卒業研究に向かって
卒業まで後一年。非常に困っている。
私が属している学部は他学部とは違い、4年生からゼミに入ることができる。それは私にとってはかなり困ったことだ。
大学院進学のためには、卒業論文と大学院での研究計画書がとても大事になるのだが、何も考えていない。何も書いていない。どうしよう。
ということで、これから何を研究していくかを決めるために、様々な論文と書籍を読み、その内容をまとめ、そこからのアイディアを整理していきたいと思う。
私の研究分野は一応、日本近現代文学。
より研究したいテーマの条件を絞ってみると下記の通りになる。
⒈ 外国人(特に韓国文学を勉強した経験がある人)としてのグローバルな目線を使うことのできるテーマ
⒉ 将来、作家になりたいという自分の夢を叶えるために、単純な「文学」研究ではなく、文芸創作の観点での「作文法」を把握することのできるテーマ
私は、元々中学生の時から韓国で「文芸創作」の勉強をしていた。小説家や詩人の先生たち、また同じく作家になりたがるクラスメートと一緒に毎年作品を作り、合評をして感じたことは、韓国の文芸創作が面白くないということだった。
読書が大好きな私のおばさんは、私が書いた小説を読んでくれる一番目の読者だった。おばさんは私の小説を読むたびに、大きな声で笑いながら「面白いね」とか「スウンしか書けない斬新なことを書いたね」とかの評価をしてくれていたのだが、私が文芸創作を勉強し始めてからは、反応が急激に変わってしまった。
「文章も構造も整えられたのに、なぜか面白くない」と。
韓国の文学界はシステム化されつつある。
文壇で作家として活躍するためには、新人文学賞での受賞と登壇が必要で、その受賞や登壇をするために人々は当たり前のように大学の文芸創作学科に進学する。その文芸創作学科の実技試験に受かるために、また受験生たちは、私のように高校や中学校から文芸創作の勉強をする。
そこでは、受かるための書き方を教えてくれる。
毎年、新しく登壇した作家の短編小説を読み、何が優れていたのか、なぜ選ばれたのかを分析する。こういう小説はダメで、ああいう小説が受かるという一定の法則を見つけようとする。そして、課題として小説を書かせる。ダメだったところを指摘する。また直す。
私が言われた、ダメな作品の例としては、「夢の話は書いてはいけない」とか「愛などは書かない方が良い」とか「登場人物のセリフ、つまり鉤括弧もなるべく書いてはいけない」などがある。
このような流れで、ある程度安定した小説を作る。そして、大学の文芸創作学科の実技試験に行く。実技試験は、当日に作文のテーマを教え、限られた時間内に小説を書かせる試験が一般的であるが、実際にそうする人はほとんどいない。あらかじめ作っておいた、どんなテーマにも文字だけいくつか変えれば適用できる小説を暗記し、それをそのまま試験場で書いて提出する。
新人賞も、登壇も、上記の段階とそんなに変わらない。結局は、大学でまた「受かる小説」の書き方を教えてもらい、その通り書いて応募するのである。
なぜなら、その新人賞を審査する人も、そうやって小説家になったから。
韓国では、めっちゃくちゃの才能を持っているわけでないと、若いうちに登壇することは本当に難しい。文壇には、大体40代は基本的に超えている人ばかりいる。芸術としての文学の在り方が決められており、若い作家たちのその基準に相応しい作品を書こうと勉強している。
文学が、定型化しているように見える。
私に文芸創作を教えてくれた先生たちは、いつも私の小説が言いたいことについては興味がなかった。文章や構造を指摘することで精一杯だったため。しかも、その基準というものも明らかではない。同じ作品を出しても、ある先生はクソな作品といい、ある先生は今でも登壇できるすごい作品と評価する。
また、文壇の人々のいう、「受かる小説」や「芸術性のある文学」と「大衆が求める文学」には大きな違いがある。
純文学と大衆文学の区分をはっきりしようとする韓国では(最近はそういう傾向も徐々になくなってはいるが)、純文学としての芸術性をとても気にしている。誰もが理解できるのは文学ではない、親しみのある普通の話では満足できないというなど、純文学としての深さ、難しさ、複雑さを好む。
しかし、実際大衆が読んでいるのは、「大丈夫じゃなくても、大丈夫」などの簡単な慰め言葉が書いてあるエッセイである(本当にベストセラーにこういう系のエッセイがいっぱいある)。最近の人々は辛い、誰かにとにかく共感してもらったり、慰めてもらいたい。YouTubeを見ると何もかもが分かりやすく、面白く要約されている時代なのに、わざわざ理解しにくい、複雑で退屈な純文学など、読む暇がない人が多い。
それでは、「文芸創作」は何を教えるべきなんだろう。
新人賞で登壇できる小説の書き方?
人々に多く読まれる小説の書き方?
とにかく良い小説の書き方?
そもそも「良い小説」って何だろう。
という疑問まで至り、研究の二つの条件が生まれてきたのである。
韓国文学への反発で、日本に留学しに来てしまった私は、日本と韓国、両国が追求している文学の在り方が随分異なることに気づいた。
しかも、日本の古典文学、古文などを勉強し、時代によっても文学は変わってきたということがわかった。
文芸創作で教えるべき「良い小説」はその時代と国などによって違うんだ!
じゃあ、私は日本の近現代文学が好きだから、その当時の「良い小説」について考察してみよう〜となったのである。
とにかく、話が長くなったが、こういう背景で、グローバルな観点、そして文芸創作という学問との関わりを意識しながら、これから卒業研究に向かっての過程を記録していきたいと思う。
無事に今年が終わるまで、論文と研究計画書が完成できるように…
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