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私史上最高だったLUMIX S1というカメラのこと。

この記事を書いたと言うことは、私の手元にS1はいないということです。
私の人生でもっとも良かったと胸を張って言えるカメラ、LUMIX S1についてのラブレターです。


なぜLUMIX S1を買ったの?

これまでのカメラ人生。

一眼レフと出会ったのは中学生の頃。何度もじいちゃんにお願いしてNikon D5100を買ってもらってから、カメラの道を歩み始めました。

大学時代はバンドに明け暮れ、ライブ撮影はありましたが、お金はすべて楽器なんかに投資していたのでカメラは二の次の時代もありましたが、高校の先輩がカメラをやり始めてからは再び熱が入って…入りすぎて写真を学べる大学に入りました。

それまではD5100→D7000→D600とレフ機を乗り継いで来ましたが、時代はミラーレスだろうとZ6を買ったあたりから、どうもおかしくなってくるわけですよ。

デザインはそこまで好きじゃないけど、特に悪いところもない良いカメラだった。

撮影はずっと楽になったし、色んなところに行って写真を撮りたい欲求も次から次へと生まれていくんですよ。でもなんだかとても空虚なんですよ。

意を決してミラーレス機、Z6を買って3ヶ月経ったある日。私の心のモヤモヤは昂進していたんですね。
これまで歩んできた安定のニコンの道を飛び出して、持っているレンズも全部売って、新しい価値観を入れようと決意していたんですね、すっかり。

記憶は定かではありませんが、確かα9かなんかを買おうとしてたんじゃないかな。時代はミラーレス、ミラーレスの寵児ならSONYだろうと。

衝動的なS1との出会い。

ただそこで、ふと思い出したんですね。
このニコン街道を進んできた私の、D5100を買ってもらう前に使っていたメーカーの名前を。そいつが「LUMIX」だったんですね。

当時飛行機撮影にハマっていた私は、手軽な望遠域としてマイクロフォーサーズを導入したら面白いかな?って少しだけ考えていたんですよね。それもあってLUMIXのことがふと出てきたんだと思います。
サイトを見にいったら、Sシリーズってのを見つけたんですよね。
「フルサイズも出してるの?じゃあこれにしよう。だって誰も使ってなさそうだし、オリジナリティあったらカッコいいじゃん?」

まことに思考がダサい。

S1とS5ってのがあって、S1の方が安いのにデッカくて強そうだし、丸型のファインダーがついてる!ってS1にしました。丸いファインダーに惹かれちゃうのはニコンを抉られた者の性なのです。

機能のことなんか一個も調べず、どんなカメラかも良く調べることもせず、レビューも一個も見ずに、眠れないほど惚れ込んでしまった私はありとあらゆる機材を売って、LUMIX S1と LUMIX S 50mm F1.8を買いました。並行して S 20-60mm F3.5-5.6も揃えて、新たなカメラ人生が始まりました。

絶望的な第一印象。

2022年8月、私の手元にLUMIX S1がやってきました。
最初は色の違いに戸惑いました

D3とともに。この頃はまだ黒かった。

というのも当初の私は強い色はとことん強く発色してくれるニコン機をビビッドで使うような、今思えば目が腐ってますか?というようなセンスでしたので、LUMIX S1の薄いテイストに戸惑ってしまうのでした。

Nikon Z6
LUMIX S1

今見比べると、下の色はかなり好きだし、上は目が痛くてしょうがないのだけれど当時は大変なカメラを買ってしまったと思った訳ですよ。味がしない!みたいな感じですね。しょっぱいものを食べすぎてたんだ。

来てすぐの8月頭、夏に長期のデートをするのが恒例なので、よーめとの神戸行きに早速持って行ったんですが、そこでもう一つS1の洗礼にあうことになったんですよね。そう、AFです。有名だったそうですね、ええ、LUMIXのAFは曲者だと。

なに?コントラストAFしかない?ってなんだ?
AF-Cはうねうねした挙句、電池はバカみたいに食うくせに、走ってる電車に一個もピントが合わせられない。こっちに来る電車が近づくといきなりピントがどっかにいってしまう!
8月の神戸電鉄沿線で呆然としました。

動態の歩留まりが悪い。成功カットが半減…これは行けてるけど。

Z6やレフ機で当たり前にしていたことが、このカメラでは出来ない。ヤバい、買うカメラを間違えた!ってね。

また行きたいなぁ神鉄。

その代わりに、色はこっちの方が透き通っていて綺麗かもしれないなと早速思い始めました。
色が気に入らないままだったら、我慢できずに売ってしまったかもしれませんが、買取価格も絶望的である意味助かりました😅

ところでLUMIXの界隈に飛び込んだら、動画の人ばっかりです。スチルユーザーが肩身が狭い思いする界隈ってあるんだ笑と思いつつ、優しい人に囲まれることができました。そして界隈に足を突っ込めば、写真撮ってる人もそれなりにいることを知るわけで…世界は広い。

S1がカラダに馴染んできた頃、あるレンズと出会う。

神戸でS1の個性にコテンパンにされながらも、レタッチや操作慣れてくれば写真のクオリティが上がっていくのが分かり、いいカメラだなぁとはすぐに思うようになりました。

なんというかこのカメラは撮りての「工夫」で乗り越えられる欠点が多かったのが幸いでした。AFもAF-Sのスピードと精度は良好で(どっかに飛んで行くと戻ってこないけど)、コツを掴めば苦労しないことにも気づいてきたのです。

そんななか、いい加減に望遠レンズの欲しかった私が9月に手に入れたのがSIGMA 135mm F1.8 DG HSM Artという大きなレンズです。

フィルム機材写真。このあとレンズも白くなる。

一眼レフ用の設計で、見ての通りデカくて、重たい。しかしこのレンズを使うようになってからS1の地位は確固たるものとなってゆきます。

今はなき、留萌線峠下駅にて。
今はなき、留萌線留萌駅にて。
夜の空港写真も乙なもんで…

このレンズはとにかく写りがいいんだ!
もうマジで最高。LUMIX S1との相性が良いのか、この頃確立してきたシネライクV2のカスタムカラーとの相性が良いのか、とにかく艶やかで綺麗な写真を量産してくれたのです。
日差しが良くなくても、暗くても、曇ってても、どこでも美しいトーンを実現するS1の虜になっていることに、11月に行った北海道で気づいたんですよね。

S1を持っている人がこれを見ているなら、とにかく買って欲しい。買わなくても良いから使ってみて欲しい。うちの先輩が持ってるからそれを。

何はともあれこの頃、このレンズのおかげも相まってこのカメラで撮ることが自分のアイデンティティのひとつであり、写真生活において欠かせない位置を確固たるものとしていったのだと思います。

何が「最高」たらしめているのか。

LUMIX S1は私にとって最終的にとても心地のいいカメラであることに違いはないけど、最高性能のカメラな訳はありません
それでもS1の何が良かったのか、私の観点から書いてみようと思います。

機械としての魅力。

  • 見た目が良い。

まずは見た目が良いでしょう。

フリンジでまくりで草。

僕はZ6のデザインが好きじゃなかったので、余計にそう思うのかもしれませんが、角張った大きいボディ、しっかりとしたペンタ部の造形は惚れ惚れしちゃいます。大きくて、重たいけど、それも見た目の満足度に貢献しているので仕方がありません。とにかくこんなしっかりとした堅牢感のあるボディは今後出てくる保証がありません。

  • 提供されている機能が良い。

一応、と言ったら失礼ですが、LUMIX S1はLUMIX初のフルサイズミラーレスとして気合を入れて設計をされている機種で、当時提供できる機能がすべて搭載されている点が良かったです。
他社でフラグシップ機を買うとなったら50万以上の出費を覚悟しないといけませんが、S1なら中古で20万弱、今となっては10数万円ほどです。
リアルタイムLUTなどの次世代の機能は使用できませんが、手ぶれ補正の能力や、SSWF、高性能なファインダー、Fnボタンの数など機械として不満のない作りです。
地味に効果を発揮していたのはSSWFかもしれなくて、これのおかげでZ6の時散々苦しんだセンサーゴミにそこまで苦しめられずに済みました。マイクロフォーサーズにおける本機能に劣っているようですが、十分機能しているはずです。残念ながら最近の機体では省略されがちですが…

  • EVFが良い。

先述したようにS1のファインダーは異次元です。NikonのEVFが良いよね〜、みたいな話とは次元が違います。S1のEVFは映画館です。覗いているだけで、幸せ指数が高いです。むしろEVFが綺麗すぎて、撮れた写真がイマイチに見えるようなことさえあります。S1特有の困った点です。

  • 操作系統が良い。

これはLUMIX機にはほぼ共通で語れる素晴らしいポイントですね。
3連ボタンや、AF-S/AF-C/MFをすぐに切り替えられるスイッチ、ほぼすべてのボタンがカスタマイズできる自由度の高さで、操作系統での不満がほとんど発生しませんでした。
申し訳ないけど、LUMIXを使ったあと大抵の機体で操作上の不満が出てくる…まぁ、慣れですけど。

  • 耐久性が高い。

有名な話ですが、耐寒耐熱性能は業界屈指の実力らしいです。星座を撮ったり、外で動画を長回ししたりする機会がないので、素晴らしい実力だ!と言い張ることはできませんが、冬になってもバッテリー持ちが極端に悪くなるようなことが他者より少ないように感じて、そういう小さなところでも性能の良さを感じました。
また耐久性については、結構な回数落としましたが大きな故障にはならず、丈夫なボディだったなぁ…と思います。ただしモニターはちょっとヤワです。

撮れる写真の魅力。

  • 色が良い。

LUMIX系の記事ではバカの一つ覚えみたいに語られてますよ、色が良い色が良いって。じゃあ一体なんなんだろうと思いますが、本当に色は綺麗なんです。

雪レフはズル。
秋の日差しとSL、最高の条件。

ただ、天気がいい日に順光で撮った写真が綺麗なのは当たり前なんですよね。
個人的にLUMIXの色が良い、というのは光が弱い時間や、曇りの日、暗いところでの階調のよさにこそ表れていると思うのです。
とても感覚的なお話ですが、品が良い

コントラストがはっきりしている絵でも、品があるのよ、品。
夕暮れ、意外と見たような繊細なトーンは維持できないことが多いですが本機は過剰に演出もせず、忠実の美学。
質感が良いと思いませんか。
雨の日も綺麗ですね。

写真を撮ってて楽しい時間が増えたんですよね、本当に増えましたよ。すごいカメラなんじゃないかな。

  • 高感度耐性が良い。

まぁこれはフルサイズ機ですからある程度は担保されていますが、S1は粒状が美しいのか、エンジンが頑張っているのか、本当に仕上がりが良いんですね。同じメーカーで言うならS5IIと比べてみてほしいのよね、確実に違う(S5初代も綺麗)。

とりわけノイズを潰しにかかるような正直酷い仕上がりにしてしまうZ6からの乗り換えだったため、ディティール感を残してくれるLUMIXの高感度のこなし方は大変センスが良いのです。

ISO6400
ISO16000
ISO6400

高感度が普通に使えるってことは使えるレンズの選択肢も増えるし、楽しく撮れる時間が増えるってことなので、この性能は大変良かった。
ISO6400は平気で繰り出せるカメラです。

  • モノクロが美しい。

デジタルカメラで撮るモノクロって、正直「逃げ」の選択肢かなって思ってたんですよ。何も考えなくても、何も拘らなくても、雰囲気は出ちゃうから。

だからそんなに好きじゃなかったんですが、LUMIXに搭載されているLモノクロームDには度肝を抜かされました。

ISO12800まで上がっていても、綺麗な粒状とLモノクロームDとの相性はよく、使いやすかったなぁ…むしろモノクロで仕上げたいと初めて思うようになりました。

では、なぜ別れるのか。

さて、こんな素敵なカメラと7月にお別れして、元鞘ですが、Nikon Zfを新品で買いました。

LUMIX S1が手に馴染み、当初とは違って鉄道写真や飛行機写真などの動体でも苦慮することなく使用できました。

LUMIXのせいではない。

先に言っておきますが、近年のLUMIXのいざこざが原因ではありません

大きく問題なっていることや、それ以外の界隈の皆さんが指摘し続けているこについて、悲しい思いや、怒りがない訳はありませんが、そんなことで自分の写真表現や使うカメラを制限されるほどお人よしではないのです。

好きなメーカー、好きなカメラありますが、もっといいものがあったらなんでも使うのが私のスタイルではあります。そもそもそんなに金も使ってないので利害関係者にもなっていないだろうと。まぁ何回も言いますけど、どうかと思うぞということは無限にあるけどさ…

動機① 2年経ったし…

じゃあなんで?まず一つは購入して2年経ったからです。
この直前にストラップピンの緩みを見つけて、5500円で修理をしました。中古で買いましたし、そろそろ大きな不調が出てしまうかもしれないなと思った時、修理代も高いですからこの辺で新しいカメラにしようと。

困ったことにLUMIXでは後継機もなく、S5IIについては当初これに買い換えようか真剣に迷いましたが、色味がS1とは違う考えで作られているのがイマイチしっくり来なかったので…

これは他社のカメラに行く機運だなと。私はマウントを変えることに一切躊躇いがありませんから…

動機② 共通化

よーめーのZfcと、わたしの新しい相棒Zf

動機①はぶっちゃけおまけです、こっちが本題。
というのも昨年末によーめーかめらまんことmy sweetyがついにカメラを買ったんですね、Zfc。これは後で記事になりますが、想像の5000倍くらいカメラにハマったので、Zマウントに揃えて、よーめが買った機材を借りたり、こっちの機材を融通したりしやすいようにしました。つまり機材を買いやすくなるのだ。

むしろなんでそうしなかったかとか、じゃあLマウントじゃないのはなんで?とかはその記事に書いてあるかもしれませんのでお待ちください。

未来のS1IIに想いを馳せる。

そろそろ次のS1が出てくるようです。
でも次に来るのはたぶんS1RかS1Hの後継機なんでしょう。
今のバタバタしたLUMIXさんが、あの頃の完成度というかテンションでフラグシップたる機体を出せて来れるのかには正直不安がいっぱいですが、あまりに他社に遅れをとっていた筐体サイズやAF性能についての能力が向上し、物好き向けの機体にならないでいて欲しいと強く思います。ついでにそろそろサポートのシステムや体制が改善されるといいのですがね…
LUMIXね、根拠もないのにディスられたり、本当に会社がやらかしているところをディスられたり、いろいろしますけどね。色が綺麗ったらないですよ。もうね、すごいオススメしたいんだ。

S1RIIが出たらどんなものになりますかね。僕の期待を裏切ってくれるでしょう、きっと。高くて買えない僕が、指を咥えて羨ましがるような機体になってくれ。

おわりに

私のS1、愛着がやたらわいてしまったので結局カメラ屋さんに売る気になれず、うちの先輩(X @Yunikichi97)に売却し、引き取ってもらいました。

これからのS1の写真はここで見られますので、見てあげてください。

引き継ぎ式…寂しくなるね。

このカメラは間違いなく、私の人生史上一番良いカメラでした。
そして今中古なら一番安く手に入るフルサイズミラーレス機のひとつです。(新品もまだ売っているし、高くはないです。)

ちょっとカメラ自体は大きくて、重いですが、一眼レフの時代にはこのサイズ感結構当たり前だったと思いますし、そんなことは気にならねぇ!という気概のあなたにはとても向いていると思うのです。

吐き出す色はS5IIやG9IIとは違い、とても淡白なので、オールドレンズを使って遊ぶのにも良いと思うんです。ファインダーも綺麗ですしね。

へへ、LUMIXなんてさ、って使わないのは本当にもったいないですよ。

いつかS1の後継機が出てきて欲しいけど、それは難しいだろうなぁ…でもS1っていうS1Rとも違う、小気味の良い低画素機のことを覚えておいて欲しいな。

おしまい。


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