社長が倒れた〜全国の経営者へ〜
その時は、突然おとずれた。
会社の3階で、来年度の企画を考えていると。
内線が。
イライラしていたので、少々乱暴に受話器を手にしたと記憶している。
「早く、2階にきて・・」
経理を手伝いに来ている母からだ。
小一時間ほど前に、父親と言い合いになったので、
あー、またぐちぐち言われるのかぁ、面倒だなと脳裏をよぎったが。
「お父さんが倒れた、救急車」
「は?」
とにかく、受話器を戻して、2階へ階段をかけおりると、
土色の顔をした父親が横たわっていた。
葬式の時に、見せられる(僕はなぜ遺体を見るのか今だに意味がわからない)遺体みたいだ、と思った。
とにかく、救急車と慌てる母。
119番だよな、110番?
父親は「まだ、呼ばなくていい、まだ呼ばなくていい」
と呻いている。
「いいから呼んで!」
普段、温厚な母から、まさに怒号。
119番にかけると住所のほか、状況確認や症状を聞かれたので母に変わった。
近づき、どこが痛いのか聞くと前頭葉だという。
受話器から耳を離した母は、
「あれ? 住所言ったっけ?」
いやいや、言ってなかったら相手が聞いてくるから大丈夫でしょ?
と、心の中で突っ込みつつ。
とにかく救急車を会社の外に出て待った。
今朝、車を運転して9時過ぎに出社した社長。
11時に電話で友達との会話中に受話器を落として、
そのまま倒れた。
まさに健康が売りで、本人も100歳までは生きると息巻いていたし、周囲の人間もそうなるだろうと思っていた。
しかし、そんなものは幻想だ。
当たり前のことだが、いつ、どこで、何があるかはわからない。
なぜか人は自分は大丈夫だと、思っている。
その危険性をこれほど感じたことはない。
消防隊も来てくれて、父は救急車で運ばれた。
くも膜下出血。
このあと、長時間の手術の激闘があるのだが。。
事業承継の準備、相続の対策。。後日、顧問税理士とのやりとりで、何もしていなかったことが判明する。
税理士が今後の対策の話をすると
「まだまだ元気だからいいや」
と毎回、返ってきたそうだ。
70代半ばをむかえる、事業承継税制や家族信託についての情報をまとめる仕事をしている会社の社長がこの有様だ。
これからどうなっていくのか。
とにかく、経営者の方々はいますぐ対策を立てた方がいい。とくに後継者が決まっている方は。
それができないなら、後継者がかわいそうだから転職させてあげるべき。
社員も減らしていき、個人で仕事をすればいい。
こんなにも急に、前置きなく会社を背負う立場になるとは思っていなかった。
健康なんて妄想だ。いつ何があるかはわからないのだ。