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チェジュ航空2216便 予備報告書で新たに公表された事項
2025年01月27日、航空鉄道事故調査委員会(ARAIB) からチェジュ航空2216便の事故について予備報告書が発表されました。
これまでの報道や公式の発表に対し、新たに判明した点がいくつかあるため整理します。
※事故自体の経過についてはNHKの記事などをご覧ください。
新たに公表された事項
秒まで含む細かい時歴が公表されました。また、ゴーアラウンド中に鳥と衝突していたことが公表され、パイロットが降着装置やフラップを格納した理由が明らかになりました。さらに、両エンジンから鳥の痕跡が見つかったことで、エンジンにトラブルが発生していた可能性が高まりました。
事故の時歴
08:54:43:HL8088は管制塔と着陸のための最初の交信を実施、管制塔は滑走路01への着陸を許可
08:57:50:管制塔は鳥の活動に注意するようHL8088に助言
08:58:50:HL8088のCVRとFDRが記録停止
08:58:56:HL8088はゴーアラウンド中に鳥が衝突したとして緊急事態宣言
09:02:57:飛行機がローカライザー基部に衝突
※時刻は全て韓国標準時KST (UTC+09:00)
両エンジンに鳥の痕跡
両エンジンから羽毛と鳥の血痕が発見されました。DNA分析の結果、トモエガモのものであると特定されています。
報告書の引用と日本語訳
報告書の抜粋とDeepLによる訳文になります。
(訳文は一部 手直ししています。)
History of Flight
At 08:54:43, HL8088 first communicated for landing with the air traffic control tower of Muan International Airport. The tower cleared to land on runway 01. While HL8088 was approaching the runway, the tower advised the airplane at 08:57:50 to be cautious of bird activity. Both the CVR and FDR recordings stopped at 08:58:50.
After a few seconds, at 08:58:56 (time converted from CVR waveform), HL8088 made an emergency declaration (Mayday x 3) for a bird strike during a go-around.
【訳文】
08時54分43秒、HL8088便はムアン国際空港の管制塔と着陸のための最初の交信を行った。管制塔は滑走路01への着陸を許可した。HL8088が滑走路に近づいている間、管制塔は08:57:50に鳥の活動に注意するよう機体に助言した。CVRとFDRの記録は08:58:50に停止した。
数秒後、08:58:56(CVR波形から時間換算)、HL8088はゴーアラウンド中に鳥が衝突したとして緊急事態宣言(メーデー×3)を出した。
※”at 08:58:56(time converted from CVR waveform)”の箇所については正確な意味が読み取れないためDeepLの訳文をそのまま採用しています。
CVRは08:58:50に停止しているため、08:58:56の緊急事態宣言はCVRには記録されていません。管制塔との交信記録の波形とCVRの波形を比較することで時間を特定した可能性は考えられます。
Bird Strike
The pilots identified a group of birds while approaching runway 01, and a security camera filmed HL8088 coming close to a group of birds during a go-around. Both engines were examined, and feathers and bird blood stains were found on each. The samples were sent to specialized organizations for DNA analysis, and a domestic organization identified them as belonging to Baikal Teals.
【訳文】
パイロットは滑走路01への進入中に鳥の群れを確認し、監視カメラにはゴーアラウンド中に鳥の群れに接近するHL8088の姿が映っていた。両エンジンを調べたところ、それぞれに羽毛と鳥の血痕が見つかった。サンプルはDNA分析のために専門機関に送られ、国内の機関がトモエガモのものであると特定した。
Black Boxes
Flight data recorder (FDR) and cockpit voice recorder (CVR) were installed in HL8088. However, both recordings stopped at 08:58:50 on December 29, 2024. The airplane impacted with the embankment at 09:02:57, meaning the last 00:04:07 recordings were missing.
【訳文】
HL8088にはフライト・データ・レコーダー(FDR)とコックピット・ボイス・レコーダー(CVR)が搭載されていた。しかし、いずれの記録も2024年12月29日 08:58:50に停止した。飛行機がローカライザー基部に衝突したのは09:02:57で、最後の00:04:07の記録が欠落していることになる。
※”embankment”は「ローカライザー基部」としています。
参考:予備報告書とは
「予備報告書」は航空機事故調査の初期段階で作成される報告書で、事故の概要や調査の進行状況などの初期情報を関係者が迅速に把握できるようにするためのものです。
国際民間航空条約(通称 シカゴ条約)の付属書13「航空機事故及びインシデント調査」にて規定されており、航空事故や重大インシデント発生後 30日以内に発行するよう義務づけられています。
予備報告書はあくまで「初期段階の報告」であり、最終報告書とは異なります。最終報告書は調査が完了した後に、事故原因の詳細な分析と再発防止のための勧告を含む形で提出されます。