忘れるために書く

感情はナマモノだ。
そこでその形のまま保存しないと、腐敗して形を変え、最後には地球に還る。


人と比べてどうかは知らないけど、よく「書く」方だと思う。

note、メモ、Twitter、instagram、手帳、コピー用紙。
ただ媒体が違うだけに見えるけど、目的も違う。

人に見られるSNSはやっぱり推敲するし、どのSNSかで温度も変わる。改行の回数や使う言葉、テーマ、全部違う。世界に向けて話すという意味では、責任みたいなものは生まれると思うから、慎重になる。

手帳やコピー用紙といった物理的に「書く」ときは、覚えておきたい時が多い。忘れちゃダメな予定、議事録、暗記したいこと、買い物リスト。
これは多分私が聞く暗記より読む書く暗記が向いているという性質から。


私にとって、そのふたつの間みたいなところにあるのが、noteやSNSの下書き。

下書きは、感覚的にはクラウドに似ていて、ここに書くことで一旦自分からは離れ、社会にポイした感じになる。でも、誰かに見せてもいいし見せなくてもいい。
「ワンクリックで誰かに見せることができる」という状況で、「誰かに聞いてほしい」みたいな感覚が薄れたりする。
感覚の話ばかりですみません。

実際には誰にも見せないので、本当に何を書いたっていい。言葉遣いが間違っていても、バキューンが入っちゃうような単語があっても、身バレしちゃうようなことを書いても、問題ない。ただ、その時何が起こったのか、何を思ったのか、書きたいことを書けばいい。

私が下書きに書くときに気をつけている唯一のことは、なるべく臨場感をもつことだけ。一番最初に頭に浮かんだ単語を書くようにしているし、語尾も話し言葉に近い。多分、AIBOとか飼っていたらこうやって話しかけるかな。aibo久しぶりに調べたらカラフルになってるじゃないか。
(お気づきの方もいるかもしれませんが、私がイメージしたのは昔のメカっぽいAIBOで、調べたら2018年に表記がaiboに変わっているらしいので表記を分けました。ここに「書く」ときはこういうこともしたりします。)

そうやって下書きに感情を冷凍保存しておいて、大抵はすっかり忘れていて、次に何か投稿しようとしたときに見つけて開く。そうすると意外なアイディアや発見があったりする。ないときもあるけど。
人間は怖くて面白いもので、自分で手を動かさずにポチポチと書いたものだったら、1ヶ月前のことをあたかも初見のように読める。私だけだったら恥ずかしい。


今日もこの記事を書く前にこんな下書きを見つけ、これならまだ社会に出せるか?と思ったので紹介します。百聞は一見にしかずなので。
(下書きなのに世に放出している矛盾は忘れてください。)

書きたいことがある気がする日に限ってパソコンは充電切れだし。
足を椅子に乗っけて背中を丸めてキーボードを打つ。

「せっかく買ったんだからパソコンスタンド使いなよ」と言ってくれる優しいあの人は、私が薬を飲むところを動物園の客みたいにじっと見てから「コーヒーで飲まないの」「炭酸で飲まないでね」「でかい薬〜」「今回なんか多くない?」と毎度批評する。
頓服多く飲んでるのバレてるし。やめてよね。サイゼの間違い探しとか向いてるよ、あ、これ皮肉ね。

こんな時間に山盛りのアイスクリーム(概念)を食べたくなるの、ダイエット中すぎるし。

機嫌って語尾に出るよね。

誰か頭の回転を止めてください。ジムに行っても、トレッドミルでドラマを見ていても、マッチョの生態や「なんでジムって発電しないんだろう?」などを猛スピードで考えてしまって、体感時間が4倍なんです(当社比)1時間経った?と思ってタイマーを見ると15分、歪みすぎ。

液晶を見すぎて目も頭もくす玉みたいになってしまう〜とふざけたトーンのまま湯船に突っ込んだ。時代が時代ならお風呂のこと崇めてたと思う。サウナも。

冷凍保存とはいえ、解凍したら品質が落ちるのはもちろんだけど、まだ味はする。カレーのじゃがいもって解凍したら急に不味い。

これだけ適当に綴っておくことで、「あ〜このころ動物園行ったから影響受けてるんだっけ」とか、「くす玉ってどういうこと?」とか、思い出す。

自分にしかわからない言葉でも、自分にわかれば大丈夫だから。

自分にわからない時があっても、それはそれで面白いから。


感情は自分の胸だけに留めておくにはあまりにナマモノ。
脳の容量を取られるし、腐敗して形を変え臭ってきたりする。

深夜布団で頭がぐるぐると音を立て始めたら、大抵下書き画面を開く。
頭でこれ以上考えないように、クラウドに取り出す。

下書きに書くとき、忘れるために書いている。
でも、いつでも取り出して眺められるように。

なにかを言葉にすることは、なにかを言葉にしないこと。残さないことは、いつか忘れていく。はっきり言語化すると、ファインダーの内外が鮮明になって、覚えていたかったことも忘れてしまう。
だから、できるだけほかほかの感情を急速冷凍する。

「今どう思いましたか?」「どうでしたか?」と自分の中のキャスターが聞いてくるのに耳を塞いで走り抜け、自分の中のAIBOに話しかける。間違っても「楽しかったです」なんて笑ってやらない、と思いながら。

言葉にできない熱みたいな、湯気みたいなものを頑張ってラップの中に閉じ込めて冷凍庫にぶち込む。


下書きにはそんな意地がこもっていて、あとで見返すと必死で笑えます。

日常のエンタメに困っている方は、ぜひ。

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