透明な洗礼
以前、アーティストの友人からの台湾土産で、薄荷のように芳る香油の小瓶をもらった。
「制作の追い込みの時にこめかみに塗るといいわよ」
硝子の小瓶と似た透明感に溢れる彼女はにっこりと微笑んだ。
あれから何年か経った今年のはじめの制作中。
寝たいけどいま寝たらスケジュール的に終わるという状況に初めて陥った私は、ふいに友人の嫣然を思い出した。
どれ、ものは試しに。と、洗面台に置いてある小瓶に手を伸ばし蓋を開け、
おもむろにこめかみに一滴ずつちょんと塗る。
指先に残る液はそのまま眼窩のくぼみに沿わせて拭った。
初めは何も感じないが、暫くするとスースーとした刺激が痛いくらいに顔全体に広がりはじめ、私は悶絶した。そして目が冴えた。
こういうこと!?
やっぱりみんな毎回こんな風に追い込まれて、その度にこんな感じの方法で眠気を払ってるの??
痛い・・・でも効く!!!!
自分自身の表現に隷属する人々の、容赦ない眠気覚まし法に私は慄いた。
同時に、小瓶の蓋を開けてこの香油を使うことの出来た自分もそういう人種に一歩近づけたように思えて嬉しかった。しかし身体は大切に。
いつも見ていてくれる友人へ。