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31 January 1995


貴方のことについてnoteを書くのははじめてかもしれない。

これは全く恋文などではないが、今日もわたしは貴方に想いを馳せて泣いている。
誰にも分からなくていい。
貴方がいない世界を嘆いて行く宛てもなく泣いているのは、今この日本でわたしだけでいいんだ。

先程、貴方の最後のインタビュー記事を読み終えた。この日のために何故か読むのを我慢していた。
失踪から30年、貴方の失踪時の年齢に自分が追いついた、読むならこのタイミングだと踏んで。

わたしが貴方の存在を知ったのは10年前くらい、高校生の頃。幼馴染4人組のバンド、マニック・ストリート・プリーチャーズ。
リッチー、貴方はそのバンドのメンバーの1人だった。

年々わたしはこのバンドのことが好きになる。年明けに幕張のフェスでマニックスを再び拝むことが出来て、案の定再び熱が入った。すぐさまバンドの伝記映画を見た。そこにはちゃんと貴方もいた。動いて、喋っている貴方を見ると未だに動揺する。生きていた人なんだ、と。わたしには貴方の外見も才能も美しすぎて、未だ夢のような人だと錯覚してしまうけれど。貴方は間違いなく、友達と一緒に笑い、音楽をやり、詩を書いて、苦悩していたひとりの若者だった。

リッチーの失踪は1995年。わたしはまだその時精子ですらなかった。わたしは貴方がいる時代を生きれなかった。
それでも貴方がいたバンド、マニックスの残された3人は今もずっと真っ直ぐに音楽を続けてくれている。間違いなく、わたしの人生で重要なバンドのひとつだ。

けれど、やっぱり貴方の詩がもう生まれないことは悲しいよ。
ジェームス、ショーン、ニッキーといっしょに歳を重ねる貴方を、見たかったなあ…
貴方は「ぶよぶよと太りたくない」と言ってたから、きっとスタイルがいい陰のあるイケオジになってたに違いない。

酒とドラッグに溺れ、自傷を繰り返し、精神病棟に入って、アメリカツアー目前にして失踪。
貴方にはバンドメンバーの幼馴染たち、心配してくれる家族がいたのに。何よりその作詞の才能があったのに。この世界から、みんなの前から消えてしまおう、となる思考は今のわたしでは到底理解できない。

失踪する数日前に受けた最後のインタビューでの貴方ときたら、まるでただの明るく無邪気な青年だ。この時からもう決めていたの?日本人女性のインタビュアーを駅まで送迎して一日中おしゃべりして、姿が見えなくなるまでホームで立ち続けて見送るなんて。それじゃ貴方、ただの素敵な人だよ!最後のインタビュアーとして招かれた塚越みどり氏の心境ときたら、察せるに察せない。「最後にリッチーにインタビューしたのが私でなければよかったのに」と、塚越氏は何十年越しかの記事で語っていた。そりゃそうだよ、こんなの背負い切れない。
失踪する前、メンバーのジェームスと共にロンドンのEmbassy Hotelに滞在していたリッチーは、なんだかとても嬉しそうな雰囲気だったという。

やっぱりずっと数日前からみんなの前から消えることを決心していたのかな。記事や伝記映画で見る限り、なんだかとてもすっきりした印象だもの。迷いはなかったのかな。どうして何も騙ることなく消えてしまったんだろう。貴方は詩人なのに!

消えてしまった貴方を想うとわりとすぐに涙が出てきてしまう。
これは一体なんの涙だろう。
貴方がいなくて寂しい、悲しい、きっとそれもあるんだろうが、
こんなに敬愛してやまない貴方を、わたしは一生理解できない という事実に泣いている気がする。

わたしは完全に貴方のビジュアルから入ったファンだ。
生まれ変われるなら、貴方の外見と詩人としての才能が欲しくてたまらないんだよ。

けれど貴方と同じ才能を授かってしまったら、わたしもいつかきっと病みに病んで、精神病棟行きかな。

クスリをやって自傷して精神病棟で過ごせば、貴方に少しでも近づけるか?
無理だな、到底したいとはならん。
貴方もやりたくてやったことじゃないのは承知だが。

貴方と同じ薔薇のタトゥーを同じ場所に彫って、もうすぐ一年経つ。貴方の失踪時期に合わせて予約したわけじゃない、全くの偶然だ。
貴方に憧れて、同じタトゥーを入れたファンなんて世界中に何人もいるだろう。ようやくわたしもその一人だ。刻んだ文字はUseless Generationではなく、Generation Terroristsだが。だってそっちの方がなんかカッコよかったから…

失踪までに至った貴方を理解できる日が来なくとも、わたしはこれからも貴方のことを知ろうとすることをやめられないんだろう。共通点探しも。
リッチー、貴方それだけの美しいビジュアルを持っておきながら全く恋愛体質じゃなかったんだね。なんとなくそれはずっとシンパシー感じてて。21歳と周りより遅れてロスト・バージンしたりとか長く人と付き合えたことないとか、なんか思ってた通りで嬉しくなっちゃった。あと喋り方めっちゃ陰キャぽくてそれもちょっと嬉しかったよ。

ROCK'N'ROLL IS OVER COMPENSATION FOR LACK OF LOVE.
NO ONE TO LOVE SO YOU TURN YOU LOVE ONTO YOURSELF.

(ロックンロールは決して満たされない愛の賠償みたいなもの。
誰も愛せる人間なんか居ないから、その愛を自分自身に向けるんだ。)

リッチーの、マニックス解散撤回文の一節。

わたしはこの言葉を一種の呪いのように背負って生きることが確定している。これからも決して満たされない愛の賠償とやらを聴きながら、自分をひたすら愛していく。

30年前に世界から姿を消した貴方の言葉たちが、いま27歳のわたしに、こんなにも突き刺さって抜けない。時を超えて、わたしと出会ってくれてありがとう。
最近、愛するものにはこんなことを言ってばかりだ。


貴方が生まれた国、ウェールズにはもう2回行った。正直もう首都カーディフ中心部は周り尽くした感あって飽きてしまった。けれど、どうせまたわたしは行くんだろう。今度は貴方が生まれた街へ。貴方の足跡を辿りに行く。そこへ誰か、わたしと同じように貴方の影を追いかけてるような人が同行してくれたらいいのだが。期待をしないでおく。ひとりでひっそり泣きながら聖地を歩くのもけっこう好きだから。
貴方がどこかにいるといいな。
わたしに取り憑いてくれたっていい。ああ、でもわたし貴方の英語聞き取れる自信ないや。

絶対貴方が歩いた街をわたしも歩くから。貴方が見た景色をわたしも絶対見に行くから。

今日も貴方の詩が乗ったロックを聴いて心を震わせてる。

今の貴方の心が穏やかだといいな。

偉大なる詩人、リッチー・エドワーズ
貴方を愛してる。

極東の、人生に迷う、27歳のファンより。


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