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「鬼滅」と「ウマ娘」で大反転、アニメDVD・ブルーレイ販売が4年ぶり増加

■「日本アニメ (一般向け)」の個人向け販売が前年比61%の増加

 昨今は日本アニメの市場の大きな成長が話題になります。その市場は (一社)日本動画協会のレポートによれば、2010年から2019年まで10年連続で増加。市場は10年間で2倍近くにもなりました。
2020年は特殊な経済状況もあり前年比3.5%マイナスとなったものの、大きなトレンドは成長方向といってよさそうです。

 市場の拡大を牽引してきたのは、「動画配信」や「映画」、「海外」、「アニソンライブ」、「展示会」など。ファンがアニメと接する場所が広がっていることが分かります。

そのなかで一人負けとも言えるのが、「ビデオパッケージ(DVD・ブルーレイ)」の販売です。最も売上げが大きかった2005年に1388億円あった売上げは20年には466億円と1/3まで落ち込みました。
動画配信で最新作が手軽にみられるようになったことで、いつでも好きな作品を見るためにパッケージ所有する必要がなくなったためと指摘されています。
*日本動画協会の統計は「一般向け」と「子ども向け」の個人向け販売・レンタル店向け販売を全てを合わせている。

「このままアニメのビデオパッケージ市場は減少続けるのか」と思われていたところ、2021年に大異変が起きました。(一社)日本映像ソフト協会がまとめた2021年のビデオパッケージの年間統計調査で、アニメが大躍進をしたのです。
主な購入者がアニメファンになる「日本アニメーション(一般向け)」の個人向け販売が、413億8000万円になりました。前年金額は、257億200万円。実に61%もの増加です。増加額の大きさもありますが4年ぶりの反転が目を惹きます。

■『「鬼滅の刃」無限列車編』が100万枚突破の衝撃

突然の大幅反転はなぜ起きたのでしょうか?
答えのひとつは『鬼滅の刃』です。

オリコンランキングによれば、2021年のDVD・ブルーレイの全体の売上げランキングは『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が1位でした。マンガや映画だけでなく、「鬼滅」旋風は、ビデオパッケージでも吹き荒れました。
発売元のアニプレックスによれば、21年6月15日からの3日間のBlu‐ray、DVDの限定版・通常版を合わせた累積売上枚数は107万4170枚です。国内映画興行史上最大のヒット作だけに100万枚越えのミリオンセラーも納得です。

ちなみに商品別の売上げ枚数は以下の通りです。

 [『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』売上げの概要] 
6月15日
[限定版]ブルーレイ 268,490枚 DVD 115,499枚
[通常版]ブルーレイ 201,895枚 DVD 218,195枚   合計:804,079枚
6月16日
[限定版]ブルーレイ 30,007枚 DVD 20,751枚
[通常版]ブルーレイ 50,881枚 DVD 71,507枚  合計:173,146枚
6月17日
[限定版]ブルーレイ 12,549枚 DVD 8,609枚
[通常版]ブルーレイ 33,609枚 DVD 42,178枚  合計:96,945枚
6月15日~17日 累計:1,074,170枚

 アニメのビデオパッケージの売上げのほとんどが発売直後に集中することを前提に、この数字から『「鬼滅の刃」無限列車編』の売上げをざっと計算すると、60億円ほどでしょうか。日本映像ソフト協会と同様に売上げ枚数と小売価格(正価)をかけ合わせる方法を取っています。 
しかし計算してみると意外なことが分かります。『鬼滅の刃』だけでは20年と21年の一般向けアニメの販売金額の増加差額分156億円とはまだだいぶ差があるのです。21年の反転は、どうやら『鬼滅の刃』だけが理由でないようです。 

■伏兵『ウマ娘 プリティーダービー』の貢献

 そこでもう一度オリコンランキングに戻ってみます。ランキングの上位にテレビシリーズ『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』(『ウマ娘』)が複数連ねていることが分かります。
商品の種類が多く、シリーズの売上げ枚数が少し判りにくくはあります。実はこちらも発売元の東宝が先頃の発表した通期決算で、パッケージ販売好調として売上げ約80万枚を公表しています。その数字は『鬼滅の刃』に匹敵する規模です。アニメパッケージの数字の嵩上げに大きく貢献したことは間違いありません。

 ちなみに『ウマ娘』の人気は、商品特典にありそうです。アプリゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」のプレイが有利になるシリアルコードがついていることが購買のインセンティブになっています。
とはいえそうした映像商品の特典は他のタイトルでも少なくないですから、桁違いの売上は、昨今の『ウマ娘』のトータルの人気と言っていいのでないでしょうか。

■『鬼滅』、『ウマ娘』も越える理由はあるか

 しかしここで重要なのは、東宝の『ウマ娘』80万枚の売上げを加えても、やはり21年の増加分156億円の数字だいぶ下回りそうなことです。仮に2021年に『鬼滅の刃』、『ウマ娘』の双方がなくても、アニメパッケージの売上げは前年比でプラスになった可能性が高いのです。

 となるとビデオパッケージの継続した低減傾向とのこれまでの常識を覆します。2021年は全体として市場が反転したのでしょうか?

正直、売上げ規模がかつてに比べて小さくなっており、年ごとのバラツキが大きくなりつつあります。同時にやはり熱心なファンのコレクションとしてのDVD・ブルーレイの需要があるような気もします。さらに昨今は配信のラインナップから突然タイトルが消えることがあることから、手元で保存できるパッケージを見直す動きもあります。
これらを判断するには、2022年、23年の数字をまた注意深く見ていく必要がありそうです。
*日本映像ソフト協会の「子供向け(アニメーション)」は9歳以下の子供を対象としていることが目安になっている。「一般向け」はそれ以外を指す。

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