【須田亜香里さんの軌跡】◆M36 未完成だからこそ
須田亜香里さんは,2021年10月31日,30歳の誕生日を迎えました。
須田さんは,30歳になった直後,新しい挑戦として,ギター弾き語りによるソロライブを開催しました。
もともと,須田さんがギターを始めたきっかけは,同じ2021年3月,「須田亜香里の部屋」(FM AICHI)の放送100回を記念して,バンド「EARNIE FROGs」のメンバー・テラオさんから,ギターがプレゼントされたことでした。須田さんは,ギターにはまり,趣味として楽しみ始めました。
ところが,話はだんだんと大きくなり,ギターを始めてわずか半年後,同じ年の11月22日にはソロライブ「Akari Suda sing with the guitar~花車と六弦琴~」が東京・渋谷のライブハウスで開催されました。
須田さんは,このコンサートのために,ギターのレッスンだけではなく,ゼストスクール(SKE48の運営会社が主宰する芸能スクール)でボーカルのレッスンも受け,自分の言葉がファンに伝わるよう努力しました。その努力は実り,ライブに参加していた放送作家・山田美保子さんは,コラムにこう書いてくれました。【1】
「彼女の歌声を聞いて私は驚いた。日頃から「歌は苦手」と言っている須田だが,ギターの弾き語りにぴったりな歌声ではないか。涼やかで軽やかで爽やか。しかも,歌詞の全てが観客の耳に正確に届く。」
須田さんの努力を知って,スタッフも須田さんをしっかりサポートしました。たとえば、このライブを担当したSKE48劇場の音響担当のスタッフは、須田さん専用の金属アレルギー対応マイクを名古屋から渋谷まで運んできてくれました。【2】
もちろん,須田さんもライブを盛り上げるために,いつものように最大限の努力をしました。須田さんは、リハーサルや準備を終えた開場前、来場したファン一人一人の席に、メッセージカードとガーベラを自分自身の手でセットしました【3】。また,スタッフや関係者に対するプレゼントや差し入れを自分で買って来るという気遣いを見せました。【4】
そして,須田さんは,このライブのMCで,30歳のリアルな気持ちを涙ながらに語りました。
「ファンの皆さんには前から言っているんですけど…。私はグループを卒業する勇気がなくて悩んでいて、発表した時は勇気を持てたと喜んでほしいと思ってるくらいで…。アイドルとしての自分を、まっすぐ応援してくださるファンの皆さんに感謝でいっぱいですし、その分グループを抜けたらどうなっちゃうんだろうって…。30歳、家族に彼氏の1人も紹介したことがなくて、してみたいし…。結婚もしてみたいし…。卒業しなきゃという思いと、できないという思いがぐちゃぐちゃになっているのが、今のリアルです」。
こうして,このソロライブは成功に終わりました。しかし,話はこれで終わりではありません。
この年の12月に入り,「”あかり”も”のぞみ”も30周年」のキャッチフレーズのもと,「須田亜香里ソロライブ名古屋公演 supported by JR東海」が発表されました。会場は,名古屋随一の高級ホテルとして知られる名古屋マリオットアソシアホテル。宣伝には東京駅と名古屋駅のデジタルサイネージが使われました。
SKE48に松井珠理奈さん・松井玲奈さんが在籍していたころ、二人のイニシャルが「J」と「R」だったこともあり、古くからのSKEファンは、JR東海とSKE48のコラボレーションを夢見ていました。須田さんは、その夢もかなえてくれるか,とファンは沸きたちました。
ところが,良いことばかりではありませんでした。須田さんは,ソロライブの1週間前(2022年1月),不幸にも新型コロナウイルス感染症に感染してしまい,ソロライブは中止となりました。
ファンも残念がりましたが,一番悔しかったのは須田さんだったでしょう。須田さんは,感染症から回復した直後の2月,インスタライブでギター弾き語りの「手紙のこと」(SKE48)という歌を配信しました。感染症治療期間に覚えたというギターのアルペジオを使いながら,須田さんは歌います。
「きっと出さないこの手紙
何時間もまとまらない書き散らかしの恋
気持ちなんてどうやっても言い表せないよ」
しかし,またもや神様は須田さんを見捨てませんでした,2022年5月,中止になったソロライブ名古屋公演の「延期公演」開催が発表されました。
そして迎えたライブ当日、1曲目の「恋を語る詩人になれなくて」に続き、須田さんはファンとの絆を確かめるように、AKB48選抜総選挙で初選抜入りしたときのナンバー「恋するフォーチュンクッキー」をギター弾き語りバージョンで披露しました。
また、機材トラブルに見舞われてしまいましたが、笑顔を絶やさずトークでその場をつなぎ、「無意識の色」や「今の私じゃダメなんだ」などを歌い上げ、さらにAKB48選抜総選挙2位のときの「センチメンタルトレイン」を披露しました。それはまるで、須田さんの成長の過程を振り返るかのようでした。
そして、須田さんは、「私って本当にいつまでたっても未完成で。でも、未完成だからこそみんなが見守っていてくれるから、自分の人生は嫌いじゃないです」と語り、最後に、ファンへのメッセージのように、2月のインスタライブでも歌った「手紙のこと」を歌い上げました。
こうして、須田さんのソロライブは、2回とも成功に終わりました。
ライブ終了後、須田さんは、ツイート【5】で、
「歌いたい曲を並べた時に浮かび上がったテーマがファンの方と私の関係
“君と僕”
実は会場、終演時のBGMもタイトルに“you”と“me”が入るJAZZ。
席のお手紙のインクの色はラストの曲の通り。
楽曲と共にJR東海さんにお世話になってきた道のりが浮かび上がるのも感動」
と、ファン一人一人との絆を大切にするポリシーを形にしたことを明らかにしました。
須田さんはかつて、「30歳になったら生きていない」「他人ができることを自分ができない、ということが許せない、と思っていた」と言いました。でも、30歳を迎えたこの日の須田さんは、「未完成である自分」を許して生きること、アイドルでいることを楽しんでいるように見えました。私は、そうした須田さんの心の変化をうれしく思います。
それに、「未完成」ということは、まだまだ進化が続くということでもあります。
ところで、須田さんは、このライブに両親とお兄さんを招待していました。なぜなら、須田さんは、この日までに既に、ある重大な決断をしていたからです。
(続く)
<ソースノート>
【1】山田美保子「須田亜香里の新たな”武器”はギター ソロライブで「歌声との相性は抜群」評」(NEWSポストセブン・2021/11/25掲載)https://www.news-postseven.com/archives/20211125_1709200.html
【2】https://twitter.com/dasuwaikaa/status/1463138331324461057?s=20
【3】https://twitter.com/ske48official/status/1463115420089552902?s=20
【4】須田さんにギターのレッスンをした湯浅順司さんのツイートより
https://twitter.com/yuasajunji/status/1463018597693804546?s=20
なお、このライブへの須田さん自身の思いは、https://ameblo.jp/ske48official/entry-12711180889.html でも読めます。
【5】
https://mobile.twitter.com/dasuwaikaa/status/1528225428766433280