筋道を立てて考える
「ロジカルシンキング」という言葉を初めて聞かれた人もいると思いますので、ここで改めて定義します。
仕事に役立たせるための「ロジカルシンキング」とは、
筋道を立てて『考える』こと
です。筋道を立てると言うのは、当然スタート(原因)からゴール(現象)まで順序立てることを指します。すなわち結果に対する真因あるいは根拠を明確にするということです。
ちなみに、「筋道を立てて考える」というのは、「物事の道理を立てて考えること」もしくは「順序立てて物事を考えていくこと」です。
「私は考える力が不足している」ということを結論にして「筋道を立てて考える」と、どのようになるのかを説明したのが次のとおりです。
下段(〇)の並びは、上段(×)の並びに比べると「筋」が通っています。
きちんと順序立てて考えられているからです。
まさしく、これが「ロジカルシンキング」です。
ロジカルシンキングと言うとどうしても"理系"的とか、"数学"的と言う印象を持たれがちですが、そもそも結果から時系列に原因に至るまでを説明する文章能力の方がよほど重要で、この考え方そのものは文系/理系の差はまったくありません。
「数学的」と呼ばれているのは、まず答えが先にありきでそこから逆算的に原因(理由)に筋道を通して辿り着く考え方が、算数よりも数学の考え方に近いから…というだけで、数学的な知見が必要と言うわけではありません。むしろ文章構成能力…文系の能力の方がよほど大事だったりします。
まずはしっかり『なぜならば』と考えていくことで、考えに一本の「筋」が通っていきましょう。
そもそも、ビジネスパーソンとして社会に出て企業に属し、対企業間でビジネスを展開するためにはまず次のことを常識として再認識しなくてはなりません。
①「考えること」はビジネスパーソンには絶対になくてはならない能力
②一般的に「ビジネス思考の土台」はすべて論理的でなければ通用しない
③仕事に役立たせるための「論理」とは筋道を立てて"考える"こと
この3点です。
たとえば、トラブルや失敗を犯した際に『なぜなぜ分析』を要求されることがありますが、この『なぜなぜ分析』はロジカルシンキング手法の結晶の1つです。
「××は〇〇である」という「結論や仮説」があった場合、なぜそうなのかを探るために
〈なぜならば〉「Aだから」
と考えてつなぐことができます。
つまり、
「×× はOOである」
↓ 〈なぜならば〉
「Aだから」
という感じです。
先ほどはこの次にも〈なぜならば〉を「直列的に掘り下げる」ことをしましたが、実はそれは初心者には結構難しいのです。トヨタなどでは5N分析として5階層まで掘り下げることを要求しますが、こうした『なぜなぜ分析』が苦手で苦戦する人は普段から論理的に考えを整理し、列挙すると言う過程を踏んでいないと言うことがわかります。
というのも〈なぜならば〉を考えることに慣れていない方は、1個目の〈なぜならば〉で結構頭を使ってしまうからです。ですから、はじめのうちは思いついた〈なぜならば〉を下図のように「並列的にいくつも列準」してみます。
「並列的」なら初心者でもどんどんできます。
つまり「直列的」に
「×× はOOである」
↓ 〈なぜならば〉
「Aだから」
↓ 〈なぜならば〉
「Bだから」
↓ 〈なぜならば〉
「Cだから」
と掘り下げるのではなく、
「×× はOOである」
↓ 〈なぜならば〉
「Aだから」「Bだから」「Cだから」
という感じです。最初は「並列的に列挙」した方が簡単ですから、どんどん列挙してみましょう。
先の例を用いるならこんな感じですね。
お客さまに提出できるようなものではありませんが、初心者の訓練ならばこの程度で十分です。先ほどと同じ
【結論】「私は考える力が不足している」
をスタートにして、〈なぜならば〉の要素を並列的に列挙しています。掘り下げなくていいのですから、ただのブレストだと思えば初心者でもどんどんできます。
中にはこうした手法を身につけることにメリットを感じない人もいます。
しかし、実際にはどうでしょうか。
見積りや作業の進め方をお客さまに説明し、納得していただく
お叱りを受けた時に謝罪しに行き、今後の対策案で安心していただく
問題が起きて、今後は大丈夫であることを証明しにうかがう
等を経験した方ならばわかると思いますが、なかなかお客さまが納得を示してくださらないケースはなかったでしょうか。
それは、お客さまが
「何を情報として提供してほしがっているのか」
「どんな流れで説明されることを求めているのか」
などを把握しようとしていないからです。
よく「人は感情で生きるもの」「人は感情で考える」と言われたりもしますが、ビジネスにおいてはその限りではありません。相手も責任を負っているわけですから感情よりも、理解や納得が得られる根拠を提示されないと話を先に進められません。
また一般的に報告などでは「結論を手短に話せ」などと言われますが、何事もない普通の報告ならばまだしも、この先の判断や決断のために必要な情報の場合、結論だけでなく結論に至った経緯まで知っておかなくてはならないケースも多々あります。
特にトラブルなどの場合は、そのまま見過ごすとお客さま側の方で大きな損失になることもあって、担当の方は自分の人生もかかっている可能性があるのです。生半可な説明で納得できないような情報提供では、許してくれるはずもありません。
そんな時に、
結論(現象)から、遡って原因までの流れを、
筋が通った考えに則って説明される
と言うことがどれほど重要かがわかります。だから、ロジカルシンキングは説得力が高いとも言われているのです。「苦手なんで…」と言って避けていい能力ではなかったりするわけです。