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展覧会に行くと、脳内の会話の騒がしさ3倍になる

2024年10月13日日曜日。天気は快晴。
朝の気温で判断をして長袖を着て外に出ると、昼頃には暑さで服装の選択ミスの後悔をする今日この頃。

今日は、東京都美術館で開催されている「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」に行ってきた。
展覧会が開催される半年以上前にXの告知で開催を知ってはいたものの、正確な時期は忘れていた。
たまたま、通勤途中にでっかいポスターが貼られていたので、そのポスターから正確な開催時期を把握したと言うわけだった。


そもそも、「田中一村」自体を知ったのは、中学の頃。当時使っていた美術の教科書の表紙が田中一村の《アダンの海辺》だった。

このパイナップルのような実が「アダン」ということを、今回の展覧会で初めて知った。
中学生当時は「すごい変なパイナップルの亜種だ…」と思って調べもしなかったので、そこから知識がアップデートされず、私の中では「パイナップルの亜種」という認識だった。

今回、ポスターが2枚あった。
1つは《アダンの海辺》。もう1つは《不喰芋と蘇鐵》だった。

3連休中日の午前中だったこともあって、上野は混んでいた。
特に、JR上野駅を出てすぐ右手にある国立西洋美術館は、「モネ 睡蓮のとき」が開催されていることもあって、びっくりするぐらい長蛇の列ができていた。
本当は「当日券買えたら観にいこう〜」と気軽に思っていたが、そんな生半可な気持ちで参加できるような列ではなかった。

東京都美術館入り口のすぐ横に大きな《アダンの海辺》があった。
帰り際に写真撮影できるスペースの裏側だと後から知った。

午前11時ごろに東京都美術館にたどり着いた。
エントランスから入り口に向かうエスカレーターは、途中で平らになってから再度降りるタイプ。
なんとなくだが、あの途中で平らになるエスカレーターはレア感があって少しテンションが上がる。

まだ午前中だから空いているだろうと思ったが、予測は外れて、すでに少し列ができていた。
入場まで少し待ったうえで企画展示室に入った。


ところで、唐突に話を曲げるが、私は美術館に行くと普段の3倍ぐらい脳内がうるさくなる。
普段はこんな感じである。

あ、花壇にたんぽぽ咲いている〜。そういえば、なんでたんぽぽって黄色なんだろう…後で調べよ。

※余談ですが、たんぽぽが黄色いのはカロチンと言う色素が影響しています

それが美術館に行くと、大体、以下のようなことを延々と考えている。

この絵はおそらく琳派か何かの影響を受けていそう〜〜。あ!あっちの絵は空気遠近法のやつだな。急に作品の絵柄変わったな?この時期はまだ自分のスタイルを探しているかも??形の取り方は若年期の作品だからか荒さがあるけれど、色の使い方はこの当時からすごく発達していたんだな…!お、同時期の作品によく出てくるこの植物なんだろう〜

終始こんな感じなので、気に入った絵の前ではしばらく立ち尽くしていたり、急に思い出したように流れに逆行して絵を比較しに戻ったりする。
人が少ない時は、しゃがんだり、作品を見つめ続けながら、近づいたり離れたりする。
それぞれの行動に理由はあるものの、他人から見たら奇行だろうとは思っている。

変な行動をしつつ、思考をぐるぐると回していると、たまに自分とその作品だけのイマジナリー空間に入れる時がある。

個人的に、それはとても孤独なことで、とても面白い。
作品を通して、作家が見てきたことや、経験したことを把握することはできるのだが、別に作家や作品が答えを教えてくれるわけではない。
そこにはただ一人、私の思考だけがある。
そういう、孤独な空間がとってもおもしろいと思っている。


今回もそうやって、ひとり美術館で思考を楽しんでいたら、不意に「最近、近所でスズメ見なくなったわね〜」と言う言葉が耳に飛び込んできた。
その後続けて「都内では絶滅危惧種になるかもってニュースで見たわよ〜」と。

その時、目の前にあったのは《竹雀図》と言う作品で、私は全く別のことを考えていたが、「雀=絶滅危惧種」という現代の話題に興味を惹かれた。
確かに、田中一村の時代はおそらくどこにでも雀がいただろうが、未来を考えるともしかすると「この鳥はなあに?」と言う時代がやってくるのかもしれない。

その後、普段はあまり現代よりのことは考えないのだが「ここの作品に描かれている鳥は今もいる(絶滅していない)だろうか」と考えたり、「この植物実際に家庭で育てたりできるんだろうか?」と思いを馳せたりした。
近い将来、今私たちが見知っている動植物が絶滅したら、恐竜の絵画と同じ枠に入ることもあるのか…とも思ったりした。

2つ写真撮影スペースがあったが、《不喰芋と蘇鐵》の方を記念に残した

今回、少し自分にがっかりしたこと1つが、自分の最推しが《アダンの海辺》ではなかったことだ。
中学生の頃に覚えた作品で、やっと十数年経って出会えたのにそこまで大きな感動がなかった(なかった理由は正直わからない…)。

個人的に今回一番気に入ったのは、《枇榔樹の森に赤翡翠(未完)》である。未完と書かれている通り、ほぼ色は載っておらず、薄墨で濃淡が取られた程度の完成度だ。
だが、すでに絵画として1つ完成している雰囲気があり、ここからどう色を乗せていくのか、を私自身が想像しながら見ることができた。

きっとここにある大きな葉っぱには深い緑を乗せて、手前のものは黄緑色に。スプレー状の花は白っぽくして、めしべ・おしべの部分は白に薄黄緑を混ぜるんだろうな〜と。
どこにどんな色が乗るのか、想像することができてとてもよかった。

絵自体は薄墨だが、私の中ではカラフルな色合いで再現されたことが、今回とても興味深い体験だった。

井上武吉《my sky hole 85-2 光と影》。
東京都美術館といえばこれ!と言う作品。

面白い展覧会は何度でも行きたくなる。今回は特に展示替えもあるので、10 月後半〜11月の間にもう1回お邪魔することになるだろう。
今回は休日に行ったが、人が多かったので今度は有給取って平日に行こうと思う。

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