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酵素3000種でキレイに?! 〜 膨張する酵素の世界 〜

タイトル画像は「酵素」というキーワードとその英語「enzyme」でGoogle画像検索した結果です。今の日本での「酵素」という言葉のイメージが表れていますね。。。僕の頭の中のイメージはどっちかといえば右の方です。研究者以外の人に、何の研究をしているか聞かれて答えたら、よく「酵素ドリンクって飲んだらキレイになるんですよね!」と頑張って話を合わせてくれる優しい人がいるんですが、それにどう答えるべきかまだ迷っています。そんな私が、今日は自分の専門ズバリの話をします。

酵素は何種類あるの?

「生き物の中には沢山の種類の酵素があり、それぞれ異なった働きをしています..」というのが定番の説明だと思いますが、じゃぁ何種類あるんでしょう? 私が研究室の代表になってホームページをリニューアルした2012年末頃には「酵素は3000種ある」という説明がよくなされていたので、実際に調べてみたら5536もありました。研究室のHPには「数え方にもよりますが(注1)、その数は5000種を超えています」と書いたのですが、気のせいか、それ以降「酵素5000種」という書き方が増えたような。。

どこで調べられるの?

BRENDAというwebサイトがあります。

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ここにアクセスして右上の"all enzymes"という小さな文字をクリックしたら、Number of different enzymes:の後に書かれている数字が、現在、正式に分類されている酵素の数です。え、7862もあるの?(2019年12月現在)

酵素の数はどんどん増えている

そうなんです。分類されている酵素の数は結構な勢いで増えています。これは、僕らの体の中で酵素の種類がどんどん増えている、というわけではなくて、新しい酵素がどんどん見つかっているからです。ここ7年くらいの増加の様子を下に貼っておきますね。大体年に300くらいのペースでコンスタントに増えてます。研究室のHPの記述も2年くらい前に「..その数は7000種を超えています」と書き替えました。「酵素7000種」って書いてる業者さんは、まだそんなに多くないですねー。

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どこからこんな数の酵素が見つかっているの?

実はそのほとんどが微生物から見つかっています。私達動物の腸内などで共生している微生物や(いわゆる腸内細菌ですね!)、土壌などのさまざまな環境にいる微生物(大村智先生がノーベル賞を取ったアレです)などは、我々がまだ知らない酵素を沢山持っています。微生物には、環境の変化に合わせて新しい酵素を「作り出す」能力も豊富に備わっているとも言えます。(この記事参照)

誰がどうやって分類しているの?

当たり前ですが、人です。何人かの専門家が、新しい酵素を見つけた人によって書かれた論文を見て、妥当そうならば、番号を割り振るのです。正確にいうと、国際生化学連合(IUBMB)の酵素部門の命名委員会(Nomenclature Committee)が決めています。そこで割り振られた番号(EC番号といいます)と定義は、ExplorEnzというwebサイトで公開されます。

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2019年、酵素の世界に激震が走った?

実は、今年の6月に、酵素分類の世界で大きな出来事がありました。これまで何十年も酵素の大きな分類は6種類(EC1 〜 EC6)だったのですが、なんと新しい大分類であるEC7が新設されたのです。これについてはまたの機会で記事にしますね。

おわりに

酵素の研究の世界も、多くのたちが頑張って、バリバリと進んでいることが、分かってもらえましたでしょうか。でも、酵素の分類をしてくれる命名委員会は、そんなに多くない人数がボランティアでやってくれているそうです。年に300もの酵素の分類を、文献を見ながらチェックして番号を割り振り定義を決めていくのって、結構大変そうですよね。分類と整理は科学の世界を探検するための地図作りのようなもの。いつも本当にお世話になっています。お疲れさまです!

注1:この記事ではEC番号の数を、「酵素の数」として書いています。「数え方にもよる」と書いたのは、考え方によっては、酵素の数はもっと多いとも言えるからです。EC番号は酵素が起こす化学反応の種類で分類しているので、同じ反応を起こす酵素でも、実は何種類もの全く違う「かたち」をしているものが含まれており、反応のやりかたも結構異なることがあるので、それらは考え方によっては別の酵素なのです。

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例:上の3つはどれもセルラーゼ(木材などを分解する酵素)の1種であるエンドグルカナーゼ(EC番号はすべて3.2.1.4)です。全然かたちが違いますよね!

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