独言:【徒歩5分でアカデミー作品の世界】
映画【PERFECT DAYS】(2023年)
監督:ヴィム・ヴェンダース
第96回アカデミー賞 国際長編映画賞ノミネート。
第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門・男優賞
主演:役所広司
多少なりとも映画に関わり、曲がりなりにも、東京国際映画祭の舞台にてスピーチ経験を持つ私としては、映画鑑賞を唯一の楽しみとしている。ただ残念なことに、皆さんとは若干異なり、素直に映画を観てストーリーがどうの、役柄がどうの、という見方ではない。どこで撮影されていて、そこが撮影許可が下りるのだという確認と、その場所の狭さから、どんな機材で、どうしてこのアングルなのか、と言った、作り手側の苦労を映像から読み取ることが楽しいのだ。
そして私は観光地近くで生息していることもあり、あんなドラマも、こんなバラエティ番組も、夕方のニュースも、昼の情報コーナーも、ああ、あそこで撮ったんだ、ああ、あそこの取材のついでであの店にインタビュー行ったんだな…という視点で見てしまう。
と、個人情報はこれぐらいにして。
映画【PERFECT DAYS】である。
役所広司、演じる清掃作業員の日々を描く作品。渋谷にある公衆トイレなど、物珍しい日本の情景が話題になったが、私は、主人公・平山が暮らす設定の、昔ながらの日本的な住まいに笑ってしまった。
そこは我が家から5〜10分圏内の場所。それこそ毎週のように見ている光景が、アカデミー賞作品である。はあ、ボーッと眺めていてはいけないなぁ。この景色を見た海外の有名監督は、この風景に主人公の日常を見て、あんな狭い場所で撮影をしたのだ。
ロケ地だけではない。役所広司さんとは、過去に2度程お仕事でご一緒したことがあるが、本当に、あの場所で暮らしているように見えたし、仕事風景も本職のように感じた。普段は無口な平山、同僚がいなくなり、シフトが厳しいと感情を露わにしたシーン、桜橋を自転車で渡り、浅草の地下街で決まったモノを飲むルーティーン。本当に、ウチの近所で起きている日常を見るようだった。
「つづく」 作:スエナガ