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暗号資産と税制改正

暗号資産ビットコインが10万5千ドル(1600万円)を超えて過去最高値を
更新しました(2024年12月16日)。トランプ氏が大統領に当選した11月以降、暗号資産はビットコイン以外のアルトコインも高騰が続いています。


(1)暗号資産の税務

①暗号資産の所得
暗号資産を売却すると、譲渡益は原則として雑所得となります。暗号資産の売却による所得税の課税には3つのパターンがあります。
1)暗号資産を手放して現金を取得する。
所得金額は譲渡価額から譲渡原価等(原価+売買手数料等の必要経費)を控除した金額です。
2)暗号資産を手放して商品を購入する。
保有する暗号資産を譲渡して商品を購入したことになります。この譲渡による所得金額はその暗号資産の譲渡価額とその暗号資産の譲渡原価等との差額となります。
3)暗号資産を手放して他の暗号資産を取得する。
保有する暗号資産を他の暗号資産と交換した場合です。所得金額の算定は
暗号資産で商品を購入する場合と同じです。手放した暗号資産の譲渡価額は取得した暗号資産の時価となります。

②暗号資産の所得区分
・暗号資産取引の損益は原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。
・営利目的で継続的に行う譲渡は雑所得(業務に係る雑所得)となります。
・暗号資産取引の収入金額が年300万円を超える場合は下記になります。
→取引の帳簿書類保存がある場合は原則として事業所得
→取引の帳簿書類保存がない場合は原則として雑所得(業務に係る雑所得)

③暗号資産の必要経費
暗号資産の売却所得計算上、必要経費となるものには下記があります。
・暗号資産の譲渡原価
・暗号資産の売却手数料
・暗号資産の売却のために直接必要な支出と認められる部分の金額
インターネット等の回線利用料やパソコン等の購入費用が該当します。
インターネット等の回線料料は暗号資産取引に係る利用料とその他の利用料を明確に区分できる場合、その明確に区分された金額を必要経費に算入することができます。

暗号資産取引が事業所得又は雑所得(業務に係る雑所得)に区分される場合、その年の販売費一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた
費用も必要経費に算入することができます。

④雑所得と事業所得の損益通算
暗号資産取引が雑所得となる場合、所得金額の計算上生じた損失は他の所得と損益通算をすることはできません。事業所得となる場合は所得金額の計算上生じた損失を他の所得と損益通算することは可能となります。

(2)税制改正について

①令和7年度税制改正大綱(2024年12月20日)
暗号資産取引課税については下記が検討事項となっています。
ⅰ)上場株式等をはじめとした課税特例が設けられている他の金融資産と同等の投資家保護のための説明義務や適合性等の規制等の必要な法整備をする。
Ⅱ)取引業者等による取引内容の税務当局への報告義務を整備等をする。

②暗号資産課税についての石破総理の国会答弁(2024年12月2日)
「暗号資産による所得に20.315%税率(現行上場株式譲渡の分離課税税率)
を適用することに国民のご理解が得られるのか。(中略)丁寧な検討が必要と考えている」

現在、上場株式譲渡益には一律20.315%の申告分離課税が導入されており
譲渡損失の繰越控除もできます。FX(外国為替証拠金取引)も先物商品取引に係る申告分離課税(税率20.315%)となり、損失の繰越控除も可能です。

暗号資産取引は健全な投資か(投機的取引ではないか)、暗号資産取引が上場株式等のように投資家保護規制がなされているか、と問われれば現状では整備中と言わざるをえません。

しかしながら、日本の金融市場活性化や国際競争力強化といった観点からは
暗号資産取引の環境整備は進めていかなければなりません。
FX取引と暗号資産取引にさほどの取引健全性や投資家保護規制の差異があるとは思いません。暗号資産取引もFX取引と同様に申告分離課税(税率20.315%)と損失繰越控除を可能とする制度は必要だと考えます。







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