お金について、経済について:起業の教科書



お金について、経済について

それでは、ビジネスとは切っても切り離せない、お金について話をしていきましょう。

お金とは何なのか

まずは知っているようで知らない。
お金とは一体何なのか明らかにしていきます。


(ワーク)あなたにとってお金とは、何ですか。

質問1:あなたは「お金」というものに対してどんなイメージを持っていますか。感情的なこと、知っていること、お金にまつわるエピソードなど。思い付く物を書き出してみましょう(時間は約5分)。


お金とは、負債と資産を記録したもの

皆さんは、「お金持ちを想像してみてください」っていわれたら、金銀財宝を沢山持っている姿を想像する人も多いんじゃないでしょうか。
昔の海賊とかがお宝を発見して、金の王冠とか、ダイヤのネックレスとかに囲まれている姿。
お金を沢山持っている人=金銀財宝を持っている人
そこから、
お金=金銀財宝と似たような物
というように、想像する人が多いと思います。
知っている方でしたら「今は昔のように、お金と引き換えに金が交換できる金本位制じゃないから、みんなの想像上で価値があると思い込んでいるだけだけどね。」という方もいらっしゃるかもしれませんが、思い込みだろうが、お金そのものに価値があるということは同じですね。

でも、実はお金は、金銀財宝のように、そのものだけで価値があるものではありません。
これは金本位制であっても同じです。
その昔の、金貨、銀貨を使っていた時代でもそうです。
いつの時代でも、お金(これからは通貨と呼びましょう。取引に使えるお金のこと。)、通貨というのは取引によって発生した負債と資産を記録した記録媒体なのです。
だから、その媒体が貝だろうが、金だろうが、紙だろうが、電子データだろうが、どんな物でも構わないし、媒体が変わろうが、同じ役割を果たすのです。

ここで通貨が使われる取引について見てみましょう。

お金の起源

よく聞く俗説に、昔は直接、物と物を交換する物物交換をしていたけど、使いやすくするためにお金が使われるようになった、というのがあります。
しかし、考古学的に証拠が発見されず、未だに裏付けが取れていない考え方です。
その一方で、世界最古のお金と言われるヤップ島の大きな石貨(石のお金)には「誰々が誰に何を渡した」みたいな取引の記録が書かれています。
このような記録は他にも見付かっており、物物交換ではなく、贈与の記録から始まったと見る考え方が支持されつつあります。


あなたにもできるお金の作り方

こんな取引を見てみましょう。

サザエさんでお馴染みの三河屋さんです。
三河屋さんは、毎日御用聞きに伺って、必要な調味料を届けます。この時に、いちいちお金で精算しているのではなく、「ツケ」という形で記録しておき、一ヶ月分をまとめて清算するようにしています。
ツケというのは取引の記録ですが、サザエさんがツケという通貨を発行して、三河屋さんに渡した、とも言えます。このツケという通貨はサザエさんに対してでしか使えないので、一ヶ月分を日本円という汎用的な通貨と交換します。

もっと分かりやすく、サザエさんが大工さんだった場合を見てみましょう。

大工さんと食堂のおばちゃんとの取引です。
まず、大工さんはご飯を食べる毎に「大工券」をおばちゃんに渡します。
この「大工券」は100枚貯めると、家一軒を建ててくれるものです。
大工券は、ご飯を1回食べた。という証拠(記録)でもあります。
最終的に100枚溜めたおばちゃんは、家一軒と交換して、大工券は回収されます。
この「大工券」は大工と食堂のおばちゃんとの間でしか使えませんが、通貨と同じ働きをします。大工さんは、「大工券」というお金を発行して使ったのです。
また、大工券は引き換えに大工仕事をするという未来の約束、経済の言葉で言えば負債にあたります。お金というのは発行者にとって負債になるし、受け取り側(食堂のおばちゃん)にとっては資産になります。

ここから分かることは、大工という何かしら提供できるもの(生産能力という)があると、お金を発行することができるということ。
さらに、お金は取引をする相手が居ることで意味を持つものであり、一方にとっては負債、相手にとっては資産という両面を持つものである。ということです。

通貨とは汎用的に使えるお金のこと

この大工券を、誰とでも、どんな内容でも使えるものにしたのが通貨(日本円)になります。
日本円を相手に渡すとその分、また誰かから日本円を稼ぐ必要があります。つまり、使った分、日本円を持っている人に対して負債を負っていることになります。通貨は相手を限定しない記録なので、誰に渡しても良く、誰から稼いでも良いものです。
逆に、日本円を持っていれば、それを使って物を買ったり、サービスを受けたりできますよね。商売をしている人に対して何かをしてもらう権利を持っているわけです(資産)。大工券のように大工さんに限らず、スーパーでも、マッサージでも、何でも良いのです。
この、日本円でいろんな物が買える状態、日本円が使える状態が日本円に対する信用になります。

通貨とは、物やサービスを提供する時の記録用紙になります。経済が発展し、色んな物やサービスを取引する量や価値が上がると、必要となる通貨の量が増えます。この量に応じて通貨を発行するのが、銀行であり、親分銀行の日本銀行の役割になります。

もう一度、大工さんと食堂のおばちゃんのやり取りを見てみましょう。
この時に、大工券ではなく日本円(現金でも預金でもどちらでも構いません)を使います。
日本円は銀行でしか発行できないものなので、借入という形で大工さんは日本円を用意します。
食堂でご飯を食べたら、その分の日本円をおばちゃんに渡します。
おばちゃんは、日本円を貯めておき、家一軒分貯まったら、大工さんに渡して家を建ててもらいます。
大工さんはおばちゃんから返してもらった日本円を、借金返済という形で銀行に渡して元に戻ります。
これは、日常よく見る光景ですね。
でも、ここで指摘しておきたいのは、大工さんが負っている負債は、銀行への返済義務ではなく、食堂のおばちゃんへの建物を建てるという義務です。その記録として大工券の代わりに日本円を使っているという認識です。
銀行は通貨発行という作業をしているだけで、その手間に対して、利子という手間賃があると考えると良いでしょう。

また、よくある俗説のように、銀行は預かった預金の一部を貸出に使っているわけではありません。
大工券と同じ様に日本円も、必要に応じて(借入依頼があったとき)無から新しく作り出されます。

ここまで来ると、お金というのは日本円に拘らずに、色んな形で存在するんですよ。誰でも発行することができるんですよ。というのが分かってきます。


人間関係を清算する

ツケの応用ですが、お互いに必要とするものを生産できる人達ならこんな形もあります。

食堂のおばちゃんは、ツケ(取引の記録)で三河屋さんから調味料を買います。
三河屋さんはツケで食堂でご飯を食べます。
お互いがお互いにツケを持っている状態ですね。
そして、一ヶ月分のお互いのツケを清算し、差額だけを日本円で清算します。
この方法の良いところは、使う日本円が少なくて済むことです。
(日本円を使うには銀行から借りる必要がありますからね。)

ちなみにこのツケでの取引を無限に続ければ清算をしなくて済みます。

「人間関係を清算する」という言葉がありますが、通貨というお金で精算しない内は人間関係が続きます。持ちつ持たれつの関係でうまくやっていたが、もう離れたい。といった場合に、お金で精算するわけですね。
ツケは人間関係ができている信頼できる人としか使えません。
初めての人や信頼がない人との取引には現金が使われますよね。
逆に言えば、通貨というものがあるからこそ、全然知らない人と取引ができるのです。顔見知りや縁のある人とだけ取引をしていたのでは、経済活動は限られていたでしょう。

このようにお金と信用というのは密接に関係していて、「この人は社会が求めることを提供してくれるだろう。」という目に見えない信用を目に見える形に変えたものがお金であると言えます。

人間関係(信頼関係)とお金の種類の関係を図で表してみました。

この関係は一対のものではなく、上位互換があります。つまり、人間関係が深い場合、信用で取引をしても良いし、地域通貨でも日本円での取引ができますが、見知らぬ人とは日本円でしか取引ができないといったことです。

お金は信用の一部であると理解すると、ビジネスモデルが作れるようになります。

コラム:嫌いな人と付き合う方法

「人間関係を清算する」という話の続きですが、世の中には色んな価値観、考え方をする人がいます。1人として同じ価値観を持つ人はいないと言っても良いと思います。そんな現実社会で、嫌いな人と喧嘩をせずにうまくやっていくにはどうしたら良いのでしょうか。

そんな時は、その都度お金を使って清算してあげれば一時的な付き合いに留めることができます。この場合はお金だけじゃなくて、菓子折とか物でも良いですけどね。毎回毎回、人間関係を清算している感じです。

他にも、利害関係の対立が起きた時もお金を使うことで解決することができます。

例えば公共事業では、全体の利益を鑑みて例えば「ここに道路を作りたい。」ということがあります。しかし、道路設置予定地に住んでいる人にとっては利益なんてありません。一方的に不利益を被るだけです。そんな時に一生懸命「これは全体の利益になりますから、お互い様で我慢してください。」と言っても納得する人は少ないでしょう。
また、「全体の公益性」と言ったって、本当に公益性があるのか、どれぐらいの公益性があるのか証明することは難しい。

そんな時には、せめてお金を使った補償をすることで、喧嘩をしないで解決することを目指すことができます。お金を使わなかった場合、解決するためには暴力で戦う、権力でもって従わせる、公共事業を撤退するしか方法がなくなります。

このように、お金には多様な人が一緒に暮らすための道具という役割もあります。

コラム:神社でお賽銭をお供えするとお金が巡ってくる訳

自己啓発や心理系の話で、神社でお賽銭をお供えすると金の巡りが良くなるとか、寄付など浄財すると良いということが言われることがあります。心理的な効果や徳を積むということでも意味があると思いますが、ここでは経済的な面で解説してみたいと思います。

こんな場合を想像してみましょう。
あなたは大豆を作っている農家だとします。
そして、独自通貨(まめ)を支払った人にだけ大豆を売っています。逆にお客さんから見ると、独自通貨(まめ)を持っていなけければ買えない、というわけです。
今までの解説で、お金は生産能力に応じて自分で作ることができる物だと言ってきたので、この商売のやり方もあり得る話です。

ですが、このやり方が成り立つには、大豆を買いたいという相手が独自通貨(まめ)を持っている必要があります。
(まめ)はどうやって手に入れたら良いのでしょうか。
当然、(まめ)発行者であるあなたが最初に渡してあげる必要があります。渡す方法は、無償で渡してあげても良いし、今までの解説通り、何か商品サービスをもらう対価として渡してあげても良いです。いずれにしろ、最初に(まめ)を相手に渡すところからスタートします。

独自通貨(まめ)の話をしてきましたが、日本円など、他のお金でも同じです。
お金を稼ぎたかったら、最初に世の中にお金を渡す(使う)必要がある、ということです。

今の世の中は、すでにお金が存在している状態です。なので、最初にお金を稼ぐことからスタートすることもできますが、お金は渡すこと(=負債を負う)で生まれる感覚は持っておく必要があります。

この、最初にお金を使うという行為の一つが、神社でのお賽銭や寄付といった行為にあたります。


(続く・・・)

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