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宝石の庭

真夏のような太陽。
白い肌をじりじりと焦がす。
余り暑いので草刈りを中断すると
鏡の中に真っ赤な顔がある。
今日は一段と頑張った。

草刈りをしていると、
草の上に風が流れているのが分かる。
削り過ぎたところは裸の地面が丸見えで、
まるで砂漠のよう。
そこは風が無く、全てが乾いてしまう。

そこに気が付くまで、
全体の半分の刻を費やした。
それで、残りの半分から先は、
風が流れるように刈った。
草の背を整えるように、
柔らかい緑が残るように。

蛇の体を横たえる切株がある。
この庭には幾本もの切株がある。
八本の木の生えていたところが、
蛇の気に入りの場所になっている。
切株の根元は洞になっていて
そこにきっと彼らの寝床がある。
雀蜂が掠める。
狸や猪が毎晩下りて来る。
ここは野生の宝庫だ。

疲れた体を横たえるのは
木漏れ日の心地良い木の下が良い。
他より念入りに草を刈って、
今度そこへ敷くラグを調達して来よう。
その上へ寝転んだらきっと
素敵な夢が訪れる。
深い微睡みに落ちて
目醒めないかも知れない。
何て幸福な妄想。

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