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小さな本音に耳を傾けていたい。どんなときも。

急がば回れ。

もう夜の11時を過ぎている。このnoteは毎日更新しているのだが今日はまだ一文字も書けていない。ピンチである。そんなときに限ってパソコンの電源が切れていて起動するまでに時間がかかる。つい舌打ちをしたくなっちゃうよ、まったく。

今日は朝から大切な私用を済ませて、午後からはコンサルティング。そのまま会食の席について、そのあとさらに、別の伴走するクライアントさんと出版について電話で話した。振り返ると、じつに充実した一日。が、なにせ執筆の時間が取れなかった。そんなときはどうしても焦りが募る。

パソコンの電源を入れる前に、キッチンに行って水を張った鍋に火をかけた。コーヒーを淹れるためだ。コンロをひねって火をつけた瞬間に思った。

「今日は時間がないからお気に入りのコーヒーをドリップする暇はないな。手間のかからない玄米珈琲にするしかないか」

そして、デスクに戻ってパソコンの前に座った。腕を組んで天井を見上げて、何を書こうか考える。そのあいだにぶくぶくと水が沸騰する音が聞こえてきた。しょうがないなぁと嫌々立ち上がりキッチンに移動する。勢いよく泡だつ鍋の水を見た瞬間に思った。

「やっぱりお気に入りのコーヒーをドリップして淹れよう」

量りを引っ張り出してマグカップを乗せる。焙煎され挽かれたコーヒー豆の分量を計り、ポットに移したお湯を丁寧に注ぐ。豆の香ばしい香りが部屋中に広がる。何度も何度も時間をかけてお湯を注ぐ。コーヒーの水滴がぽたりぽたりとマグカップに落ちる。思考が動きを潜め、指先に意識が向く。肩に力が入っていたことに気がつく。大きく深呼吸をして肩を落とした。

目の前の白い壁を眺めながら熱いコーヒーを口に含む。アルコールと食事の重たさをすっきりと洗い流してくれるようだ。また大きく深呼吸をしてからキーボードに手を置いた。

急がば回れ。

まっ白いnoteの画面に、そう文字を打ち込んだ。あとはもう、気がついたらここまでの文章が書きあがっていた。

小さな本音に耳を傾けていたい。どんなときも。

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