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我思ふ Pt.136 過去の古傷ではない

一週間ほど前の話だ。
少し愚痴のようになるかもしれない。

「俺…またおかしくなっちまったか?」

と、考えてしまった出来事。

息子の勉強も山を越え、妻も家事を終えた。
私は休日で妻の家事を手伝い、褒められてご満悦。

「今日晩御飯どうしよう。お給料も入ったしどこか食べに行こうか。」

妻の提案を私も息子も快諾。
正直妻の家事を手伝い、腹ぺこなのでこれから妻が夕飯を作り終えるまで我慢できない。
この提案は本当にありがたい。

私の運転で近くの中華料理店へ。
その車中で私は妻に言った。

「帰り運転してくれる?久しぶりに外でビール飲みたいんだ。一杯だけでいいんだ。」

私のお願いに妻はにこやかにOKしてくれた。

いざ入店。
中華料理店特有のなんとも言えない香りが漂う。
店の中は混み合ってはいないが、そこそこの客は入っている。

テーブルに置かれたメニューは同じものが二つ。
私は妻と息子に、メニューを渡して「先見て決めていいよ。ゆっくりでいい。」と言った。
迷いに迷って妻と息子は注文するものを決めた。
そして向かいに座る妻がメニューを渡してきた。
もちろん最初に見るのはドリンクメニュー。
店で飲むなんて本当に久しぶりだ。
しかも帰りは信頼できる妻の運転。
安心して飲める。

『やっぱビール?いや、やっぱハイボール?あぁここジムハイか…ううんジムハイ好きなんだよね…でもな…ビール…』

迷っていると妻が私に言った。

「今日は特別だからね。」


「…。」

特別…?
金銭面?
そんなはずはないな。
先月はそれなりに頑張ったつもりだ。
それともこれが当たり前と思われたら困るって意味?
俺の躾?
俺は基本的に家族で外食に出かけたら酒は飲まないし、運転だってキチンとする。
こうして外で飲むなんて極稀な事。
今までそうしてきたではないか。

俺は特別でないと店でビールも飲めないのか?
そんな人間なのか?

「…。」

私は一気に体が冷えていくのを感じた。
そして一気に飲む気が失せた。
メニューを見ていた、目も手も止まった。

「や、やっぱ飲まない。い、いいや、なんか…その…つ、疲れたし、食べる方に回そ。」

私は精一杯の笑顔を作り、フードメニューまでページをめくった。

「どうしたの?別にいいんだよ?飲んでいいよ?」

「いや、いい。帰りも俺運転するから心配しなくていい。大丈夫大丈夫。家で飲みなおすし。」

「そ、そう…?そんなんならお家でご飯すればよかったのに。」

「いや、大丈夫だって。うん、これにしよ。じゃあ店員さん呼ぶよ?すいませーん。」

私は何を考えていたのだろう。
別にキレ散らかすような状況でもないし、実際キレてないし、あの急激に体と脳みそが冷えていく感覚はなんだったのだろうか?

まぁ別にその後はなんともないし、妻に対して怒りの感情など一切無いし、ごく普通だ。

何だろう…。

ただ外食の際特別な状況でないとお前は外で飲む資格はない、と暗に言われているような気がしてならなかった。
もし本当にそうならばとても悲しいし、この歳にして妻に躾を施されないといけない程度の人間なのかと情けなくなるものだ。

こんな感覚初めてだったんでね。
諸先輩方、どう思われますか?

まぁ…ホントどうでもいい話だな。

いらん事考えない方が幸せですな。


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