工場へ行こう🏭を話そうpartⅢ *加筆修正しました
毎月第1土曜ひる2時50分〜放送中 テレビ愛知「工場へ行こうpartⅡ」。
不定期で〈再現ドラマ〉に出演させてもらっています。
役者目線で、撮影の舞台裏や放送をみて気づいたことなどを話そう!と、おもむろに書き始めたところ、たくさんの方に読んでいただきました。これまでの投稿の中では、一位二位を争う閲覧数!
ありがたいことに〈20×♡〉を超えましたので、第三弾を書かせてもらいます。
前回のつづきになります。↓ご覧いただくと、分かりやすいかと思います。
番組は「動画配信サイトGYAO!」で無料配信しています。ぜひご覧ください!
それでは、お付き合いよろしくお願いします!
1. 工場へ行こうpartⅡ とは
東海エリアの工場に潜入し、時に美しく、アイデアの詰まった製造現場の裏側を紹介する番組。毎月第1土曜午後2時50分からテレビ愛知で放送中!
ナレーション:平泉成さん、坂口陽香さん
※放送をご覧になった方じゃないとわかりづらい点があるかもしれません。
※取り上げるのは「再現ドラマ」のみです。
※あくまでも個人の見解です。
テレビ愛知「工場へ行こうpartⅡ」
2020.1.11(土)15:10〜
河村電器産業編
2. あらすじ
「世界初のコンセントの開発物語」
2001年新宿・歌舞伎町で起きた雑居ビル火災。原因はコンセントに差したプラグに”ホコリ”が溜まって出火する「トラッキング現象」だった。
河村電器産業・研究開発部の水野浩司(31歳)は胸を痛めた。火災を未然に防ぐことはできないのか…。ついに、新たなコンセントの開発を決意する。
しかし、当時会社はブレーカーが生産の中心。コンセント作りの経験や設備はない。さらに、先輩からは「無理だ!やめとけ」と止められる始末。
それでも制止を振り切り、”ホコリ集め”から始めた開発であったが…
3. 実験スタート
ホコリ採取を終えたら、次は実験シーン。実験室に移動し、トラッキング現象を再現します。
まずは、スポイトで水を垂らし、ホコリを湿らせるところから。
(キッチンや冷蔵庫近くの"湿ったホコリ"を再現。この方がトラッキング現象が起きやすいんだそうです!)
そして、差し込みプラグの2つの突起の間に”湿ったホコリ”を乗せ、コンセントに差し込む。
トラッキング現象が起きるのを待つ・・・という流れ。
実は撮影直前、先に社員の方が手本を見せてくれていたんです。初トラッキング現象は想像以上の迫力でした。「バチバチバチ!」音を立てて火花が散り、やがて白い煙が発生。プラグを抜くと接触面はあっという間に真っ黒焦げ。
もはや、小さな火災。正直ビビりました。間髪をいれず、自分の番。いくら社員の方に見守られ、安全に配慮した環境での演技とはいえ、”感電するんじゃないか” ”燃えたらどうしよう” と、一抹の不安はぬぐえませんでした。電気素人ならではの不安。そのとき、監督が事前に電話で教えてくれたことを思い出しました。
「そのシーン、マジで火花が出るんだよ。怖いと思うけど実際に菅沼にやってもらうからね。水野さんも最初は相当怖かったらしい」
そうか、水野さんが感じていたのはまさにこの怖さだったのか!じゃあ、今の素直な気持ちのまま演ろう!と心に決め、リハ本(リハーサルを兼ねた本番)へ。
思うように火花が散らなかったり(湿らせたホコリが乾いてしまっていた為)して、重ねること数テイク。ついに、インパクトのあるトラッキング現象をとらえました。あれだけ怖れていたのに、くり返しているうちにだんだんと慣れてくる…。最初に感じた怖さをどう再現するかが肝でした。個人的に課題アリ。
4. 先輩の制止
ここで、新たな人物が登場。
物語における最重要人物!水野の先輩「吉田」です。演じるのは巣山プロに所属する名古屋の俳優・周藤孝樹さん。(度々、共演しています)水野が開発をはじめてまもなく、実験室にやってきて言うんです。
無理だやめておけ、と。これから開発しようとする水野にとって、キツい1発だったと思います。ただ、吉田も意地悪で言ったわけじゃありません。開発設備もノウハウもない未知のコンセントの開発。どちらかといえば、冷静な、ごもっともなアドバイスだったといえるのではないか。水野としては、無謀であることは分かっているけれど、でも、この開発には ”火災を未然に防ぐ” 意義がある..!そんな複雑な思いだったはず。役作りする上で考えました。
話は前後しますが、結局、水野は開発をやめません。吉田の制止を受けてもなお、開発にかける想いの火種は消えることなく、かたくなに燃えつづけました。
話を戻します。吉田に忠告されたとき、水野が耳を閉ざしていたかというと、きっとそうではなかったと思います。なぜなら水野にとって吉田は、尊敬する先輩だったからです。実をいうと、編集でカットされましたが、"コンセントの開発を決意した翌日、吉田へ告げにいくシーン"もありました。このことから、吉田は、胸の内を明かすことのできる信頼のおける先輩だったということがわかります。あの一言で、水野は揺れたにちがいない。このシーンを演じるにあたり、その葛藤を表現することを最大の目的としました。
芝居では、先輩が立ち去ったあと、しばらく呆然とし、でも再び机に向かう(しかなかった)ことで葛藤を表そうとしました。ところが、オンエアでは、吉田が実験室を出て、扉が閉まったところで次のカットへ移っています。扉の小窓にみえる水野が視線を落としたところ。ちょうどこのあたり。
しゃがんで机に向かうところまでは使われていなかった。でも、それが良かったんです!視線を落としたところでおわる、つまり、あえて最後まで水野の動きを見せないことで、その葛藤はより色濃く表れているように見えたからです。「水野どうする!?開発やめちゃうの…!?」走る、緊張感。オンエアをチェックしていて、編集の力を目の当たりにした瞬間でした。(視線を落とす瞬間、映像がスローになっているのもポイント!)今度、監督に意図を聞いてみようと思います ←単に、芝居が下手だったという理由でしたらスミマセン(笑)
見えない前兆を探し続けた水野。
一ヶ月後、ついに前兆を発見したのでした。
5. センサー作り
続いて、わずかな電流を感知するためのセンサー作りへ。
すぐに壁が立ちはだかります。
ここで現れたのが、またしても吉田先輩でした。
「まだやってんのか!?」
と言わんばかりの表情で登場。オンエアをみてはじめて気付きました。しかし、発せられた言葉は意外なものでした。
「おまえって、ほんと頑固だよな」
それに対し「...すみません」と、はにかむ水野。
実は、吉田は電気回路のスペシャリスト。やめておけ!と言いながらも、水野のことを気にかけていた先輩。困り果てた後輩の手助けに来てくれたんです。以後、ふたりで開発を続け・・・、
センサー作りに成功。晴れて、世界初のコンセントは完成したのでした。
6. 社内コンペ
繰り返しますが、当時、河村電器産業はブレーカーが生産の中心。コンセントは全く作っていませんでした。商品化には社内の賛同が必須だったのです。最後の難関「社内コンペ」へふたりで向かいます。
社員役は、河村電器産業の社員の皆さん(仕事の手を止め、撮影にご協力いただいてます)。社長役は名古屋の俳優 田中靖浩さん。(田中さんも工場ドラマ常連。なんども共演させていただいてます)プレゼンしている光景(ナレーション+映像)は、音は使わないということでしたが、気持ちを作るために実際にプレゼン。開発シーンをすべて撮ってきたこともあり、コンセントに対する思い入れもひとしお。自然と熱が入りました。
社員の方からは、間違ったことを言ってないかチェックされてるような鋭い視線を感じました。プレゼン直後のざわつきや3人の社員の方の演技は、とても直前にセリフを与えられたとは思えないほどのリアリティがありました。
クライマックス。「どうしてそこまでコンセントにこだわるのか!?」という質問に対して、すぐに答えられない水野。すると、それまで無言だった吉田が口を開きます。
吉田(周藤さんの演技)に気持ちがこみ上げて、涙がこぼれそうになったのはここだけの話。ぐっとこらえました。後日、監督にそのことを話すと「いや、実は俺もなんだわ」と言ってました。
社内で認められ、ついに製品化。2006年「プレトラックコンセント」として販売開始されました。今では、大手ハウスメーカーや文化財(世界遺産・薬師寺や爲三郎記念館)などで採用されるなど大ヒット商品になっています。
完
7. まとめ
再現ドラマはここで終了。放送では、その後〈水野さんご本人→会長(当時の社長)へのインタビュー〉の流れへ。最も感動する場面でした。
開発者・水野役を演らせていただき、最後までやり抜く姿に感銘を受けました。また、吉田のような"そばで見てくれている人がいることの大切さ"も実感。
長くなりましたが「工場へ行こうpartⅡ〜河村電器産業編〜」ふり返りノートはこれにて終了。最後まで読んで下さりありがとうございました!
8. 予告
さて、次回の「工場へ行こう」は、
2020年2月1日(土)15:10〜
「愛知が生んだ巨大カレーチェーン!”ココイチ”SP」
再現ドラマはカレーの「ココイチ」の誕生秘話🍛ぼくも重要な役どころで出演します。喫茶シーンは、公私ともにお世話になっている「喫茶フレンズ」で撮影。常連さんにも撮影にご協力いただき、喫茶店もリアルに再現しています。ぜひご注目ください!
テレビ愛知「工場へ行こうpartⅡ」
ナレーター:平泉成、坂口陽香
出演:菅沼翔也、周藤孝樹、田中靖浩
構成:松永英隆、宮崎祐人
撮影:福原元気
音声:宮本和也
アシスタント:榊原知昭
編集:杉浦充樹
音効:北原健太
協力:河村電器産業暁工場、河村電器産業本地第二工場、高台寺
編成:那須義元(テレビ愛知)
ディレクター(監督):村瀬敬士
プロデューサー:伊藤弘道(テレビ愛知)、仲尾義晴(ホーボーズ)
チーフプロデューサー:林雪彦(テレビ愛知)
制作協力:ホーボーズ
制作:テレビ愛知