カリフォルニアで本屋を作る #2 コロナ禍の放談
実際に本屋を作ってみよう、と思うようになったのにはきっかけがあった。
この3つのうちの一つのどれかが決定的だったというものはない。
偶然が重なったことで、この3つのステップを踏むことになった、という方が言い方としては正しい。
今回から何回かにわけて、それを順をおって書こうと思います。
スコシフという(ブック)ユニットを友人と作ったこと
スコシフとは「本で遊びながら何らかの活動する」というユニット。
構成員はカリフォルニア在住のうへい(僕)と、東京在住の安曇(アヅミ)さん。
「本で遊びながら何らかの活動する」
というテーマが最初からあったわけではなくて、
コロナ禍でお互い家に引きこもっている時間が増大したことで、話す機会も増えたから、
アメリカの本屋のこと、東京の本屋のこと、演劇、映画、ヒップホップ、お笑い、マンガ、小説、ウルトラマンのこと、和歌、仏教のこと、野球のこと、昭和の怪事件のこと等など、
多岐の話題にアソビながら、
どんどんと、サークル活動化? 同好会化していった。
実際訪れた本屋の写真や本棚なども沢山送りあっていた。
アヅミさんと私に趣味や共通点があるわけではなく、共通してこのジャンルが一番好きというものがあるわけでもない。
ただ、
初期衝動を大事にしている人、
自分の好きを信じている人を
なんとなくでも応援したい、
という気分は共通して持っていた。
そういう人たちの作る表現を愛でることができる場所が一つでも多く増えたらいいなと思った。
でもそれがどんなことを意味するのかはまだ良くわかっていなかった。
コロナ禍の放談
2020年3月あたりから2022年の6月くらいのまでだろうか、
南カリフォルニアも厳戒態勢モードで、外出が憚れるような雰囲気も続いていた。
楽しいはずのSNSも、コロナの脅威を巡る真偽、政策に対する賛否を巡って、荒々しい言説が跋扈していたし、僕もまた「コロナ疲れ、SNS疲れ」に陥っていた。
それに引き換えスコシフでの話題といえば、
フリマにでようとか、
カルタを作ろうとか、
楽しそうな提案にあふれ、しかし放談に終始する。
「モノを触った時の感触とか、
実際舞台で発する役者さんの声とか、
ページをめくる時の本の匂いとか、
棚と棚の距離や本の飾り方や、
実際その場にいって感じたり反応したりすることが
やっぱり大事なんだよな」
そんな話をしながらも、
いつ解除されるかわからない厳戒態勢が続いていた。
リアル書店の良さ、棚やお店の個性、実際その場にいって感じたり反応したりすること。実際に場所がある、ということの重要さ、その希少性も存分に感じていた。
コロナでの閉塞的な状況もあって、
そのようなスコシフでの約週一回(不定期)の会議は
「有意義な気晴らし」(アヅミ談)であったに違いない。
カリフォルニアに作るEmpty Shelfという本屋さんのハートの部分、
「空っぽだからはじめれる」
その発想は元を辿れば、そのようなコロナ禍でのスコシフでの放談の中から生まれてきたのだった。
そして、シェア型書店のことを知った
コロナへの警戒が解ける前の2年前のある日のこと。
アヅミさんから、リンク付きのメッセージが送られてきた。
「何だか素敵な感じの本屋あるよ」
リンク先を開いてみると
猫のロゴをつけた、アンティーク調の内装の古本屋さんのホームページ。
名前も「猫の本棚」とあって、何とも良い雰囲気が伝わってきた。
東京。神保町にある。
そこには参加型の本屋さんという旨の説明があって、
どうやら、客が店内の本棚の一つをレンタルし、小さな本屋さんになることが出来る。棚の数は150あると。
面白い、と感じた。
その時初めて僕はシェア型書店なるものを知った。
そして「猫の本棚」さんが棚主(棚の借り手)を募集していることをもう一度見返して、その日のうちに申し込みをしていた。
次回はきっかけとなったその②
「そのスコシフ名義で「シェア型」の古書店である「猫の本棚」(神保町)で一つの小さな棚をお借りして、小さな本屋さんをはじめてみたこと」
を記したいと思います。