ありがとうの言葉

こんにちは。
なるようにしかならないと日々思いながら過ごしている50代独身女です。

わたしは仕事がある時は、主に短期のポップアップショップの仕事をしている。

以前は、婦人服、アクセサリー、雑貨、小物などのファッション関係がメインだったが、ここのところお茶やチョコレートなどの食品売り場などでも新しくはじめた。

だいたい1週間から2週間の間の期間限定ショップの中で、何日かシフトを組まれて入っている。

ほとんど、はじめての職場なのだ。

その中で、お客様に店内案内を聞かれる回数がとても多い。

わたしへの確率が高い

近くにインフォーメーションのカウンターがあってもなのだ。

以前、こんなことがあった。

トイレの近くの場所で仕事をしている時、わたしはどちらかというと人より奥の場所に立っていた。

それなのに、ひとりの女性がトイレから真っ直ぐにわたしのところに来て、こう言ったのだ。

後ろのボタン留めてくれる?

そういって、髪をあげて背中をわたしに向けた。

そして、ボタンを留めてあげたこともある。

また、期間限定のスタッフなので、聞かれてもわからないことも多い。

「確認致します」と一言伝えて、周りの人に聞きに行く。

案内を伝えると、丁寧にお礼を言って去っていくお客様もいるが、ほとんどの方は何も言わないで「あっ、そう」と去る人が多い。

中には、すぐに答えられないわたしに「急いでるんです!」「もういいです!!」と怒って行く人もいます。

まぁ、そういうことは慣れているのでいちいち気にしないようにしているが、人に聞いておきながら…と、気持ちは良くない。

相手の言い方によっては、自己嫌悪に陥ってしまうこともあった。

ところで、プライベートでもよく道を聞かれる。

自分でも笑ってしまうが、接客業が長いので、手のひらを上に向けて丁寧に「そちらを曲がりまして」「〇〇の方に行っていただきまして」「〇〇でございます」と、ついつい癖で説明してしまうこともある。

そういったわたしの、よく声をかけられる日常の中での遭遇したトラウマの話しがある。

お年寄りに話しかけられることも多い。

特に、おじいさん=トラウマになるエピソードがたくさんある。

昨日の事だ。

246沿いを歩いていると、前から歩いてきたおじいさんに声をかけられた。

まさか?
おじいさんの痴漢?

と、恐れてしまった。

なぜかと言うと…

10年前くらいのこと。
横浜駅の構内を歩いていると、前からツカツカと歩いてきたおじいさんがすれ違う時に、わたしの下半身を触って去っていったのだ。

一瞬の出来事だった。

また、ある時は...

電車の座席に座っている時に、隣のおじいさんに両手で足を押さえられたり、立ってよろけたおじいさんが後ろから、わたしの首筋に唇を…。

気持ち悪くて、家に帰ってお風呂にすぐに入り、泣きながら何回も首を洗った記憶がある。

余談だが、隣の奥さまも犬の散歩でおじいさんに抱きつかれたと半泣きしていた事があるので、「おじいさん」には気をつけているのだ。

…で、警戒をしながら足を止めた。

その声をかけてきたおじいさんは、よく見るとメガネの奥の左眼が真っ青に腫れていた。

誰かに殴られたのだろうか?

テレビドラマで見るような眼をしていた。

すると、おじいさんはデジカメをわたしに渡した。

この眼を撮ってほしい

怖かったが、恐る恐るデジカメを受け取り、仕方なくおじいさんの眼を撮った。

古いデジカメで、使い方がよくわからず何回もやり直しをさせられたのだが、やっとドアップで撮ることができた。
おじいさんは「まっ、いいか」というような表情で、OKを出してくれた。

しかし、「ありがとう」でもなくデジカメの方に意識がいってるようで、無言で去っていったのだ。

えっ?何も言わないんだ?信じられない!

心の中でしか言えなかった。

そういえば、こんなこともあった。

80代くらいのおじいさんが、その時も前から歩いてきて、わたしに声をかけてきた。

バス代を持っていないから貸してほしい

貸すも何も、知り合いじゃないんですけど「あげる」ということになるよね?

わたしもお金をあげられるような余裕のない暮らしだが、騙されてるのか?困っているのか?認知症なのか?

色々考えてしまったが、駅とバス停の場所を教えて、お金を渡したこともある。

その時も、何も言わずに渡したらそのまま歩いて行った。

わたしのこういった数々のエピソードというものは、なんなんだろうと思う。

そう言った話しを、その頃の職場の店長に話すと「普通は、そんなこととはあまり遭遇しないですよ」と、他人事に面白おかしく笑っていた後の言葉。

チャイさんが、そういう人を引き寄せてしまう何かがあるんじゃない。

怪訝な顔をして言う。

中には、チャイさんが優しく見えるからだよ…とか、話しかけやすいからだよ…そう言ってくれる人もいたけれど、その店長の言葉を重く受け止めてしまったのだった。

ネガティブなことを引き寄せているのだろうか?

そんな時のこと。

ここ最近の雨の夜に、1年くらい前になるだろうか。

ある出来事を思い出した。

仕事帰りの夜。
台風予報の前日の大雨の夜のこと。

確か、9時は過ぎていた。

大きな荷物を持っていたおばあさんがいた。

大きなスーツケースふたつくらいの大きさの荷物を持って雨宿りをしている姿を見かけた。

わたしは、買い物があったので一旦素通りした。

買い物を20分くらいして帰ろうとした時も、同じ場所におばあさんがいたので恐る恐る声をかけてみた。

すると、こんな荷物で傘もさせないしどうやって帰ろうかと思ってると言った。

タクシー乗り場が、あそこにありますよと教えると、そこまでも持てないような大きく重い荷物だった。

傘は、持っていたが傘をさせないような荷物に気がついたので、お手伝いしますと言ってみた。

おばあさんには、荷物を持たせられないので傘をさして後からゆっくり来てほしいと伝えた。

タクシー乗り場は、わりと近いのだが大雨の夜に、これだけの荷物はわたしも必死だった。

ずぶ濡れになってしまった。

タクシー乗り場の行列で荷物を持って待っていると、おばあさんがゆっくりと歩いてきた。
もう、良いと言うのだけれど、乗りかかった船!!

最後まで見届けないとわたしも心配なので話をしながらタクシーを待った。

84歳で一人暮らしをしていると言う。

そして、最近までお姉さんと暮らしていたがひとりになったという話しを聞いて、田舎の母を思い出して涙が出そうになった。

そして、わたしと妹の老後まで頭をよぎって話しを聞いていた。

おばあさんの荷物をタクシーのトランクに、入れてほしいと運転手の方に伝えると、あまりの荷物に後ろに並んでいた男性もお手伝いしてくれた。

わぁ、ステキ!ステキ!ありがとう。

親切に泣きそうになったわたし。

運転手の方に、宜しくお願いしますと、何度も自然に頭を下げていたわたし。

おばあさんを宜しく

そのおばあさんも、何度もわたしに言うのだ。

神様のような人だ!!


しかも、何度も手を合わせてありがとうと言う。

恥ずかしいよ

当たり前のことなのに、神様だなんて…申し訳ない気持ちでいっぱいになったのを思い出した。

でも、人から言われる「ありがとう」の言葉は嬉しい。

わたしは、いつも「ありがとう」の言葉を大切にしている。

以前にも、何度か書いたことがあるのだが自分では「ありがとう」の言葉を伝えることは心がけているつもり。

だけど、人からの「ありがとう」の言葉を言われるって、自分が「ありがとう」を言う回数より、はるかに少ない。

だから、このおばあさんには「ありがとう」と言われたことが気恥ずかしかった。

嬉しいと言うより、慣れていなかったから…ただ、ただ「恥ずかしい」気持ちだったことを、急に思い出した。

そして、様々なエピソードの中での、自分が感じたこと。

「ありがとうも言わないんだ」と、いう気持ちは捨てていこうと思った。


自分に優しい言葉をかけてくれたおばあさんの心を思い出したので、イラスト使用させて頂きました。

チャイ




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