17:15、静寂な光
花粉が鼻や目をざわつかせる季節だ。
だが、何も花粉ばかりが季節の便りではない。
冬の終わりが訪れてから、日照時間が長くなっている。
冬との別れは何だかセンチメンタルになるが、日照時間が長くなったお蔭で私は17:15に密かにあることを楽しむことができる。
密かな楽しみ、それは……
「灯りを消して入浴すること」だ。
人工的な光は「42℃」を示す湯沸かし器だけ。
あとは、別れを告げる太陽の寂しげな光。
自分の体も見えるか見えないか、それくらいの淡い光。
住宅街の喧騒も、この時間は大人しい。
お湯を水面に滴らせた時の音が、いつもより大きく聞こえる。
この空間に私は結構安心する。
ほの暗さと静けさ
なぜこの空間に安心するのか、ほんの少しだけ考えた。
行き着いた自分なりの答えは「ほの暗さと静けさ」にあると思った。「ほの暗さと静けさ」によって、入ってくる情報が制限される。制限されることによって、頭の中にもパーソナルスペースができるんじゃないかな。
多分、日頃生活する上で目から耳から勝手に入ってくる情報が、多すぎるんだ。
私はきっと、「17:15の入浴」くらいの情報量で調度良いんだ。