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さよなら134日目
私が8歳のころ、一羽の小鳥がうちへやってきた。
とても賢く、愛情とユーモアに溢れた生き物だった。
とても怖がりで、一人では、食事もままならないような、繊細さと、愛のためなら、自分より大きな相手にも立ち向かう勇敢さを兼ね備えていた。そのすべてが、とても美しかった。
当たり前に一緒にいて、当たり前にお互いが大好きだった。私が眠れば、小鳥も眠り、私が食べれば、小鳥も食べた。
私が呼ぶと必ずやってきた。小鳥が私を呼んだ時、いつからか返事だけをしてきっと私は飛んではいかなったと思う。
自分の体よりはるかに小さな小鳥を見ていると、物心ついた時から幸せと、不安が入り混じるようになった。きっと私の方が長く生きてしまうな、と思い始めたからだった。
2016年の初め頃に、小鳥が体調を崩した時、すでに実家を出ていた自分にとても葛藤しながら、時間があれば会いに行った。小鳥にとって、私にしか埋められないものがあることを知っていた。そのことが、実家を離れた罪悪感に変わっていた。一方で、一人の生活の中でしか生めない物があった。
たくさんいろんなことを調べて、できることをした。病院にいくと、年齢的体力的に卵を作るのに体に相当な負担がかかっているけど、卵を産もうとしてる。とのことだった。この期に及んで、まだこの世に何かを残そうとする姿に泣いてしまった。
「君の20歳を祝って、それから次は私の30歳を一緒に祝ってくれる?そして一緒に海を見に行かない?」といつも話しかけて、自分勝手な約束をした。そして「世界で一番かわいいね」というといつも、本当に世界で一番かわいい顔をして見せてくれた。
しばらくして、だいぶ体調が回復したあとのこと、17歳、心臓発作、突然のことだった。この世を呆気なくさってしまった。悲しみと安心感でいっぱいになった。悲しくてたまらないのに、もう一人にせずに済むという、やっと一緒になれたような、そんな感覚だった。
11月14日、私はその日グループとして最後のレコーディングを控えていた。家族の用事で少しだけ遅れる、とだけ連絡を入れて、少し遅れて現場に入らせてもらった。「風船」という曲を録った。私が歌詞を書いた、旅立ちの曲だった。
仕事に出る前、両親が私の家に、亡骸を運んでくれた。まだあたたかく、それでももう、私の知ってるあの陽気な姿じゃなかった。私が抱えた時、亡骸が、パッと目を開けた。
それを見て、みんなで泣いた。父にお願いして、最後の形ある姿を写真に撮ってもらった。
父の撮った写真はすごかった。何度見返してもすごい。
写真を見てると、穏やかな表情で眠る小鳥は、私の手につつまれるために生まれてきたみたいに、私の手にぴったりおさまっていた。
この世での役目を終えて、しっかりと旅立った。
ああ、恋しいな、と写真を見て思う。とても美しい魂だったな、と。今もどこかにいると思うけど。
明日、約束の30歳。君の20歳も祝えなかったし、一緒に海も見れなかったけど、それは私の勝手なお願いだったからね。その小さな体に大きすぎる海や、凶暴な鳶は恐怖だったと思うしね。海はほとんど冗談だったけど。
卵を残さなくても、何の形もなくても、君の残したものはたくさんあるから、ということ、伝わるかな。いけないな、思考回路がすぐニンゲンの都合になってしまうな。
とにかくね、約束の30歳も、私は楽しく過ごすよ。
さて、今日のさよなら。
なんのこっちゃという方は下の記事へ。時間のない方にとても雑に説明すると、30歳の誕生日までの135日間(始めた日から)で1日1つのモノとの決別をし、供養がわりにそのモノにまつわる話をここに記していきます。
今日は、上記で書いたぴすけさんのお骨を、いまだにどうしてあげることもできなかったから、ちゃんと、土に返してあげようと思う。
他にも先代猫さまのお骨もまだあったり。
しっかり今一度供養して(多分人間ほど、未練なんもないしなんのこっちゃニンゲンよ。そこに私はいません、眠ってなんかいません。って感じで全部ニンゲンの都合だろうけど。)
ちゃんと土に還して、お墓を作ってあげよう。
優しい風に心を震わせたり、花の匂いにときめいたりすることの方が、もしかすると、近くに感じられるのかもな。
動物の方が、強いこと、なんだかいっぱいある、きっと。
確かにお骨を見て、ぴすけだなって思わない。写真が一枚ある方が、満月を見る方が、いろんなことを思い出せる。
もう十分すぎるほどにお世話になったので。断捨離の記事に書くのは、ちょっと違うとは思うのだけど、どちらかというと物理的なことよりも、精神的なもの。
家族と相談して、みんなが良いと思う良い方法で、形にしたり、手放すことができたらなと思います。
では、また明日。
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