What is Freeski 2021 解説
フリースキーについて昨日も簡単な図を書きましたが、競技としてのフリースタイルスキーと、競技ではないフリースキー、一体なんだろう?という疑問を解消すべく、各ジャンルの動画を集めました!競技としてのフリースタイルスキーと、競技ではないフリースキー、そしてモーグルとの違い、それぞれに楽しんでいただけたらと思います。
フリースタイルスキーはいつの時代も、競技のフィールドを飛び出したい人達が作り出します。アルペンだけでは飽き足らないスキーヤーが荒れたバーンを滑ってモーグルが始まったのが60年代、モーグルが競技化されて決まったコースを滑ることが物足りず、自由を求めて色んな場所でジャンプでのトリックを始めたのが90年代、スケボーやスノーボードで流行っていたパークアイテム、ストリートと融合しました。バックカントリー、いわゆる山スキーは登山の一ジャンルである山岳スキーの伝統がありますが、パークなどで高度なトリックを身につけた人達がスキー場外にフィールドを求めたところから、フリースキーとの融合が起こり、スキー場のコースではない自然の中でパウダーを滑り、地形を生かしてトリックを決めるようになっていきました。これらがモーグル、パーク、ストリート、BC(ナチュラル)、フリーライドとして、やっぱり誰かと競いたくなって、競技化していくんですね。あと5年、10年後にはフリーライドの競技化に飽きた人達が、現時点では想像もできない場所でのスキーを求めて、新たな潮流を作っていることでしょう。
それぞれの映像作品の紹介です。
FTW,FTQはFreerideと呼ばれる一番新しい競技の部門です。Freerideは山全体がフィールドで、自分でライン取りを決めて滑ります。先シーズンの白馬大会優勝の勝野テンラが滑ってる映像をピックアップしました。
ニセコ花園とルスツの映像はスキー場管理内の非圧雪ゾーンです。毎日パトロールがチェックして安全管理をしているので誰でも滑ることができます。手稲はいわゆる「コース外」です。手稲はアクセスが良いのでビーコンがなくてもコース外を楽しむ人も多いですが、手稲のコース外は斜度があり春先には雪崩も起こります。コース外は自己責任エリアになるので小学生にはお勧めしないところですね。中高生になったらデビューでしょうか。BUMPSに聞いてみてください。
その次はX-GAMESとDEW TOURという賞金大会の映像が続きます。人工アイテムメインのフリースキー大会です。ビッグエア、スロープスタイル、スーパーパイプ(ハーフパイプ)、ナックルハックなど。この2つの賞金大会はオリンピックとは違った、エクストリームスポーツのビッグイベントです。招待制なので誰でも出られるものではありません。ここに出られるだけでもすごいことです。
ケリー・ヘンリーはエストニアの若い選手です。子供の頃からレッドブルがスポンサーについているという化け物姉弟で、ここ数年で年齢も基準を満たしてX-GAMESなどの大きな大会で勝つようになってます。彼らはSNS世代のスキーヤーで小さい頃の映像もたくさん見られます。
その次はモーグルです。モーグルはFISが統括しているので国内大会、ワールドカップ、オリンピックがあり、アルペンをやっている人には馴染み深い競技システムです。モーグルはシングル(MO)とデュアル(Dual Mogul)の2種類があります。ワールドカップでは一日目シングル二日目デュアルのような形で行われますね。現時点での世界チャンピオンはミカエル、圧倒的王者です。日本人では堀島行真がランキング2位まで上り詰めてます。原大智は平昌でメダルを取ったあと競輪選手としてデビューして、北京オリンピックへの出場をかけて今シーズンにモーグル復帰予定ですね。
閑話休題、レッドブルが50年のフリースキーの進化をテーマにした映像作品を出していました。全部当時の装備を集めてきて撮影した面白い映像です。
TOP 10 Skiers of 2015はちょっと古い映像ですが、映像作品にもよく出ているビッグネームがまとめて見られるので入れてみました。
Candid Thovexはフランス出身で、X-GAMESなど賞金大会でも活躍して映像作品も沢山残した2000年代初頭を代表するスキーヤーです。大会を引退していわゆる回転数の多い超高難度トリックはありませんが、今でも驚くような映像を沢山残しています。
Real SkiFiはフィンランドのフリースキーマニアの高校生達が自分たちで作った映像で、YouTubeにアップしてから一躍有名になって今では他の映像作品ともコラボするようになりました。大きな山や人工アイテムが沢山あるパークではなく、お金がかからない街中をスキーで自由にやりたい放題という、まさにフリースキーを象徴するような作品ですね。
Jon Olssonも2000年代初頭に大会や映像作品で活躍に活躍を重ねた超ビッグネームです。コンペティションシーンを引退してからしばらくは自分の名前を冠した大会を開いて若手をプロデュースするようなこともしていました。子供の頃はアルペンだったようですね。今ではスキーはしていませんが、彼のYouTubeアカウントを見ると、びっくりするような豪邸に住んでいるようです。スケートボードの堀米もそうですが、スケボーやスノーボード、フリースキーはオリンピックを目指すルートができたのは本当に最近です。映像作品を残し、賞金大会を回り、ビッグなスポンサーがついて豪邸が建つ…そういうルートもあるというお手本のような人です。アーティストですね。
最後にJP AuclairとTom Wallischの映像です。JPは今のフリースキーを作り上げた世代の偉大なスキーヤーでした。雪崩事故で惜しくも亡くなってしまいましたが…。そのJPの作品の中でもビッグマウンテン、ビッグアイテムではなく、一番アーティスティックな映像が昼間の住宅街のクリップです。”All.I.Can”に収録されています。TomとのナイトチェイスはAll.I.Canの次に発表されたIN TO THE MINDに収録されていて、これも評価の高い作品です。
2021/11/06 追記:プレイリストの最後に、2日前に公開された"Markus Eder's The Ultimate Run - The Most Insane Ski Run Ever Imagined"を追加しました。
"What if you could link every powder turn, every rail, every cliff drop, every comp run and every kicker nailed into one ultimate run?"
もし繋げることができたら…全てのパウダー、全てのレール、全てのクリフドロップ、全ての競技の滑りと全てのキッカーをひとつの究極的な滑りに繋ぐことができたら。
1つの山の山頂から麓までが、フリーライド、エクストリーム、パーク、ストリート、ツリーラン(このプレイリストで振り返ってきたフリースキーの進化が)パートに分かれることなく集まってひとつの滑り、ひとつの作品世界として成立している、フリースキーの2021-2022シーズンの到達点とも言えるクリップですね(滑るフィールドに合わせて選曲が変わるのが、滑りのジャンルの違いを表しているのもオタク心をくすぐります)。どこでも滑る、なんでも滑る、そしてスタイリッシュに滑る…全てのスキーヤーが目指すところではないでしょうか。ちょっと感動しました。これはCandidのOne of The Those Days(2015)以来の語り継がれるクリップになりそうです。
フリースキーとは何か、という問いに一言で答えるのは難しいです。でも、スキーをしていてちょっとした段差で飛んだら面白かったから、もっと飛べるところを探してしまう。大きく飛んだらとても気持ちが良い、楽しかった。木々の間をくぐりぬけるように滑ったら爽快だった。街中にある公園を眺めながら、あそこをスキーで滑ったらどうなるんだろう、面白いかな。スキーが好きでたまらない多くの先人が「思いついてしまったから、試してみた」の積み重ねで、こんなすごい(わけのわからない)ことになっています。俺はここ飛べた!お前はどう?お前それできるの?俺もやる!そういうシンプルな気持ちが、新しい試みを競技へと進化させていくのでしょう。飛びたくなる。試したくなる。自分以外にもここを飛びたいと思う人がいる。一人で滑っても自分の限界に挑戦したい。誰かと一緒だと嬉しい。多くの人がそういう気持ちを持っていることで、スキーの形がどんどん変わっていく。
でも、難しいことはどうでもいいんです。楽しい、かっこいい、もっと滑りたい、飛びたい、足りない、もっと!そういう気持が一番だって、ここに出てくる多くのスキーヤーが言うと思います。やってみてできないから、練習するんです。楽しい、カッコいいと思う自分のやりたいスキーの形を探していくこと。それがまだこの世にないなら作ってしまいましょう。「なんでもアリ」です。スキーを楽しみましょう!
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