見出し画像

怪談を【喋る】

最近イベントに行って時々思っていたことがあった。
「特定の演者の組合せの時だけ感じられる、ある種の心地良さ」について。
うっすら感じていたが、いくつかのイベントを回っているうち、何となく思い当たることがあった。そのきっかけが【怪談喋りの会】である。

9/22㈰ネイキッドロフト横浜で開催されたイベント(10/6までアーカイブ視聴可能らしい)なのだが、怪談イベントとしてはかなり挑戦的なものであった。
企画を大雑把に説明すると「ステージ上は喫茶店のテーブル席、観客はたまたま同じ店にいた人。演者は観客を気にせずただお喋りをして、観客はそのお喋りに耳をそばだてる」といった感じ。
イベントが始まると、演者同士初めて会う人もいて「初めまして」から互いに簡単な自己紹介。流れで雑談が続くうちに、話題は徐々に怪談の方に……といった内容。

このイベントの感想としては「面白いことやったもんだなぁ」である。
通常どんな形式の怪談イベントでも、そこでは「怪談語り」が披露されるものだが、今回は「喋り」。
個人的なイメージとしては「怪談語り」が球技で例えると「サーブ・アタック・ブロック」といった感じなのに対して、
「喋り」は【会話】という流れの中で「サーブ・アタック・ブロック」は勿論だが、「ドリブル・トス・フェイント」みたいなものも、ちょこちょこ出てくる。
会話の中だから「これ話そう」という構えた感じもないし「これは○○在住の××さんから……」といった導入もない。長い一人の語りもない。
「こんな事があった。こんな話聞いた」という、怪談の面白い所をギュッとまとめて互いに投げ合うような感じ。とても楽しい。

これを見た後も、いくつか怪談イベントに行った。
そのうちフッと、最初の
「特定の演者の組合せの時だけ感じられる、ある種の心地良さ」の答えの様なもの浮かんで、一人で何となく腑に落ちた感覚があった。
私が感じた「心地良さ」は「語り」とは違う、どちらかというと【喋り・会話】の空気感に近いものだったんだと思う。
「付き合いの長さ」「相性」「キャラクター」など色々あるのだろうが、演者同士が『怪談を通してのコミュニケーション』をしている楽しい雰囲気を、私も楽しんでいたのだと思う。

前述したが、怪談イベントでは「語り」が披露される。「怪談語り」は取材・構成・話し方……などを集約した一つの芸であり、緊張感・臨場感などを体験できる素晴らしいものである。
だが、今回の「怪談喋り」も、雑談を交えた会話の中で肩の力を抜いて、コミュニケーションとしての「怪談」を楽しめる良いイベントだった。
そんなことを思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?