張れそうだから足を伸ばしてここまで行こうなどを自由に決められます。
自己責任で楽しむ
せっかくの大自然でも規制ばかりだとつまらないです。Wトレックでは良識のある人間が来ているという前提の元、各々の判断で自然を楽しむという状況になっています。
立入禁止の看板はほとんど存在せず、危険な場所には枯れ木などがそれとなく置いてあるだけです。また滝の近くには看板があったのですが、立入禁止ではなく、「スリップ注意」という警告でした。あくまで滝に近づくかは自己責任。
また目的地の方向を示す看板はほとんどなく、ルートは色のついた木を目印にたどっていきます。迷っても自己責任。地図を頼りに目的地を目指します。
宿の設備は充実
Wトレックでは主に2種類の宿があります。
・山小屋
・テント(レンタル or 自分で持っていく)
自分は山小屋とレンタルテントで2泊ずつしたのですがどちらもとても快適でした。
山小屋はかなりしっかりした建物で、食堂、バー、濡れたものを乾かせる暖炉、温水の出るシャワーなどがあり、いたれりつくせりです。
一日中歩いた後のシャワーからのバーで飲むビールは最高です!
部屋は4〜8人同室のドミトリータイプで、二段ベッドが設置されています。
レンタルテントは1人用と2人用があり、すでに張られた状態になっています。テントに宿泊しても山小屋でご飯を食べたり、シャワーを浴びたりすることはできます。
寝袋も-9℃まで対応の良いやつが用意されているので全く寒くありません。
ただご飯をその辺に置いておくと野生動物が寝ている間によってくるので注意です。
他の旅行者と仲良くなれる宿のシステム
Wトレックに参加している人は5日間同じ宿に泊まります(初日は山小屋A、二日目は山小屋B…最終日は山小屋Eなど)。
食堂は一つのテーブルにみんなで座るスタイルな上、同じWトレックをしている同士なので、自然と隣の人とのコミュニケーションが発生します。山に登る人に悪い人はいないとよく言いますが、Wトレックに参加している人も良い人が多く、すぐに仲良くなれます。
自分は夕食で仲良くなった人とパーティーを組み、トレスデルパイネ山の朝焼けを見に行きました!
Wトレックだけではなくパタゴニアを含めアルゼンチン、チリには魅力的な観光地がまだまだたくさんあります。
この記事を見て、みなさんの次の旅行先候補にパタゴニア、Wトレックが入ったら嬉しいです!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?