旅好きコミュニティの比較考察 ー海外協力隊vsPOOLOー
私は今年、2つのコミュニティに属していた。最近ずっと、その人たちと、人が作り出す集団について考えている。
ひとつはJICA海外協力隊の隊員たち。
研修や訓練で出会った同期を中心に、ジンバブエで知り合った先輩隊員や、専門家やJICAの協力隊OBも含めたい。
もう一つは私が2022年に参加したPOOLOというコミュニティの仲間たちである。
もちろん、人の集まりの性質は全く異なる。
協力隊は、それぞれの目的や思惑は異なれど、2年間を途上国での生活に捧げることを決意した人たち。
POOLOも目的は様々だけれど、少なからず旅が好きで、豊かに生きる方法を学びたいと思って受講しにきた人たち。
けれど最初に、共通点がたくさん思い浮かぶ。
どちらも、旅が好きで、フットワークが羽のように軽くて好奇心旺盛。
自分を持っている人が多く、これが好き!と大きい声で言える人たち。
ただ協調性はあんまりなくて、代わりに”自由”というキーワードがぴったり。
共通点がこんなにあるのに、圧倒的に、もっと人の性質が異なる気がする。例えば、POOLO生を二本松訓練所に突っ込んでも全く違うアウトプットになっただろうな、とか。協力隊のみんなでPOOLOの授業を受けてワークをやったら雰囲気が全然違うんだろうな、とか。
今回は、その辺りの、集団にしてみたときの人の性質の差みたいなものを私なりに考えてみたいと思う。
フィジカルな違い
集団として、まずは目に見えやすい相違点を先に整理してみよう。
・年代
POOLOは20~30代を中心 / 協力隊は同期でも70歳のおじいちゃんまで年齢層が様々(POOLOの方が圧倒的に元気!)
・職種
協力隊の方がPOOLOと比べると種々多様な職業の人がいた。教員・医療系・体育系など、専門職が多め。
・家族構成
30代以上の人たちが多いので当たり前だけれど、協力隊の方が同世代でも既婚者は多かった。2年間遠距離が定まると結婚するカップルが多いらしい。
ITへの親和性
もう少し細かい性質の方を考えると、POOLOの方が圧倒的にデジタルネイティブだと感じる。同世代で比較したとしてもだ。
POOLOはそもそもオンラインを中心としたコミュニティで、全国とはいえ東京や大阪といった都市圏で働く人が半数以上だろう。元々詳しくないという人がいたとしても、前提としてZoomといったツールに馴染みがあるし、自然にオンラインのワークを通じて詳しくなっていく。
対して、協力隊志願者はいろんな地方から集まっていて、かつ教師、看護師、理学療法士、作業療法士、獣医など、専門職が多い。そういった人たちはたぶん、都市部の会社員よりも、そんなにコンピュータを使ってこなかった人が多いんだろう。若い人であっても結構使えていなさそうでびっくりした覚えがある。こんなことを言うとアレだが、みんな当たり前のようにPayPayさえ登録していない! POOLOだったらPayPayで当たり前に色々な決済が進んでいくけれど、その辺は常識が異なる感じがした。
看護師の協力隊同期は、困ったら日本の病院にはITの担当者がいて助けてくれるので自分がわかる必要がないと言っていた。自分の専門性があれば、日本ではITはそこまでむしろ必要ではないのかもしれない。
そして途上国に行く人たちだ。そこまでITに興味がない人も多い。いや、それは悪い意味ではなく、コンピュータ技術隊員である私も、特にジンバブエに来てみて理解ができた。それ以前にやらなければならないことが死ぬほどたくさんある。
人生のフェーズの違い
POOLOの人たちは、豊かに生きるために悩み、方法を探している人たちが多かったように見えた。そのための学校であり、そのためのワークがたくさんあった。対して協力隊は、もう悩み切った後で、参加を決めてきた人たちなので、「自分が豊かになるためにやることは決まっている」というさっぱりさがあった。
POOLO3期には、POOLO期間中に悩みきって人生を変える決断をした人が多かったように見える。期間中に退職・転職を決意し、実際に行動した人がたくさんいる。中には協力隊に応募し、合格を決めた人もいて嬉しい限り。
人生を進めるにあたり、私たちは悩むフェーズと頑張るフェーズを繰り返していく。私も帰国のタイミングでまたもう一回悩むことになるだろう。私はどちらかと言うと決め切った後のタイミングだったので、悩めるPOOLO生には輝いて見えたこともあったかもしれない。けれど、それはタイミングの問題であって、わたしもまたみんなのように悩むタイミングが来るのである。
共創力の違い
ここでいう共創というのは、字の通り、誰かと共に何かを創り出す作業のことだ。これは両者の活動のテーマやフェーズが異なるからある程度仕方ない。けれど、圧倒的にPOOLO生の方が共創力は強い、というか、共創したがっていたと感じた。そういうつながりを求めた集団だった。
わたしは、自分が主催した人吉のスタディツアー企画もそうだけれど、運動会や、卒業旅行、クリエイター集団の活動を、共創の結果として見てきた。もちろんいろいろ大変そうだったけれど、結果として80人で9ヶ月活動したアウトプット量は凄まじい。まず企画が数え切れないんじゃないだろうか。後半は特に、毎週末何かしらイベントがあった気がする。
対して協力隊は、訓練中は集まっていたけれど実際の活動は一人。もうそれは、本当に一人である。病院に一人、学校に一人、役所に一人で入って、むしろ現地の言葉も通じないような人と価値を共創していくことになる。
訓練期間中も、どこか、ここからどうせ2年間離れ離れになるしなあ、という感じは全員がしていたと思う。「もう2度と会わないかもしれませんね」という会話はどの隊次の最後でもあるんじゃないだろうか。それだけ、個人ワークは濃密だが、つながりとしては希薄とも言える2ヶ月なのだ(もちろん、かなり仲良くなってこれからも関係は切れないだろうと思う人たちもたくさんいるけれど)。
POOLO生と違って、ローカルの人たちは「共創したい」とは思っていないケースが大半だろう。そういった人たちを巻き込んでやっていく必要があるので、考え方によってはPOOLOよりタフな作業になるのかもしれない。
同時期に協力隊とPOOLOで活動していたけれど、そういった「共創」に対する考え方の違いがあったように思う。
幸せになってほしい対象の違い?
これはいろんな人によく言われることなのだけれど、「協力隊って、弱い人を助けたい!みたいな、無償の愛ー!利他ー!というような人ばっかりいそう!」という印象があるらしい。それは、2年もボランティア活動にわざわざいくんだから、自分ではなくて、相手に幸せになってほしい人が多いんじゃないかということかなあと思う。実際に研修や訓練に入る前からよく聞いていて、本当にそうかな?と思っていたけれど、入って確信した。そんなことはない!笑
協力隊の人たちも、いろんなきっかけを持つ人がいる。もちろん、例えば世界のかわいそうな子どもたちになんというか、同情というか、憐憫のようなものを感じて協力隊を志す人もいるかもしれない。それに協力隊はボランティアなので、ボランティア精神の塊みたいな人しかダメなんでしょ?という人の気持ちもわからんことはない。
けれど、協力隊員の大半は「世界を見てみたい」とか、「キャリアの一部として」とか、「途上国に住むという経験をしてみたかった」という理由が一番に出てくることが多いんじゃないだろうか。もっと自分本位な理由を挙げると「募集にやりたい仕事があった(転職活動の一環として)」やら、「日本のブラックな労働から一時的に逃げたくて」なんていうのまで、協力隊を志す本音は様々なのである。
こちらにきて、活動している先輩隊員さんたちを見てより強く思う。隊員も隊員で、どちらかというと2年しかいない現地のことよりも、自分の幸せをどうやって確立するかにみんな悩んでいる。確かに、思いやりにあふれた人は多い(いわゆる、日本の若者の中でいうとみんな「いい人」には括られるんだと思う)。けれど、それはPOOLOも全く同じであって、これは相違点ではなくむしろ共通点のような気がしている。日本の若者の共通点とも言えるかもしれない。
なので、協力隊だから利他の意識が強いなんていうことは意外となくて、利己や利他のバランスを考えると、そこはPOOLO生も協力隊もあんまり変わらない気がしている。
その他思いつく違い
冒険心の違いというのは少しあるのかもしれない。意外と途上国に2年住みたい!という人はPOOLOではなかなか見かけない。POOLO生は協力隊と比べたら安定思考の人が多いのかも(協力隊はお金がかからないし安全が割と保証されるので逆に安定思考、という見方もできそうだけれど)。いや、そもそも途上国に2年住むことを冒険心と捉えるのも違うかもしれない。その辺の価値の尺度というか、どこからが冒険かというのも人によりそうだ。
また個人的には体育会系の人数比も入れておきたい。POOLOよりも圧倒的に協力隊同期の方が体育会系だった。いや実際に体育隊員がたくさんいたから当たり前なのだけれど、そうすると結構、雰囲気が変わる気がする。わたしも根っこは体育会系のノリがあるので、POOLOはゆったりしているなあと感じる時がある。POOLOは良い意味で、周りを気にしないで、自分が良いようにその場を楽しみましょう、という感じ。協力隊(同期)は楽しむなら楽しむぞー!!とみんなで突き進む感じ。お分かりいただけるだろうか、笑
終わりに
POOLOも協力隊も、便宜的にというか考察する上で括ってしまったけれど色々な人がいる。POOLOなのに協力隊にいそうだなとか、協力隊だけれどPOOLOっぽいなという人たちも多い。どちらも親和性があると思うし、お互いに活動を教え合うようなことをしたら学びが深くなりそうな気がする。
協力隊にも観光やマーケティングの職種があるし、そういったところでも今後、わたしが架け橋になって仕事を作り出せたりしたら、かなーり、面白そうではないか!
せっかく希少性の高い協力隊×POOLOという両コミュニティにいるのだから、何かできたらいいなあということは、日々意識していきたいと思っている。