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香水

私は「女子らしさ」に疎い。
これには言い訳がある。

メイクやファッションに初めて興味を持ったのは、確か14歳の時だったと思う。
祖母にファッション雑誌を買ってもらって、そこに載っていたキャンメイクのリップティント。
人生初めてのメイク道具はそれだった。

当時のティントは、今の韓国コスメのような綺麗に仕上がるものではなく、ただ文字通り、唇の皮に染み込ませるという斬新な代物。

目立たないようにと気をつけて少ししか塗っていないつもりだったのに、すぐ母にバレた。
そこで一言。

「うわ、ゆずが色気づいてる!」

この言葉が何故か、私の心に重く沈み込んだ。

その後も、少し女の子らしい服を選んで着てみたり、クラスの打ち上げに行くのにヘアアレンジをしてみたり、肌荒れに悩んだりする度に両親に言われた、

「色気づいてる!」

という言葉。これがなんだかすごく嫌で、段々と「女の子らしいもの」に興味がないふりをするようになった。



15歳の夏、花火大会でたまたま会ったクラスメイトにネイルを褒めてもらって嬉しかったこと、今でもよく覚えている。

「ネイル自分でやったの?可愛い」
ただそれだけの言葉。
今でも、よく覚えている。

私も「可愛く」していいんだ。
こうやって「可愛く」したいと思ってしたことに気付いて、真正面から「可愛い」と言ってくれる人がいるんだ、と。

彼にとってはきっと何でもない一言で、ただのお世辞だったかもしれないけれど、あの時あの一言に、私はとても救われた。


その人は当時、いつもハンドクリームを持ち歩いていた。
なんとなく覚えている、ラベンダーとベルガモットの香り。
席が近くなると、いつもふわっと香っていたのが印象的だった。
今でも街中であの香りに出会うと、ふとその人のことを思い出すことがある。

香りって、すごく人の記憶と結びつくように思う。
ハンドクリームの香りか、柔軟剤か、はたまたシャンプーか。

その人は、ラベンダーのような人だった。

そう感じたのはもしかしたら、彼の内面よりも先に、使っているハンドクリームの香りを知っていたからかもしれないけれど。

ラベンダーの香りがよく似合う、優しくて、穏やかで、儚い人

香りは私にとって、少しでも心が近付いた人に関する記憶の引き出しの鍵で、
言い回しは違えど、香りに対して同じように感じている人はたくさんいると思う。

私は人と香りを結びつけがちで、その人の他にも、キンモクセイの香りを感じると推しのことを思い出すし、銀杏の香りを感じると中学を思い出す(これはたぶんみんなそう)

だから私は、香りを纏った人になりたい。
香りで自己表現が出来たら、誰かの大切な記憶に残れるような気がして。

ラベンダー、キンモクセイ、ローズ、ホワイトリリー、サボン……
銀杏は少し嫌だな
バニラの香りがしたら「女の子らしい」感じになれそう。


自分を表す香水、表したい自分の香りを纏ったら、少し幸せになれるような…

手始めにSHIROの香水をつけてみたいな