アラフォー上海留学日記【130日目】

7/4 金

修了の式典に向かう途中で喜庆に会った。いっしょにホールに入り、クラスの名前が書かれたところへ着席。彼女は日曜日に帰国するので、帰国準備の真っ最中。荷物がたくさんあって困ってる…と写真を見せてくれた。たしかにかなりの量である。なんの荷物がそんなに多いの? 服?と聞いたら、恥ずかしそうに、お菓子!と言う。かわいい。
式典は、留学生たちの歌あり踊りありスピーチありのなごやかなもの。北朝鮮の学生がスピーチしていたのには少しおどろいた。

優秀な先生を表彰する段があり、我らが张老师が代表してスピーチをしてくれた。みなさん、テストは好きですか?とコールアンドレスポンスのようなことをしたあと、みなさんにひとつ問題を出します。問題を聞いたあと、2分以内で解答すること。開始。と、テストのときの音声をまねてスピーチを始めたので、みんな爆笑。ユーモアたっぷりのスピーチ、さすがである。
各クラスの代表が修了証明書をもらいに壇上に上がる。私たちの班は仙一が代表だった。仙一~!とみんなで手を振って歓声を送り、自分たちのクラスというチーム感がいつの間にかできていたのが、なんだかうれしい。
戻ってきた仙一が先生の代わりに修了証明書を配ってくれたので、みんなで仙一老师に群がった。最後に先生たちと写真を撮っていよいよお別れだ。

海菜といっしょに帰ろうとすると、仙一がかけよってきた。夏休み中にまた会おうね。うんうん、連絡するね!とまだ上海にいる3人で約束。承泫と喜庆は韓国に戻ったら大学に復帰し、来年2月に卒業だという。もう二度と会うことはないのかもしれないけど、世界のどこかで元気でね。それぞれの道が4カ月間交差したことをうれしく思う。再见!

宿舎に戻り、昨日の夕飯の残りを食べて洗濯をする。あまりにふつうに生活していたため、廊下で会った掃除の阿姨に、あなたはいつ国に帰るの?と聞かれる。まだまだ私のパーティーは終わらないのだ。あと約1ヵ月、夏期講習というアディショナルタイムがある。
今日も友達どうしで荷物をまとめて運び出す子たちの声で宿舎はにぎやかだ。笑い声のあと、バイバイ~、アンニョン~! 我爱你!という声が聞こえてから静かになった。姿は見えないけど、去る人の背中にたぶんずっと手を振っているであろう子たちのことを想像し、胸がきゅっとした。

夏期講習の費用と、帰国までの宿舎代を支払う。合計約20万円。重課金。修了きぶんで完全に勉強のやる気がゼロ状態になっているが、金額を見ると、来週からまたがんばらねばという気がわいてくる。モチベーションのためには課金、だいじ。

2時間前に干した洗濯物はカラカラに乾いていた。今日は39度、日中に出かけるのは危険。先日入手した本にあった年画のページをPDF化して、中国の民俗文化を研究している作家さんに送り、さて今日はなにをしようか。
そういえばGさんが週末にラッパーTさんのライブがあるって言ってたっけ。Gさんに連絡してみると、今日0時から以前行ったことのある定西路のクラブバーでライブがあるとのこと。Gさんは行けるかわからないとのことだが、ひとりでお邪魔してみるか。

ちょっと出かけたいきぶんでもあるので、太陽の威力が収まるのを待ってから部屋を出た。窓の外にキジトラがやってきたのを見て、だいぶ気温も下がっているのかと思いきや35度。まだまだ暑い。キジトラも熱中症に気を付けてね。

地下鉄で衡山路にある嘉诚家常菜へ。西日が射し込む延安西路站の駅構内は、まるでサウナ、地獄だ。キンキンに冷えた地下鉄に救われる。衡山路站で下車し、永嘉路を歩く。ここははじめて来た。レコード屋、カフェ、雑貨屋などおもしろそうでしゃれた店がちらほらあるなか、便座が落ちていた。

お目当ての嘉诚家常菜は、この瀟洒なエリアにまったく似つかわしくない丸ゴシックの袋文字が目印。なぜこのフォントと使おうと思ったのか。お店には、街の人に昔から愛されてきたであろう雰囲気がただよっており、まだ18時だというのに、中では円卓でにぎやかに食事をしている人たちが。

とりあえずビールをもらう。プリントが少しはげた青島のコップがいい感じだ。メニューは容赦のない漢字の羅列で、中国に慣れてきたとはいえ外国人にはちと厳しいものがある。なににする?とおばちゃんがすぐオーダーをとりにくるのがまた容赦ない。おすすめを聞いて、椒盐排条と腐乳空心菜を頼んだ。胡椒がきいた豚肉の唐揚げ、うまい。夏バテ中なので揚げ物はちょっとキツイかと思いきや、意外と脂っこくなく、ビールが進む味。腐乳の発酵みのある深い味も好きなんだ。
お会計をして2階にあるトイレに入ると、生活空間丸出しだった。ここに住んでるのか。それにしても、客が土足で入ったところで体を洗うの嫌じゃないのかな。

911系統のバスで帰る。バス停までの途中にあった骨董屋がいい感じであった。バス待ちのあいだに死ぬほど蚊に刺され、これからの季節は地下鉄移動のほうがいいかもしれないとちょっと後悔。
安順路のスーパーで乾麺のそばと飲みものを買う。黄身の塩漬けなるものを発見。これは酒に合いそう。レジはいつもの坊主のお姉ちゃんで、例のごとく会員じゃないですと言うとチッと舌打ちしてめんどくさそうに会計してくれた。もう慣れたし、やさしいところがあるのも知っているのでこの接客態度もまったく気にならない。

シンさんと相互学習をしている途中で、Gさんからやっぱりライブに行くとの連絡が入った。23時に定西路で待ち合わせ、軽く一杯飲んでから向かうことに。クラフトビールの店に入る。おじさんがやってる店の割に、パッケージデザインがかわいい。袋で持って帰れるのもアツい。スイカのクラフトビールを頼んでみたら、めっちゃウリの風味だった。
Gさんの婚活写真は本日からサイト内で公開されるとのこと。とりあえず3か月やる予定だが、成果よりストレスのほうが大きいと感じた瞬間にやめるとのこと。クレバーである。
また、最近は自分の全エネルギーのなかから仕事へ割く分量を減らし、そのぶん遊んだり自己投資したりすることに決めたそうである。今日も疲れてはいるから来るかどうか迷ったけど、遊ぶ方向に舵を切ったからにはということで来ました! 夜に身支度をしている自分にすごくワクワクしましたね、あ~夜遊びに出かけるんだと思って、とうれしそう。

いま学校はお別れのシーズンなので、みんな国に帰っちゃって取り残されたきぶんだ、という話をすると、Gさんが、そうなんですよ!!と力説しだした。仲良くなったと思ったらみんな帰っちゃう、その繰り返しですよ、もう! スダさんも来月帰っちゃうんでしょ!?と言う。上海にいる3年間、ほんとうにその繰り返しだったらしく、去るほうも寂しいだろうけど、去られたほうの寂寞感はより大きいだろうと思う。

金曜のC's barは大盛り上がりで、中国ポップスDJがとても冴えている。バーエリアではコケ―ジャンがサッカーの試合を見ている。ジムビームソーダ割り45元をぱかぱか飲み、音楽に身をゆだねてとてもよいきぶん。Gさんもとても楽しそうなので、いかがわしい背景で酒を飲むGさんの写真を撮って、これ婚活写真にしなよとシェアした。

Tさんのライブもとてもよかった。日本語、中国語、英語でリリックを繰り広げ、ブラック会社!でコールアンドレスポンスが起きたのがアツい。”晴れの日は畑を耕し 雨の日には読書を楽しみ 一日地道に汗流し 繰り返す毎日の営み そんな人に私はなりたい”。生活ラップの実直さがかっこいい。

目の前で踊りまくっている人が私のほうにかたむいたときに、手を伸ばして避けてくれたストリート系メガネヒゲ中国人男性にぐっときた。いるじゃん、イケてる中華男子! 喫煙所で会った際に少しおしゃべりしてWeChatを交換。台湾のアート系の会社の顧問をやっているという。もう一度言う、いるじゃん、イケてる中華男子!

順調に酔っぱらってきたGさんが、こんなに楽しいの久しぶり、今までどれだけ自分を抑圧してきたんだろう…と繰り返しており、慣れない異国で、なにより仕事優先でがんばってきたんだなあとその3年間を想像して胸がぎゅっとした。ほんとうは音楽が好きなんだと思い出したし、こうやってお酒を飲んで顔を近づけて会話をしたりするのが楽しすぎる、こんな感覚忘れてたよう…と今にも泣きだしそうな声で言う。思い出せてよかったよ。
店内の客が徐々に減り始め、ここでも取り残されるきぶんを味わうのは嫌ですねということで2時過ぎに店を出た。タクシーに乗るGさんを見送り、夜中の散歩きぶんで帰舎。いい夜だった。

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